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15.青い瞳
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私を煽っていたキール君は、ぴたりとその動きを止め何かを考えているようだった。
「……」
イく寸前で止められて、とても気持ちが悪いがあのまま絶頂を迎えてしまっていたらここまで冷静になれていなかっただろうとプラスに考える。
このまま私に対する興味を失って!と密かに願ったがその思い虚しく、むしろ悪化したことに気付くのは直ぐだった。
「うん!気に入らないからこのままお姉さんをぶち犯すとしよう!」
「ちょ?!なんでそうなるの!!」
何をどうしてその結果になったのか理解不能で、慌てて止めようとすれば両手を片方の手で拘束される。
「何でって…気に入らないからに決まってるじゃん」
「はっ?」
「あまり吸えてないし、効力切れかけてるから注入しなおすね!」
もはやキール君の中で決定事項なのか、私の制服に手をかけ器用にリボンを解いていく。
「あいつが知ったらどんな顔するかなー?」
「ア、アビリウスさん知ってるの?!」
どうにか動きを止めたくて、咄嗟にアビリウスさんの名前を出せば案の定動きが止まった。
「…そうだね、知ってるよ」
「へぇ…!いろいろ聞きたいなあ!…あ、もちろんアビリウスさんの事だけじゃなくてキール君の事も!それに夢魔の事も知らないことだらけだからね!」
このまま話し続ければ手も止まる、と矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「…露骨すぎ…お姉さんバカでしょ」
「は?!」
「……まあ、いいや乗ってあげる」
突然バカ呼ばわりされて頭にきたが、何を思ったのかキール君は私の上から離れる。
引っかかるところはあるものの、結果的に危機は去ったようで一安心した。
「無知なお姉さんに分かりやすく教えてあげるね」
「言い方に毒しかない」
「そんな風に言ってられるのは今のうちにだよ」
キール君の澄ました物言いにムッとしたが、また何かされても困るので押し黙る。
「青目は人を殺してるよ」
なんてことなくそう言い放ったキール君の瞳は冷たく、私は驚きと困惑のあまり直ぐに言葉が出てこなかった。
「お姉さんもそのうち殺されるよ」
「はっ、」
「青い瞳、見たんでしょ?」
「見たけど、それが?」
「あれは人を惑わす目…。あの瞳に魅入られた人は おかしくなる」
吐き捨てるように言うキール君に何も言えずただ黙って彼の言葉の続きを待つことしか出来なかった。
「俺たち夢魔のただ一つの掟、人を殺すな」
「…」
「それをあいつは破った、だから追放されたのに…まだ生きてたんだね」
嫌悪感を隠すつもりもないのか、キール君はさらに続ける。
「青目はその力を使って人を殺した。それは人と脆い共存関係を築いている俺たちを危険に晒す」
「…」
「争いの火種になり得る危険は取り除け、人だって同じでしょ?」
問いかけるキール君に否定はできなかった。
ただあの時を思い返すとアビリウスさんの様子はとても狼狽えていたように感じた。
もし、私を殺そうとしたのならあんな風にはならないはず。
「……アビリウスさんだって…本当は殺したかったわけじゃ…」
「殺すつもりはなかったから許してあげてって?お姉さんバカなの?」
「なっ、」
「実際に死んでるんだよ。殺された本人の気持ちは?家族だっていたかも知れないのにその人達の気持ちは?」
「…っ」
「お姉さんの考えは反吐が出るね」
何も言い返せなかった。
「わかった?だからこれ以上あいつに近づくのはやめた方がいいよ」
「……でもっ」
「殺されるって言ってるだろ!!!まだわかんねぇのかよ!!!!」
「!!!」
声を荒げ、私を睨みつけて来るキール君の表情は何故かとても辛そうで。
でもその顔も一瞬で、何事もなかったかのように落ち着いた声で私の手を握った。
「…お姉さんは長い夢を見てたんだ、もう醒めるべきだよ」
「えっ、」
「じゃあね」
そのまま私を無理やり引っ張り、家の外に連れ出そうとするキール君。
理由はわからないけど、何だかこのまま終わるのは嫌な気がして抵抗する。
「まっ、まって!まだ…」
「お姉さんに会えてあいつも満足だってさ」
「それっ…」
最後まで言葉を発する前に私は家の外に追い出され、目の前が一気に明るくなり思わず目を閉じる。
