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神隠しの森編

(203)イアンの赤面③

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~イアン目線~


 予想していた状況と違うとき、ロルフさんたちはどうするのだろうか?


「え、もしかして私の頭がぶつかりました!?」
「いや、あの…………むむむむむむ」


 あの子に心配そうに聞かれたけど、俺にはそう返すことしかできなかった。

 あの子は、とても柔らかかった。
 そして、何故か甘い匂いがした。

 俺が触ったら、あっという間に壊れてしまいそうだと思った。
 だって俺達竜人って体硬いし、柔らかいのって胸部ぐらいだし。

 そう思いながらも、急激に頬が熱くなるのを感じる。

 え、これどうしよう?
 あの子が落ちてきたから無意識に助けたけど、こんなに近くなるものなのか?

 そう思っていれば、ジャックが来た。

 なんか怒った顔してるけど、どうしたんだろう?
 …………俺に対して怒っているのか?

 …………何でだろう?

 俺は、彼には何もしていないはずだ。
 少なくとも、怒られるようなことはしていないはず。

 でも、彼はいつも俺に怒っていた。


ーーーー『わからなければ調べるだけでなく、時には歩みよりも必要だよ』ーーーー


 思わず心の中で首をかしげれば、前にキキョウさんに言われた言葉を思い出す。

 歩みより。

 それをすれば、彼が怒る理由もわかるのだろうか?


「そっか……………………ありがと」
「!? …………ああ」


 そう思っていれば、何故かお礼を言われた。

 …………どうしてだ?

 俺は、ジャックに何かお礼を言われるようなことをしただろうか?
 俺がやったことと言えば、階段から落ちたらしい彼女を助けただけだ。

 だから不思議に思っていれば、またジャックに睨まれてしまった。

 …………今度は何なんだ?


「でも、サーヤからとっとと離れろ」
「…………ああ」


 そう怒ったような表情で言うジャックに、なんとなくだけど理解できた。

 あんまり異性に抱き着いたりしちゃいけないって、ロルフさんが言っていたし。
 たぶん、ジャックもそれを知っているから怒ったんだろう。

 でも、ちょっと離れがたいとも思う。
 サーヤ、プニプニして柔らかいし甘くていい匂いもするし。

 そう思っているのが、バレたのかもしれない。


「何、しょんぼりしてんだよ。このムッツリ野郎」


 何故か、『ムッツリ野郎』と言われた。

 もしかして、俺の名前を間違えたのだろうか?

 そう思って訂正を求めれば、何故かまた怒られた。

 …………年が近い存在と言うのは、関わるのが難しいんだな。
 とりあえずキキョウさんに言われた通り、歩みよりというものをしてみるか。




 …………思ったが、歩みよりってどうすれば出来るんだ?
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