アメトリンと白日夢

朔灯まい

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2.不運が重なる

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「…はあ」

 口から溢れるのはため息ばかり。
 朝から晩まで彫り続けても鉱石を入れる為の袋は空っぽ。

「帰ろ…」

 ただ体力だけが奪われた一日にしかならなかったなと重い足取りで家に帰る。
 途中ウィステリアの店による事も考えたが、昨日に続いて今日も行くことは憚られた。

「…」

 家に着いても、灯りをつける事もできず真っ暗な家の中を慣れた足取りで歩き、壊れかけている椅子に腰掛ける。

「…」

 何の音もない静かな空間は、己の置かれている状況を見せつけられているようで酷く虚しくなる。
 時折腹の音が鳴って余計に惨めな気持ちになるこの時間が堪らなく嫌いだ。
 いつも、この生活をあとどれくらい続けていかなければならないのだろうと考えないようにしているのに、こういう日には決まってそれが頭をよぎる。

「…明日は、きっ…と、」

 疲れ切った体はゆっくりと眠りに入ろうとしていた。
 うつらうつらとしていると、それに合わせるように椅子が軋んで、そして脚がぼきりと折れた。

がたん

「…んっぉ!?!?」

 一本折れると、もちろん俺を支えられるわけもなく、椅子は倒れ俺も一緒に倒れた。
 そしてその衝撃のせいなのか床が抜けた。

「…あっ?!!?」

 ボロい家ではあったが、まさか床まで抜けるとは思わずさっきから奇声しか上げれていない、というか痛い。

「ったた…っくそ、んだよ…」

 椅子が壊れ、床が抜け、まさに踏んだり蹴ったりだ。一体俺が何をしたって言うんだ。

「…ついてねぇなあ」

 お尻を強打した痛みと疲労の限界にその場を直ぐに動けなかった俺は、半ば気絶するように寝落ちしていた。

「…コ、ダヨ…」
「…」
「…ココ、ダヨ…」

 誰かが俺に語りかけていることにも気付かずに。
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