上 下
71 / 134
刃を交えない戦争編

第69話 ハーベスタは蛮族国家!?

しおりを挟む

 我がハーベスタ国の本拠が白亜の城になって一週間が経った。

 すでにアミルダ様は動き始めていて、ギャザの街の民たちの移住を考えている。

 そしてそれは容易に行えるだろう。何せギャザとこの城の距離はかなり近い。

 馬車で数時間ほど、歩きでも六時間から八時間程度しか離れていない。

 隣村に移住するくらいの感覚なので、人々も生まれ故郷から出て行くみたいな抵抗芯は生まれないだろう。

 それに……ギャザはアミルダ様の善政で活気があってよい街だが、経済基盤はかなり貧弱だし立地もあまりよくない。

 あそこに人を集めたとしてもおそらく大きな発展は望めないので、その意味でもここを本拠にする方が望ましい。

 そんな中で俺達は本丸……じゃなくて城の最上階の玉座の間に集められている。

 アミルダ様は玉座にもたれたまま、真剣な顔でこちらに視線を投げかけた。

「よく集まってくれた。今日はかなり重要な話をする」

 俺は緊張で思わず唾を飲み込む。

 アミルダ様が改めて話すほどの重要な話とはいったい……またアーガ王国が攻めてきたのか!?

 いやそれならいつものことだからそこまで重要でもないか……ってこれもおかしな感覚だな。いかんいかん、慢心している。

 彼女があれほど真面目な面持ちなのだから、物凄く重大な案件の話で……まさかとうとうクアレール王が崩御を!?

 それか新たな敵として周辺諸国ズのどこかが参戦!?

「いずれ我が国でパーティーを開催することになった」

 ――割とどうでもよかった。パーティー、楽しそうですね。

 でもそう思ってるのは俺だけなのか、エミリさんとバルバロッサさんも物凄く興奮している。

「ええっ!? 私たちの国でパーティーを開けるんですか!? すごいです!」
「おお! ハーベスタ国がパーティーを再び開ける日が来るとは! 感無量でありますぞ!」

 いや彼女らが喜ぶ理屈は分かる。

 何せ社交界と言えば外交パーティーであり、他国の重鎮を招くのは物凄く重要なことだ。

 そこで色々と貿易の取り決めとかするのも、俺はクアレール国で見て来たから知っている。

 でもなんかこう。やっとパーティー開ける! みたいな言葉が誕生日会みたいで……すごく大事なのは理解できるんだけどな!?

 ようやくハーベスタがパーティーを開けるほど、まともな国に戻った証明でありステータスになるわけだし。

 そういえば余談だが日本でもパーティー的な物がステータスになったことがある。

 戦国時代の織田家の話だが、茶会を開くのは許可制で手柄を立てた褒美にしていた。

 茶会できること自体がすごく名誉という位置づけにしてたらしい。

「だが社交界を開けばよいというものではない。他国の重鎮を招く以上、このパーティー次第で我が国の評価も大きく変動する。料理に装飾、余興に衣服など細かなところまで見られて、ハーベスタそのものの評価とされるのだ」
「わかっています、叔母様。素晴らしいパーティーにすれば評判も上がりますが、ダメダメだったら地に落ちてしまいますからね」

 パーティーは貿易の話などを行う場だけでなく、人脈作りや国の特産の品評会なども兼ねられる。

 それこそ先日のクアレールで我が国は清酒などで評判をあげた。

 各国を動かせる有力者が一堂に会する場所なのだから、自ずと凄まじい影響力が発生してしまうのだ。

 それこそパーティーに参加した各国首脳が、こんな感想を抱くこともあるだろう。

 『あの国の王は無能そうだ、衰退しそうだし手切れするか』、『あの者を余は好かない。今後は取引を控えよ』、『飾りも料理も貧相な会場だ、もはやまともにパーティーを開く国力もないか』など。

 各国首脳にそう思われたら、どう考えても今後の外交に大きく影響してしまう。

「無論、今すぐには開けない。我が国はしばらく内政に集中して、経済を整える必要がある。だがその目途がついた時点で、外交パーティーを開催するのだ。周辺諸国に対して我が国の威信を取り戻す!」

 アミルダ様が強く叫ぶ。彼女としても思うところがあるみたいで、感情が少し昂っているようだ。

 まあハーベスタ国が正式に国としての力を取り戻したと、内外に示せる絶好の場だもんな。

 崩壊寸前だった我が国がそこまで力を盛り返した。アミルダ様としても感無量なのだろう。

 でも少し気になることがある……別に勝ちまくってるから威信はすでにあるのではないだろうか。

「ですがアミルダ様。我が国はアーガ王国などに連戦連勝、威信はとっくに戻っているのでは?」
「ハーベスタ国の世間での評判はな、戦うことしか出来ない蛮族だ」
「……ええ」
「だが実際のところ、今までほぼ戦い詰めだったからな。周囲からそう見られても無理はない。落ち着いて考えてみよ、貴様が来てからの我が国の戦争経歴を」

 ほとんど防衛戦しかしてないのに理不尽極まりない。

 俺達は降りかかる火の粉を払うために必死に戦い続けてきただけなのに!

 ……確かにずっと戦いまくってるのは否定できんな。

「えーっと、俺がハーベスタ国に来てから半年ちょっとですよね。それでアーガ王国四戦にモルティにビーガンに……うわ月に一度くらい戦争している計算……」
「そうだ。本来ならばここまで連戦など不可能なのだがな、貴様の力によって問題なく行われている。しかし傍から見れば意味不明なので、周辺諸国が恐れるのも無理はない」

 戦績だけ見たら完全に戦好きの蛮族です、本当にありがとうございました。

 少し遠い目を見ているとアミルダ様がため息をついた。

「気づいたか、我が国は蛮族と言われても仕方がないのだ。戦いに明け暮れて血を求める野蛮人とな」
「アーガ王国とかが攻めてくるからで、俺達は何も悪くないのにっ……!」

 やっぱりアーガ王国ってクソだな! 無辜の俺達の評判をも落としやがって!

「よって国の商業を整えて経済を回すことで、我が国は真の意味で威信を取り戻せるのだ。今後はそれを肝に銘じて国の建て直しを行って欲しい」
「ははっ!」
「本日はこれで解散する。明朝に改めて指示を出すことにする」

 思ったより我が国の評判酷すぎた……アミルダ様は善政を敷くよい王様なのに。

 これは何としてもハーベスタ国は蛮族ではないと証明しなければ!

 蛮族なのはアーガ王国だけなんだよ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...