【完結】劣情を抱く夢魔

朔灯まい

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1.とある噂話

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 授業の終わりを告げるチャイムがなると同時に、横から話し声が聞こえる。

「みっちゃんに速報です、めっちゃイケメンな人いたらしい」
「え、どこに?!!」
「学校近くの大通りのとこ。潰れたカラオケ屋の近くに路地裏あるじゃん?そこに行ったら会えるらしい」

 隣の席のみっちゃんこと、南さんは興奮した様子でイケメンについて話しているが、それ怪しくない??

「路地裏のイケメンって…なんかやば!」
「しかも占いやってくれるらしい」
「イケメン占い師ってこと?やばー!!!」

 隣の会話に思わず吹き出しそうになるが、ここで笑えば聞き耳を立ててるのがバレるので何とか堪える。

「え、でもさあ、あそこって昼でも何か暗くて不気味じゃん」
「イケメンに占ってもらえるかもよ??あ、でもただ条件が……やば先生きた」

(続きが気になる終わり方したよ…何言おうとしてたの西田さん…!!)

 続きを知りたいが、二人とあまり話をしたことはなく、どうにも聞きづらい。
 ましてや貴女達の話を聞いてました、なんて口が裂けても言えない。

(…授業終わったらまた話し出さないかな)

 そんな淡い期待を抱いて私は授業を受けた。

(遅刻しそうな時とか近道だから時々使うけど、誰ともすれ違わないよなあ…確かにちょっと不気味だし)

「…ぃ、」

(実は新手の変質者の話とか?ここ最近の話なのかな…見かけたことはないけど、しばらくと通るのはやめた方が良さそうだなあ)

「…ぃ、…おい!村瀬!!!」
「…?!はい!!」
「これ、解いてみろ」

 先程の会話からいろいろ考察をしていたら、先生が私の名前を呼んでいて慌てて立ち上がった。
 答えは見事に間違えていて、話を聞いてないこともバレてたらしく怒られてしまったことは割愛したい。
 その後はちゃんと授業を受けた。怒られたくないから。

「やっとおわったぁ…」
「いーおりちゃーん!やらかしてましたねえ」
「…」

 授業が終わり、颯爽と私の元へ来たのは友達の真実。
 ニヤニヤと笑いながら先程の事を揶揄ってきたので、真実の額にデコピンした。

「いたっ!!私の可愛い額が赤くなるじゃん!」
「可愛いって…もう一発いったほうがいいみたいだね」
「嘘嘘!ごめんってばー!」

 反省の色は全くないが、この底なしの明るさが彼女の良いところだ。
 少しおバカなところもあるが、それもご愛嬌。誰からも愛される子と言えば彼女のような子なんだろう。
 そんなことを本人を前に考えていたら、先生に怒られた原因のあの話題が彼女の口から飛び出した。

「そういえばさ、さっき南ちゃん達が話してたのが聞こえてきたんだけど、」
「…」
「その占い師私知ってるかも」
「えっ?知ってんの?」

 驚く私に、その反応…伊織も聞いてたね?としたり顔で言ってくる真実の額に本日二回目のデコピンをかます。
 ちなみに私の隣に座って先ほどの話をしていた南さんは席を立っていて今はいない。

「それで?」 
「この前ちょっと帰り遅くなっちゃってさ、あの裏道使ったんだけど、いたんだよ!」
「占い師?」
「多分そうだと思う!暗くて良く見えなかったんだけど、あんなとこに人なんて普段いないじゃん?」

 明るい時間でも人通りなんてほとんどないのに、夜なんて尚更いないだろう。

「流石にちょっと怖くて話しかけずに走って帰ったんだけど、惜しいことしたなあ…」
「変質者かも知れないんだから話しかけなくて正解だよ」
「えー!次見かけたら話しかけるつもりなんだけど!!」
「やめなさい、危ない」

 真実の危険な行為に釘を刺していると、いつのまにか戻っていた南さんに話しかけられた。

「村瀬さん達もイケメン占い師知ってるの?!」
「いや、私は…」
「にっしー!!!村瀬さん達も知ってるらしいよ!!」

 南さん!声が大きいよ!!!
 そんな私の心の叫びも虚しく、南さんの大きな声は当然にっしー…西田さんの耳にも入り、彼女がこちらにやってくる。

「村瀬さん達も知ってるってことはあれってやっぱり本当なのかな?」
「あれ?」
「私も噂でしか聞いたことないんだけど、占ってもらうには条件が必要何だって」
「条件って?なになに??!」

 真実の食いつきように西田さんも少し気圧されてるが、こほんと咳払いすると話し始めた。

「まず、お金はいらないらしい」
「うんうん」

 西田さん曰く、占ってもらう条件が、

 ・占う時間は夜21時から
 ・必ず一人で来ること
 ・女性であること
 ・内容は他言無用

 ということらしい。
 夜に女性が一人で訪れることって…怪しさしかないんですけど?しかもお金は取らないと。怪しくないと思う方がおかしいレベルじゃないか?

「あ、怪しい…」
「でも結構当たるみたい、その占い…うちの学校でも結構噂になってるくらいだし」

 思わず口に出して訝しむ私に苦笑いしながらフォローを入れる西田さん。
 いっそ噂等ではなくその占い師は西田さんの知り合いと言われたほうがまだ信用できる。
 だが、その怪しさ満点の話題に興味津々なのが、

「今日行ってみようかなー、イケメン会ってみたいし!」
「お??行ったら報告よろしく!!」
「私の好みだったら話さないかもー」
「それはずるいぞー南ちゃん!!」

 目を輝かせながらまだ見ぬイケメンに胸を高ならせてる南さん。
 そんな彼女の肩をいつの間にか仲良くなってる真実がバシバシ叩いてた。

「き、危機感がなさすぎる…!」
「途中までは私もついていくし、大丈夫だよ」

 何が大丈夫なのか謎の自信を見せる西田さんに、まあこう言いながらきっと行かないだろう、そう思っていた。
 まさか本当にこの日、占い師に会いに行っていたとは思わずに。
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