134 / 220
王家騒動編
第128話 昨日の敵は今日も敵
しおりを挟む「では調子にのったフォルン領を追い落とす会議を始める」
「…………」
とある貴族の地下室。俺は拳を握りながらなんとか怒りをこらえる。
円卓のような机を囲み、俺を除いて無能な貴族たちが並んでいる。何を隠そうこいつらは、フォルン領が嫌いだから集まったクズ共だ。
何で俺がそんな奴らと一緒にいるかというと、敵の敵は味方というだけだ。
俺はレスタンブルクの国王になりたくない。こいつらは俺がこれ以上権力を握るのを嫌がっている。
信じられないことに利害が一致しているのだ。向こうからコンタクトを取って来たのだが、組んでみるのもよいかと思ってお呼ばれしたわけだ……したわけだが……。
「まずは会議前の挨拶。フォルン領は滅ぶべし、アトラス伯爵は貴族ではなく醜き豚。この国の汚点」
「「「フォルン領は滅ぶべし、アトラス伯爵は貴族ではなく醜き豚。この国の汚点」」」
すでに俺の怒りが我慢の限界を越えようとしている。
こいつら、俺がいるのを分かっていてやってるのだ。主格の男が俺を見てゲスい笑みを浮かべている。
お前らの顔は覚えたぞ。俺が王になるのを免れたら、徹底的に潰してやるからな!
「さて、まずは我ら『救国の清廉なる血の盟約』同盟として、各自の成果を教えてもらおう」
「ぷっ」
俺は必死に爆笑しそうになるのをこらえる。そんな痛々しい名で笑いとってくるのやめろ!
そもそも盟約なのか同盟なのかはっきりしろ!
他のクズどもは真面目な顔してるのが更に笑いを誘ってくる。
「私はフォルン領の作物は他と比べて高い粗悪品と、噂を広めております」
「アトラス伯爵は罪なき少女を誘拐し、犯しまくっているクズと広めております」
「よし!」
何がよしだ! こいつら全員今すぐぶちのめしたい……!
全て事実無根だろうが! せめて真実を噂しろ、真実を! まあ俺は清廉潔白だから嘘しか噂にできないんだろうが。
「フォルン領は変人ぞろいと噂を広めております」
「くだらんことを言うな! そんなしょうもない噂を誰が信じる!」
主格の男が円卓を叩いて怒りを叫ぶ。だが俺からするとその噂が一番困る……それだけ真実じゃねぇか!
「それで今日は極めて愚かなゴミが会議にいる。何を隠そうアトラス伯爵が、我らの陣営に降ると宣言した」
「勝手に降らすな! 俺もこれ以上、自分自身の評判が上がると困るだけだ」
「ふん。田舎貴族の分際で、我らの血盟に入ろうとするとはな……その存在そのものが悪だというのに」
……今更だが組む相手間違えたなこれ。いくらバカどもでも、少しは役に立つと思った俺がバカだった。
バカどもは俺に視線を向けた後。
「アトラス伯爵を王都で裸踊りさせればいい。そうすれば評判はだだ下がりだ」
「ふざけんな! 評判が下がる程度で済むか! 犯罪者じゃねえか!」
「ええい! なんとワガママな! 貴様なぞ生きているだけで罪だというに!」
貴族たちは俺を睨みながら口々に好き勝手なことを言う。
「少女を強姦させればよいのでは?」
「待て。ただの少女なら我らもやるから、あまり問題にされぬ可能性がある。ここはもっと問題のある相手にすべきだ」
「ならばこの国の姫にさせればよいのでは?」
「「「それだ!」」」
ヤバイ。ツッコミが追い付かない。
こいつらサラッと恐ろしいことをフェードアウトしたぞ……。
しかもこの国の姫ってカーマとラークじゃん。俺の妻なんですがそれは……。
ここにいる真正のバカどもは、吐き気がするような笑みを浮かべると。
「姫君をさらって犯してこい。それで貴様の評判は地に落ちる」
「誰が従うか! 俺の評判を落とす以外の方法で考えろ!」
「なんとワガママなっ!」
「これだから田舎貴族はっ!」
バカどもは口々に意味不明なことを言い出す。
なんて奴らだ。お前らなんぞ『腐国のバカなる血液凝固』だ。
「他になにかよい案はないか?」
「そもそもアトラス伯爵など、どうあがいてもゴミの存在。普通に生きていれば評判は落ちるだけではないか」
「いっそ殺してしまえばよいのでは? それなら評判も落ちない」
「「「それだ!」」」
「ふざけんな! 評判の代わりに俺の首が落ちるだろうが!」
だがバカどもは我が意を得たりと俺に邪悪な笑みを浮かべてくる。
「結論が出た。貴様はここで死ね。案ずるな、姫君は我がもらいうける。貴様が遺言で私に姫を娶れと言ったことにしてやる」
