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第106話 コウガイ=フドー 前編

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 ――物語は数日前にさかのぼる。


 時は深夜。

 コウガイは中心街に伸びる大通り沿いの路地裏の闇に溶け込み、じっと身を潜めていた。

 視線の先には、人気の失せた通りの先にある巨大な建物に向けられていた。
 玄関口に掲げられた看板には、こう書かれている。

 『グレン商会本部』

 (あの濃密な魔の気配……今度こそ間違いない)

 《隠密》スキルにより暗闇と同化したコウガイではあったが、その双眸だけは鬼火のような妖しい光が揺らめいていた。



 コウガイはライノたちと別れてから、情報を集めるために半日ほど街を彷徨った。
 そこで、見つけたのだ。

 その男は、コウガイの知る容貌とは全く違った。
 この国の人の姿をしていたのだ。
 それでも、濃密な魔の気配を漂わせた人間など、そう多くはない。

 前回は人違いでライノとかいう男を襲撃してしまったが、あのような存在が何人も居るとは思えなかった。

 それにその男――ナンタイは、この『グレン商会』とかいう建物に入っていったきり、今に至るまで出てきていない。つまり、ここが彼奴のねぐらなのだ。

 コウガイは腰に帯びた妖刀『ネネ』にそっと手を置き、瞑目した。

(『ねね』。待っておれ。今日こそお主の身体を・・・・・・取り戻してやる・・・・・・・

 一体何年、この時を待ちわびたか。
 コウガイの脳裏に、里での光景が蘇る。



 それは、コウガイが刀匠から独立して一年ほどが経った頃だった。

 まだ若かったコウガイはその日、刀作りに没頭しすぎて深夜になってから焼入れに使う水を切らしているのに気付き、自ら山向こうの谷川に汲みに行った。

 日中ならば妻――『ねね』に頼んで汲んできてもらうところだが、時はすでに草木も眠る丑三つ時。
 早々に寝室に入った彼女を起こすのは、さすがに忍びなかったのだ。

 けれども、それが命運を分けた。

 コウガイがかめ一杯に水を汲み戻って来たときには、里はすでに火の海だった。

 見渡す全ての家屋から吹き上がる火の手、真っ赤に燃え上がる夜空。
 逃げ惑う人々を次々と捕え、『魂だけを』抜き取ってゆく、かつての友人――ナンタイ。
 糸が切れた人形のように、崩れ落ち動かなくなる里の仲間たち。

 それが、ナンタイが里の社に祀られていた妖刀から得た力だった。

 ナンタイは里の皆を殺し尽くすと、コウガイのもとにやってきた。
 禍々しい瘴気を背負い、抜け殻となった妻『ねね』の身体を抱えながら。

『『ねね』を離せッ!』

 コウガイは激情に身を任せ、獣のようにナンタイに飛びかかった。

 だが、所詮はただの鍛冶師。
 魔王の力により人外と化したナンタイに、勝ち目などあろうはずもない。

『くだらぬ。しょせん貴様はその程度の男なのだ』

 コウガイは何度叩きのめされても立ち上がった。
 だが、心が折れる前に身体が限界を迎えた。

 倒れ伏すコウガイを見下ろしながら、ナンタイは言い放つ。
 くらい喜悦の表情を浮かべながら。

 『俺はずっと『ねね』を欲しいと思っていたのだ。そのかんばせ、その肢体からだ。これほどすべてが完璧で美しい女子おなごは東国のどこを探してもおらぬ。ただの鍛冶師には、宝の持ち腐れだ』

