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都市アルダを復活せよ!
第11話 クラーケン、魔物から海を取り返せ!
しおりを挟む人類蔑みの令の発布に成功し、都市アルダの運営を行っていく必要がある。
山積みの問題の中で、最優先で解決すべきことがある。
それは海に大量にいる魔物たちだ。死の海の浄化には成功したが、集まって来た魔物たちはそのままである。
これでは船を出すことができないので、結局港が使えないままだ。
そういうわけでサーニャと一緒に浜辺にやって来て、海の魔物の処理を行うことにした。
「どう、するの? 海のおさかな、強いよ? ぼうけんちゃ、やとう?」
サーニャがたどたどしい言葉で話してくる。
ユニコーンの癒しの力で喉が治って話せるようにはなった。
だがまだ人と同じようにというのは無理だ。
彼女は今まで喋ったことがなかったのだから、むしろこれだけ言葉を発せられるのが上出来。
ちなみにサ行を発音するのが苦手なようで、たまにタ行になってしまっている。
「冒険者を雇ったところで海の魔物には勝てない。やはり魔物には魔物をぶつける」
冒険者――それは魔物を狩ったり遺跡探索を生業とする者達だ。
彼らは基本的に四人ほどのパーティーを組み、世界トップクラスともなると巨大なドラゴン相手でも戦えるらしい。
都市アルダの港にドラゴンが落ちたのも、冒険者に傷つけられて逃げたからでは? という噂が広まったくらいだ。
無論、ドラゴンを倒せるような冒険者などそうそういないが……そんな彼らでも難しいことがある。
それが海の魔物の討伐だ。どれだけ強くても人間である以上、水中ではまともに戦えない。
魔法使いなら攻撃手段は持つが……海に潜られて乗ってる船を撃沈されたら終わる。
そんなわけで海の魔物は実質的には災害として扱われている。人間が対処できるものではないと。
まあ陸に上がってきたら殺すんですけどね。魚人とか。
「なにをよぶの? おさかなさん?」
「そこらの一般魔物を呼んでも、この海域の魔物を一掃できない。ここは強力な奴を呼ぶつもりだ」
俺は海に向けて手をかざして召喚呪文を唱え始める。
今回の魔物は今まで呼んだものよりも上位種となる。
ゲームで言うならボス級に値するモンスター。
「古の契約を遵守せよ。我が血と言葉を以て応ぜよ。求めるは海の悪魔、大海原に住む大怪異……その大いなる十の葦を持ちて、海に覇を唱えん!」
少し離れた海上に巨大な魔法陣が発生し、はじけると同時に巨大な魔物が出現した。
その姿は烏賊を巨大にしてグロテスクにしたものだった。と言っても、姿が似ているだけでとても烏賊には見えないが。
岩を想起させるようなゴツゴツした硬そうな肌、長く鋭く太い大量の触手。
身体の色も緑か黒かわからない不気味なカラーリングで、はっきり言ってだいぶ怖い。
「ひっ……」
その証拠にサーニャが俺の背に隠れてしまった。
「オオオオオオオオオォォォォォォォォ!」
大音量の叫びが周囲に響き渡る。まるでライブハウスの音響装置のようだ。
クラーケンの前でなければ手で両耳を塞ぎたくなるほどうるさい。
「クラーケン! ここら一帯の海の魔物を処分して欲しい!」
「オオオオオオォォォォ!」
俺のお願いに対して、クラーケンは触手でOKサインを作ってくれた。
……なんか少し可愛い。デフォルメしたらキモキャラで売り出せるのでは?
クラーケンは海中の触手をしばらく蠢かせると、何本かを海上へと出した。
その触手の先端には……大量の魚系魔物やサメが串刺しにされていた。
うへぇ……強いなぁ……。でも血とか流れててあまり目に優しいものではない。
そしてクラーケンはその触手の一本を、巨大な口の中にいれて刺していた魔物を貪り食った。
更に俺の傍まで触手を近づけて、串刺しにした魔物を寄せてくる。
や、やめて!? 血が、魔物の血がつく!?
「オオオオオオオオオ?」
クラーケンの声音を察するに『食べる?』とでも言っているのかな!?
馬鹿……アホ野郎こんなの食えるか!?
「い、いや俺はいいよ!? 全部食べていいから!?」
そう叫ぶとクラーケンは俺に近づけた触手も、自分の大きな口へと運んだ。
うっへぇ……ゴキゴキと骨を噛み砕くような音が聞こえてくる……。
「く、クラーケン! その調子で海の魔物をいっぱい食べてくれ! お代わり自由だから!」
「オオオオオオオオ!」
俺の叫びを理解したのか、クラーケンは海へと潜っていった。
あいつにこのまま任せておけば、近いうちに海からサメや魔物は一掃されるはず。
「ね、ねえ。クラーケンたん、面倒どうやってみるの? あんなの食べ物用意できないよ」
「基本は放し飼いだ。海ならいくらでもエサがあるしな」
あんな巨大な海の魔物、むしろ自分で好き勝手に魚でも捕獲して食うよ。
クラーケンからの依頼はたったひとつだ。
「じゃあ面倒みなくていいの?」
「いや、クラーケンより強い魔物が出たら守って欲しいって」
すでに召喚時に契約は決まっている。
クラーケンの希望は生存できること。
つまり獲物がいなくならないように海を綺麗に保つのと、あいつを脅かす化け物が出てきたら何とかすることだ。
「クラーケンよりつおいの出たら、勝てるの?」
「……だ、大丈夫。まだ海の魔物の切り札はいるから……」
神に作られたと言われる聖獣クラスの存在もいる。
宗教によっては悪魔に分類されるが、どちらにしても恐ろしい魔物であることは間違いない。
流石にそんな大それた魔物を呼ぶの怖かったので、クラーケンにしておいたくらいだからな……。
そいつならクラーケンが勝てない魔物でも大丈夫だろ。
「その魔物ってやしなえるの?」
「…………」
ま、まあクラーケンより恐ろしい魔物なんてそうそう出てこないだろ!
三日も経つと海の魔物がだいぶ減ったため、人魚の護衛などを動向させることで船を出せるようになった。
これで俺達は本当の意味で魔物から海を取り戻したのだ!
漁師たちは感激の涙を流しながら、漁に出て魚を大量に獲って来た。
その揚げられた魚たちで、都市エルダ再興宴が開催されたのだった。
だがこれで満足されては困る。再興と言ってもたかが三十人の人的資源……いや人口では全く足りない。
ここからが本番。都市エルダはかつての栄光を取り戻す。
いやかつてを超えるのだ。そのために……流通など考えていかなければならない。
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