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終わりの始まり
襲撃
しおりを挟む夕食が終わって1時間ほど経ち、空は完全に闇で覆われ星が瞬いていた。俺はこの景色をぼんやりお窓から眺めていた。
こっちの世界に無理矢理連れてこられて、魔王を倒してくれとか言われたと思った矢先に俺自身が魔王だったし。魔王倒したら帰れるとか言っていたけど、どうして引っかかる所があって自分なりに調べたりしてるけど、全く成果もなく。せめて空深だけでもって思ってしまう俺はダメなのだろうか......。
そんな感傷にも似たような思いに浸っていた俺を、ドアをノックする音ざ感傷にひたり、ぼんやりとして意識をはっきりとさせる。
誰だろうか?などと考えながらドアを開く。そこには、見慣れないネックレスを着けた空深が1人で立って居た。俯いていて、表情が見えないけれど、雰囲気がいつもと違ってとても心配になった。
「何かあったか分からないけど、とりあえず中に入って」
いまだ俯いたままの空深を部屋の中に入れてドアを閉める。もう一度、空深の方を見るが、以前として変化がない。こんな空深の姿は向こうにいた時一度も見たことがない。正直、どう言った言葉を掛ければいいか分からない。
「とりあえず、適当なところで休んでいいよ」
だから、無難な言葉を選び、若干空深を気にしながら部屋の奥に歩いて行った。だからなのだろう。目の端に僅かに光が集まるのが分かった。
それを見て、最初に思い浮かんだのは「何故?」という疑問。それはこっち世界に来て何度も見ているもので思わず空深の方を向く。
その次に何かが右胸に刺さる感触と今までに感じたことがない痛みだった。
「ーーーーーー!!!!」
思わず声にもならないような悲鳴をあげる。空深は構うことなく剣に力を込める。上手く足に力が入らず、押し込まれる形で部屋に入る。部屋には月の光が差し込み今まで見れなかった空深の顔を照らす。
「っ!?」
目を見て思わず息を呑む。空深の目にはまるで意識というものが感じられず、明らかに普通じゃないという事はわかった。だが、分かった所で今、何か出来る事がある訳でもなく......。
空深はその場で立ち止まり、俺は勢いを殺せずに後ろに下がる。すると、自然と剣が右胸から抜けーー踏み込みもせずに、振り下ろすように斬りつけてくる。
踏み込みも無く振り下ろされた剣は俺に届く事は無いはずだった。だが、無意識のうちにガードするように出した左腕が斬られ、肘から先が宙を舞う。切り飛ばされた腕から出る返り血が空深を濡らす。
聖剣の切れ味が良すぎた為か、刺された時のように直ぐに痛みが襲って来なかった。そして何故か剣を振り下ろした形で一瞬止まる空深。
足が絡れ、倒れそうになりながらもその一瞬を突いてダークバレットを放った。狙いはペンダント。明らかに不自然すぎる。
放ったダークバレットは寸分の狂いもなくペンダントに当たり、砕け散る。
「いやーーぁ!!!」
ペンダントが砕け散ると同時に聖剣が消え、空深が叫ぶ。
それとほぼ同時に、俺も背中から床に倒れこむ。腕から血が流れ出る感覚が気持ち悪く感じる。意図せずして、呼吸も早い気がする。
「あ.......あぁ、りょ、亮?大丈夫?」
取り乱していた空深は少し落ち着いたのか、俺の名前を呼びながら、切り飛ばした腕を拾ってこっちに駆け寄り、しゃがみこむ。
切り口を合わせて回復魔法を掛けるが、なかなか効果が現れない。良くて多少出血が治る程度だ。
「どうして!なんで傷が治らないの!」
取り乱して、叫ぶようにそういう空深。気づかなかったが、なんだかさっきまでと空気が変わってる気がする。回復を阻害するアイテムでも使ってるのだろうか?だが、自体はそれだけに収まらなかった。
部屋の外から金属が擦れる音が聞こえてきたと思うとドアが一気に開かれ鎧を着た兵士が入ってくる。一瞬だけ空深は振り返るがすぐに俺の治療に戻る。だが、それを止めさせるように二人掛かりで空深を取り押さえる為に腕を掴み俺から引き剥がそうとする。がだ、空深は二人の兵士を諸共せず、逆に二人の兵士を強引に引き剥がして、入り口近くに居る兵士に押し返す。
しかし、一人だけ部屋の隅を通って俺のすぐ側まで来いた。そして剣を抜いていた。
「だめーー!!」
その兵士に気づいた空深は叫びながら俺を守るために駆け寄ってくる。だが、どう足掻いても空深が俺のところに来るより、兵士の剣が俺の首の切る方が明らかに早い。
だが、不意に空深の魔力が高まるのを感じてーー俺の姿はこの場から消え、気を失った空深と唖然とする兵士達が残った。
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