『お主、何を……』
 
『だが、魂はいらぬ。最後まで俺を受け入れなかったからな。価値などない。なあにコウガイ、そんなに心配するな。身体に込める、より美しい魂は別に用意済みだ』

『ナンタイイィィッッ!!』 

『おお、そうだ。余り物が気になるならば、社に向かうがよかろう。腰抜けの貴様にふさわしいモノを用意しておいたぞ。カハハハ……』

 ナンタイはさらにそう言い放つと、『ねね』を抱えたまま夜闇に消えた。

 コウガイはその日、全てを失った。
 妻の魂が込められた、もの言わぬ妖刀――『ネネ』を除いて。



 気がつくと、コウガイは血が滲むほどに唇を噛みしめていた。
 口の中には鉄の臭いが充満し、張り裂けそうなほどの切望感が胸の中を満たしている。

 あれ以来、ずっと己の肉体を磨いできた。
 里から遠く離れた深山の隠れ里で必死の思いで教えを請い、職業『シノビ』の技能も全て修めた。
 人の血肉を喰らう妖刀『ネネ』も、今ならその力を十全に使いこなすことができる。

「『ねね』や……吾輩は、お主の声がまた聞きたい。ただ、それだけなのだ」

 コウガイは独りつ。
 その言葉に反応したのか、腰の妖刀がりん、と鳴った。



 ◇



 コウガイは音もなくグレン商会本部の建物に忍び込んだ。

 出入り口には警備の者がいたが、《隠密》スキルに対処する術を持っている者はいないようだった。
 のんびりあくびをしながらぼーっと突っ立っている男の横を、コウガイはするりと通り抜ける。

 内部は、事務所になっていた。
 特に妙な気配も魔の名残もない。

 上階もあるにはある。
 だが、どうやらこの建物内にはナンタイはいないようだった。

 事前に調べた情報によれば、このグレン商会本部であるこの建物はただの事務所にすぎず、幹部の居住区や、金庫や重要書類の保管場所はこの建物のさらに先にある敷地内にあるらしい。

 ナンタイと『ねね』がいるとすれば、そこだろう。

 街での聞き込みや裏の世界に詳しい情報屋によれば、この商会はかなりあくどい商売に手を染めているとのことだった。不正会計や犯罪の証拠でも見つけて官憲に持ち込めば、おそらく大打撃を受けるだろう。

 だがコウガイにとってはどうでもいいことだ。

 里を滅ぼした怨敵に誅を下し、愛しい妻を取り戻す。
 目的は、ただそれだけなのだから。

「……!」

 建物内を進んでいると、気配を感じた。
 すぐに近くの物陰に身を潜める。
 
 しばらく様子を伺っていると、誰かがこちらにやってくるのが見えた。
 数は二人。
 魔素灯の明かりに照らされ、ひょろっとした若い男と、恰幅の言い中年の男の姿が見てとれる。どちらも武装している。警備兵のようだ。

 二人は、談笑しながらこちらに近づいてきていた。



 ◇



「そういえばリオンさん、最近敷地内でダンジョンが見つかったらしいっすね。知ってます?」

「ああん? お前、まだ見てないのか? 俺は昨日そのダンジョン調査組の後方待機シフトだったから第一階層まで入ったぞ」

「マジすかっ! で、どうでした?」

「かなりの広さだったぞ。ありゃ、かなり深いな。遺跡型だったし、たんまりお宝が眠っているだろうぜ。元冒険者の勘がそう告げている」

「そういえばリオンさん、確か元Cランクでしたもんねえ」

「シモン、お前は衛兵出身だったっけ?」

「そっす。だからダンジョンって、入ったことないんすよ。正直憧れるっす」

「そ、そうか? まあ何度か入れば、すぐに慣れちまうってもんよ」

「そんなもんすかねー。で、もうウチの調査隊は入ったんですかね?」

「いや、見つかったのはここひと月くらいのことだからな。一応開口部と第一階層までは調査が終わって人員が配置されたが、まだその下は数階層分の調査しか終わってないはずだ。俺はそのとき第一階層に配備されてたが、調査隊は半日もせずに出てきたぞ。散発的に魔物との戦闘はあったようだが、お宝の方はまだ見つけられていなかったみてーだ」