バカの主格が指を鳴らすと、武装した衛兵たちが部屋に駆け込んでくる。
いくら何でも呼んでから来るまでが早過ぎる。どうやら最初から控えさせていたようだ。
「卑怯者め。最初から俺を捕らえるか殺す気だったな!」
「当たり前だ! 自ら網に突っ込んできた奴を、逃すわけがあるか!」
衛兵たちは俺に槍を構えて近づいてくる。俺も我慢の限界だったので、仕返しに指を鳴らす。
すると床から木の根が生えてきて、衛兵たちをぶっ飛ばす。衛兵たちは壁に叩きつけられて意識を失い、木の根に地面に引き込まれていく。
「なにっ!?」
主格の男が驚いた表情でこちらを見てくる。
馬鹿め。お前らなんぞ最初から信用するわけないだろうが!
「残念だったな! 俺も護衛を控えさせてたんだよ!」
「なんという! この卑怯者がっ!」
「お前には言われたくねぇ! エフィルン! 全員ぶちのめせ! こんなゴミな奴ら、二度と地上に帰す必要はない!」
更に床から大量の木の根が出現。バカどもを打ちのめして、地面の穴へと引きずり込んでいく。
「ひ、ひいっ!? おたすけぇ! もうやりません! もう無辜の民で遊びませんからぁ!」
「あ、ああっ! 民から重税で搾り取った金貨が!」
木の根に引きずり込まれながら、阿鼻叫喚の悲鳴をあげるゴミたち。
真剣にこいつら、このまま土に還したほうがよいかもしれない。
「ああああぁぁぁぁぁ!?」
主格の男が地面に引きずり込まれて、全てのバカは土に還った。
それと入れ替わるようにエフィルンが扉から部屋に入って来た。
「主様、ご無事ですか」
「大丈夫だ。ところでクズたちはどうなったんだ?」
「魔法で出した大樹の木の根で巻き付いて、地面の中に埋めました。放置していれば木の栄養になります」
「……その大樹、根から腐り落ちたりしないだろうな」
性根の腐った奴らの栄養で育った木……正直見たくねぇ。
てかあれでも一応は貴族だ。ここで殺したら楽に死なせてしまうことになる。
ここは彼らがクズの本懐を遂げられるように、ようは極力苦しむように尽力してやるべきだ。
話を聞いた限りでは死んだ方がマシな奴らなので、王家に押し付け……献上しておけばいいか。
しかし可哀そうだよな王家。俺だったらこんな奴らは献上拒否する。
エフィルンにとりあえず奴らを地面から引き上げるように指示。後で王家に渡すために、俺の【異世界ショップ】で拉致監禁することになった。
『ちょっと!? なんか気持ち悪いオッサンがいっぱい来たんだけど!?』
「しばらく置いといてくれ、餌とかいらんから。てか拉致監禁するたびに文句言ってくるけど、どんな奴なら不満ないんだよ」
「美少女! 縛られたカーマちゃんやラークちゃんならなお嬉しい!」
ミーレの言葉は聞かなかったことにした。
0
お気に入りに追加
1,340
あなたにおすすめの小説
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~
夢幻の翼
ファンタジー
典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。
男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。
それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。
一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。
持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します
風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。
そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。
しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。
これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。
※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。
※小説家になろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる