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イレイザー最終決戦編

第195話 フォルン領艦隊爆誕

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 俺達は最新鋭の戦艦……ではなくて、戦艦大和級の戦艦が十、更に空母が五隻の艦隊プラス一隻で海へ繰り出していた。

 操縦技術は【異世界ショップ】から購入している。今の俺はフォルン領通貨で所持金無限だからな!

 対イレイザーに必要なものだけだが、いくらでも好きなだけ購入できるのだ!

 最新鋭の戦艦はメンテナンスが無理だろうと判断し、かろうじてできそうなものにしたのだ。

 俺がそのうちの一隻の戦艦で甲板で海風に当たっていると、フォルン領兵がひとり甲板に出てきた。

 フォルン領兵士たちも海にようやく慣れたようで、たまに海に吐きながら働いている。

 大丈夫だ、あいつらは地上だろうが海上だろうが戻すのには慣れている。

「……おええぇ! よし! 口直しに酒飲むか!」

 少し元気になって船内に戻っていくフォルン領兵士。

 なんで船酔いしてるのに更に酒飲んで二重に酔おうとするんだろうな。

 マイナスにマイナスかけてもプラスにはならんぞ。

 まあそんなこんなで船を動かして海には出れたので、砲撃訓練とか開始することにした。

 もちろんこの砲弾なども全て経費……じゃなかった、フォルン領通貨で支払える!

 いや本当いいな! 無料ってのが素晴らしい!

 ちなみにここからは内緒話なのだが、イレイザーを倒したらこの戦艦たちはフォルン領の艦隊として残すつもりだ。

 全て無料で手に入れてコトが終わったらもらい受ける! なんと素晴らしいことか!

『ちょっ!? それズルくない!?』
 
 脳内にミーレの悲鳴が聞こえてくるが知らない。

 これは正当な報酬である。ついでに弾薬とか油も予備扱いで大量に購入しておく!

 セコイ気もするが許して欲しい。これにはとある事情もあってだね……。

「アトラス様! ライニール殿からの手紙はもう読まれましたぞ!? ベフォメット国はフォルン領がイレイザーと戦っている間に!」
「安心しろセバスチャン、もう読んだ」

 船内から甲板に飛び込んできたセバスチャンに軽く返す。

 ライニールさんからの手紙、そこにはベフォメットが進軍することが確定したと記載されてあった。

 俺達がイレイザーと戦っている間に、レスタンブルク国の領地を奪えるだけ奪うつもりなのだ。

 あまりに卑劣! 人間の風上にもおけないやろうだ! 

 まあフォルン領は立地的に奪われないだろうが、それでも本当にクズだと思う。

 なのでイレイザーとの決着がついた後は、この艦隊でベフォメットに攻める。

 陸からずっと砲撃してやるし、艦載機での空爆もやってやる。

 最低でもあいつらの王城は欠片も残さず粉砕してやるからな!

「セバスチャン。ライニールさんにはなるべく戦場に出ないでくれって手紙出しておいてくれ」
「承知いたしましたぞ!」

 そう言い残して船内に全力ダッシュしていくセバスチャン。

 ……あいつは船酔いしないのな。まあ三半規管も尋常じゃなく丈夫そうだけども。

「うぅ……気持ち悪い……」
「……」

 そんなことを考えていると、青い顔をしたカーマとラークがよたよたと甲板に出てくる。

「大丈夫か? 酔い止めは飲んだから、もう俺がしてやれることないんだが……」
「ああうん大丈夫……今から空飛ぶから……」

 カーマとラークは背中にそれぞれ炎と氷の翼を生やして、空へと浮き上がった。

 なるほど、船酔いとは船に乗ってるから起きる。

 ならば乗っていなければ酔わないはずだ!

「ふぅ……なんで船ってこんなに揺れるのさ……」
「空を飛んで欲しい」
「こんな質量の塊が空飛べるわけないだろ……それに飛行機は飛行機で酔う奴いるけどな」

 結局酔う理由って予測不能に動くからだと思う。

 車の運転手が酔わないのは、自分で操縦してて動きの予測がつくから大丈夫な感じで。

「ボク、戦闘中はずっと飛んでおこうかな……ところで後ろに一隻だけ変な船があるけどあれなに?」

 カーマが指さす先には長方形の四角に近い形をした船。

 ひとつだけ空母でも戦艦でもなく異色を放っているので気になったのだろう。

「あれは……自動車専用船だ」
「自動車……あー、セバスチャンさんが使ってた敵に自爆特攻する兵器だよね?」
「違う。あんな使い方するわけないだろ!? あの自動車を超大量に運ぶ船だ」

 セバスチャンのせいで自動車が特攻兵器にされてる……パンジャンドラムじゃあるまいし。

 あれは自動車専用船……ようは自動車を大量に運ぶための船だ。

 あの船も車の積載可能台数は五千台以上と聞いている。

 では何故そんな船を買ったのかというと、あれにレザイ領民を全員乗せる予定なのである。

 普通の船で八千人も乗せるのは難しいので、自動車専用船に無理やり詰め込むことにした。

 船の中は立体駐車場みたいになっているし、まあ八千人くらい詰め込んでも大丈夫だ。

「あの船にレザイ領民を乗せるんだね。今は彼らを乗せてないんでしょ? いつ乗せるの?」

 カーマがきょとんとした顔で質問してくるが、そんなことは当然決まっている。

「もちろんぶっつけ本番だが?」
「れ、レザイ領民も陸育ちの人なんだけど……」
「大丈夫だ。あいつらが吐いても戻しても船は動くよ」

 船を動かすのはフォルン領兵であって、レザイ領民は乗ってるだけだからな!

 だがカーマは俺の言葉にドン引きしてしまっている。

「い、いちどくらい事前に乗せておいてあげても……それとあの船、自動車用ってことは人の乗る船じゃないよね……?」
「カーマ、八千人を一日養うのは大変なんだぞ? それに……あいつらをまともな船に乗せてみろ。船内の備品根こそぎ盗られたあげく、あいつら同士で高い物の奪い合いが始まるぞ」
「うわぁ……」

 レザイ領民を甘く見てはいけない。

 それはカーマも金貨投げ祭りの時に理解している。だからこれ以上の追及は来なかった。

 ……とはいえ一度くらいは事前に乗せておくべきかもしれない。

 流石に艦型エチケット袋になるのはごめんだ……今回の件が終わったら、あの船もできれば運用したいし……。

 …………いや待て。腹の中に何か入ってるから戻すのでは?

 作戦決行一日前にレザイ領民を呼んでおく。

 そしてその日は飯抜きにすれば……よしそうしよう。食費も浮くし一石二鳥だ!

 結局飯抜きにしたらレザイ領民が一揆を起こしたのだがそれはまた別の話。
 
 
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