「そっすかー。商会は冒険者ギルドには報告したんですかね?」

「はあ? シモンお前バカか? するわけねーだろ! まずはウチで美味しいところを全部頂いてからだろーが。ヒック」

「そりゃそっすね! ハハハ!」

 ひょろっとした若い警備兵はシモン、偉そうな態度の中年警備兵はリオンというらしい。二人とも建物内部だからか、かなり気が緩んでいるようだ。

 よく見れば、リオンの方は片手には酒瓶を持っているうえ、足取りがおぼつかない。

「しかし……こんな街中にダンジョンの開口部があるとはねえ。驚きっす」

「まあ、この街自体が近くのダンジョン群探索の拠点として発展した街だからな。街の下にダンジョンが埋まっていても不思議はねーだろ」

「そーいえばそっすねー」

「ちなみに俺が聞いた話だと、ちょっと前にウチに来た鍛冶師が偶然見つけたらしいぞ。なんでも、武器鍛造用に自前の窯を地下に掘らせていたら見つけたんだと。まあ、手間がかからず地下空間が確保できたからと、今度はそこに引きこもって武器を造りまくってるみたいだがな」

「あー、ナンタイさんっすか。不思議な人っすよね。なんか影があるというか」

「俺はアイツ嫌いだな。陰気で年下のクセに何か上から目線だし。なんつーか、こっちをモノか何かみたいに見てくるだろ? あとなぜか嫁がベッピンなのもムカつく。あんなヤツのどこがいーんだよ」

「ちょっ、リオンさんやめて下さいよ! あの人、ロッシュさんのお気に入りっすよ!? どこで誰が聞いてるか分からねえし、俺まで連帯責任にされちまうっすよ」

 リオンが悪態を吐くと、シモンが慌てたように辺りを見回す。
 先ほどまでは適当にリオンの話を流していたが、ナンタイの話をし出してから、明らかに怯えている。

「あー? こんな夜中に誰も聞いちゃいねーよ。おめえリオン、さてはビビりだな? 酒飲むか? んなこと気にならなくなるぞ」

「いやいや仕事中に飲まねーし、つーかマジでヤバいっすから! 俺の同僚がナンタイさんの陰口たたいてるの見つかって、翌日から仕事来なくなっちまったんですよ。つーか忽然と消えちまったんす」

「いや、それ仕事がキツくてバックれただけだろ?」

「んなわけないっすよ! そいつ、消える前日に娘さんの誕生日プレゼントの相談を俺にしにきてたんですよ? そんなヤツが金も備品も全部置いてバックれるわけないっすよ」

「はー、シモンお前、そんなくだらねーこと言ってんじゃねーよ。ここは他所に比べて給金も破格だし、支給される武器の質も良い。仕事も一応こなしてりゃ上司も文句は言わねー。天国じゃねーか。働いてる事務方のねーちゃんたちも美人ぞろいだし……って、おいシモン?」

 リオンの問いは夜闇の中に溶け、返ってこなかった。
 隣を見るが、並んで歩いていたシモンの姿がない。

「おいシモン? 冗談はよせよ」

 静寂。

「……おいおいウソだろ? ここ本部だぞ?」

 独り言ちつつも、リオンの顔が険しくなる。
 元冒険者というだけあって、即座に異常事態だと察したようだ。
 酔いも、すでに覚めているらしい。

「クソ……!」

 素早く腰の剣を引き抜こうとする。

 だが。
 リオンの手は、空を掴んだ。

「えっ…・・?」

 もちろん鞘は残っている。
 剣だけがない。

「動くな」

 なぜなら、背後に忍び寄ったコウガイが、音もなく抜き取ったのだから。

「ひっ……!」

 ガシャン。

 リオンが酒瓶を取り落とすが、すでに相方のシモンは制圧済みだ。
 音で誰かが駆けつけてくる危険はないだろう。

 コウガイは落ち着いて、リオンの喉元に先ほど抜き取ったばかりの剣を押し当てた。得るべき情報は、あと一つだ。

「お主が先ほど語ったダンジョン、案内してもらおう」

 こくこくと、リオンが無言で頷いた。
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