「うっ…」
徐々に光が弱くなり目を開けると、私は一人路地裏に立っていた。
「……」
イく寸前で止められて、とても気持ちが悪いがあのまま絶頂を迎えてしまっていたらここまで冷静になれていなかっただろうとプラスに考える。
このまま私に対する興味を失って!と密かに願ったがその思い虚しく、むしろ悪化したことに気付くのは直ぐだった。
「うん!気に入らないからこのままお姉さんをぶち犯すとしよう!」
「ちょ?!なんでそうなるの!!」
何をどうしてその結果になったのか理解不能で、慌てて止めようとすれば両手を片方の手で拘束される。
「何でって…気に入らないからに決まってるじゃん」
「はっ?」
「あまり吸えてないし、効力切れかけてるから注入しなおすね!」
もはやキール君の中で決定事項なのか、私の制服に手をかけ器用にリボンを解いていく。
「あいつが知ったらどんな顔するかなー?」
「ア、アビリウスさん知ってるの?!」
どうにか動きを止めたくて、咄嗟にアビリウスさんの名前を出せば案の定動きが止まった。
「…そうだね、知ってるよ」
「へぇ…!いろいろ聞きたいなあ!…あ、もちろんアビリウスさんの事だけじゃなくてキール君の事も!それに夢魔の事も知らないことだらけだからね!」
このまま話し続ければ手も止まる、と矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「…露骨すぎ…お姉さんバカでしょ」
「は?!」
「……まあ、いいや乗ってあげる」
突然バカ呼ばわりされて頭にきたが、何を思ったのかキール君は私の上から離れる。
引っかかるところはあるものの、結果的に危機は去ったようで一安心した。
「無知なお姉さんに分かりやすく教えてあげるね」
「言い方に毒しかない」
「そんな風に言ってられるのは今のうちにだよ」
キール君の澄ました物言いにムッとしたが、また何かされても困るので押し黙る。
「青目は人を殺してるよ」
なんてことなくそう言い放ったキール君の瞳は冷たく、私は驚きと困惑のあまり直ぐに言葉が出てこなかった。
「お姉さんもそのうち殺されるよ」
「はっ、」
「青い瞳、見たんでしょ?」
「見たけど、それが?」
「あれは人を惑わす目…。あの瞳に魅入られた人は おかしくなる」
吐き捨てるように言うキール君に何も言えずただ黙って彼の言葉の続きを待つことしか出来なかった。
「俺たち夢魔のただ一つの掟、人を殺すな」
「…」
「それをあいつは破った、だから追放されたのに…まだ生きてたんだね」
嫌悪感を隠すつもりもないのか、キール君はさらに続ける。
「青目はその力を使って人を殺した。それは人と脆い共存関係を築いている俺たちを危険に晒す」
「…」
「争いの火種になり得る危険は取り除け、人だって同じでしょ?」
問いかけるキール君に否定はできなかった。
ただあの時を思い返すとアビリウスさんの様子はとても狼狽えていたように感じた。
もし、私を殺そうとしたのならあんな風にはならないはず。
「……アビリウスさんだって…本当は殺したかったわけじゃ…」
「殺すつもりはなかったから許してあげてって?お姉さんバカなの?」
「なっ、」
「実際に死んでるんだよ。殺された本人の気持ちは?家族だっていたかも知れないのにその人達の気持ちは?」
「…っ」
「お姉さんの考えは反吐が出るね」
何も言い返せなかった。
「わかった?だからこれ以上あいつに近づくのはやめた方がいいよ」
「……でもっ」
「殺されるって言ってるだろ!!!まだわかんねぇのかよ!!!!」
「!!!」
声を荒げ、私を睨みつけて来るキール君の表情は何故かとても辛そうで。
でもその顔も一瞬で、何事もなかったかのように落ち着いた声で私の手を握った。
「…お姉さんは長い夢を見てたんだ、もう醒めるべきだよ」
「えっ、」
「じゃあね」
そのまま私を無理やり引っ張り、家の外に連れ出そうとするキール君。
理由はわからないけど、何だかこのまま終わるのは嫌な気がして抵抗する。
「まっ、まって!まだ…」
「お姉さんに会えてあいつも満足だってさ」
「それっ…」
最後まで言葉を発する前に私は家の外に追い出され、目の前が一気に明るくなり思わず目を閉じる。
「うっ…」
徐々に光が弱くなり目を開けると、私は一人路地裏に立っていた。
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