ショートショート 【怪奇小説集】

ぺろぺろ

お仕事を探してるのね、すぐにでも入れる所があるわよ。
独身寮完備、三食昼寝付き。

最近はどこも、人手不足で、あっちの部署からこっちの部署へ移動させたり、入れかえたりと人繰りが難しくてねぇ。
それに今の若い人はやりたがらない仕事だから、なりても少なくて、本当に困ってるのよ。

お給料が上がれば少しは入りそうなものだけど、会社は拝金主義でね、自分の懐にお金が入ればいいって感じで、全然給料上げてくれないの。

そりゃあ人が来るわけないわよ。まあ、仕事の内容が簡単なのが唯一の救いね。

仕事の内容？
これ、あんまり大きな声で言えないんだけれどね。ぺろぺろなの。

ぺろぺろ？

そう、ぺろぺろ。

舌をぺろぺろする？

そう、そのぺろぺろ。

それが仕事と何の関係があるんです？

舌をぺろぺろさせて、お客さんを喜ばせるのよ。

そんないかがわしいところはちょっと。

商店街で昼から営業してるのよ、全然いかがわしくないから。

お客さんの相手をしたくないなら、しなくてもいいし...でも眠いって文句は出てるわね。寝てても起こされるとか。
あと、まかないが出るわ。まずいって苦情もあるけど、食に興味がなければ、いいんじゃないかしら。

あら、ごめんなさい私ったら、悪いことばっかり言ってるわね。

お客さんはよく来るのよ。繁盛店なの。

あなた、ならない？