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霧の鬼編

(119)朝食

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~紗彩目線~


 食堂に入れば、肉が焼けるいい匂いが漂ってくると同時にジュージューと何かを焼く音が聞こえてくる。
 見回せば、近くのテーブルにメニュー表が置いてあった。


「今日は、サンドイッチとスープとステーキだな」
「美味しそうです」


 シヴァさんが、メニュー表を覗き込みそう言う。

 食堂のメニューは二種類に分かれている。
 その違いは、元の動物が肉食か草食かの違いらしい。

 肉食の方は肉の量が多く、草食の場合は野菜が多いらしい。
 それでも肉と野菜が出るのは、ジョゼフさんの話だと栄養が偏るから。

 まあ、確かに肉ばかりとか野菜ばかりとかは栄養が偏るだろうね。

 ちなみに、私がよく食べるのは草食用のメニューだ。
 まあ、もちろん他の騎士たちよりも少ない量のだが。

 草食用のメニューを選ぶ理由は、肉食メニューだと絶対に胃がもたれるから。
 …………歳かなぁ?(←25歳の成人女性)

 そう思っていると、シヴァさんによって私専用の椅子の上にのせられる。
 この時の私の役目は、場所取りと他の幹部メンバーへの目印である。

 …………まあ、ここにいる一番の理由は私が自分のご飯を取りに行くことができないからだけど。
 朝食が置いてあるカウンターには届かないし、他の大きな騎士たちに潰されそうになるし。
 それに私のことも抱き上げていたら、シヴァさんが自分の物を取ることもできないし。

 せめて成人女性の平均身長があれば……と思っていると、シヴァさんがアルさんと話しながら私の朝食を持ってきてくれた。


「おや、おはようございます」
「おはようございます、アルさん」


 アルさんに挨拶を返していれば、シヴァさんに朝食を渡される。
 私のトレイには、ブロック状の肉と野菜が入ったスープと三つの小さな骨付き肉とサラダと真っ白なパンが盛られた皿が乗っていた。
 アルさんとシヴァさんが私の両隣に座って話していると、ノーヴァさんたちもやって来る。

 全員がそろって食べ始めると、私はまずサラダに手を伸ばした。

 口の中に入れれば、ドレッシングの甘酸っぱさとシャキシャキとした歯ごたえを感じる。
 入っていた生の玉ねぎはちょっと辛かったけど、このドレッシングは初めて食べたけど結構おいしい。

 サラダを半分程食べた後は、スープの方に手を伸ばした。
 具材がゴロゴロとしているけど、口の中に入れれば少し噛んだだけで形が崩れてしまう。
 特にブロック状の肉は、ホロホロと崩れると同時に鶏がら出汁の汁が口の中に広がる。
 …………物凄く汁を吸っていて熱いけどおいしい。

 スープをまた半分程食べた後、今度は骨付き肉を手に取った。
 大きさ的には、コンビニに売っているフライドチキンと同じぐらいだ。
 一番肉がついている部分にかぶりつけば、やって来るのは甘辛のタレとふんわりとした鶏肉の食感。
 最初のころに出されて食べたのは私の顔と同じぐらいの骨付き肉だったけど、結局全部食べれなかったからそれ以来は小さくなった。

 二本ほど食べ終わって味に飽きたから、口直しにパンを手に取った。
 私の顔の半分ほどの大きなパンにかぶりつけば、あまりのフンワリ感に思わずかぶりついたまま止まってしまう。
 初めて食べた種類のパンだけど、綿菓子かと思ってしまうほどとてもフンワリとしている。
 フンワリとした食感と香る小麦粉の匂い。

 夢中になって食べていれば、シヴァさんに話しかけられた。


「それで、足りるか?」
「…………私からすれば、なぜそんなにたくさんの食べ物を食べても動けるのかの方がとても不思議です」


 シヴァさんに聞かれてしまい、私は思わずシヴァさんの朝食を見ながら遠い目で言ってしまった。

 ラーメン用のどんぶりの三倍はあるのではないかと思ってしまうようなスープの器。
 私の顔の1.5倍はありそうなパンと骨付き肉。
 サラダはなかった。

 とりあえず思ったこと。
 よく、胃がもたれないですね。
 あと、なんで朝からその量を食べれるのか非常に不思議です。




「こればかりは、体格や体質の違いだね」



 シヴァさんと私の会話に、私の目の前でパンをちぎっていたジョゼフさんが苦笑しながら言った。


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