上 下
67 / 113

67

しおりを挟む


祈りの間でお互い誓いを立て、そして真実の名ー…真名を交換をした。


ここに来る前……社長の切羽詰まったようなプロポーズに、私はなんて応えたのか……今までの私を見てくれれば、断る理由なんて塵ほどもない。
ないのだけど……不覚にも、社長のプロポーズを聞いて、気分が天に昇り過ぎて降りてこず……正直、自分がどんな言葉でどんな風に応えたのか覚えていない。


まるで熱に浮かされて、自分の声が自分以外から出ているんじゃないかと錯覚するほどテンパった結果、すっごくテンションの高い社長にお姫様抱っこされた挙句、ドラマのようにクルクルと回り、抱き上げられたそのままに、ここ…祈りの間に連れて来られた。


で……テンションマックスで勢いで入ってしまった社長も、外界との扉が閉まってしまったあと我に返った…らしい。


「ごめん……有頂天になり過ぎて、伴侶の契りのこと言う前に入っちまった」


さっきまでの満面の笑みが一瞬にしてどこかに吹っ飛んでしまった社長は、気のせいか顔色が悪い。



⚫〇⚫〇


ここ…祈りの間は代々ここの当主が守り、祈りを捧げる場所らしい。そして、一族や一族に関係する者の儀式を行ったり、契りや契約を結んだりする場所らしい。


そして……一度扉を閉ざしてしまうと、契約の可否云々関係なく、儀式が終了しない事には扉が開かず……一度儀式をしてしまうと、同じ儀式(私と社長の伴侶の契りの儀式)をするには、また一年近く、社長が祈りを捧げないと出来ないらしい。


そんな事を聞いてしまって、延期で…なんて事が言える訳もなく、儀式の決行を了承したけれど……色々と順番が逆になってしまったと、思わず漏らしてしまった。


儀式については……この祈りの間を支配する、人間の神にも等しい存在との契約で、自分以外に伝えることは出来ないらしい。


後日勢い余って言ってしまいそうになったけれど、自然に声が出なくなってしまい話せなかった。


当たり前だけれど、社長の真名も他人には…社長が許可した者にしか聞こえないらしく、私が他の人の前で社長の名前を呼んでも、社長が対外的に使っている名前に変換されて聞こえるらしい。


何度も体験できる事でもなく、私的には思い出として映像で残しておきたいくらい感動した儀式だったけれど、人外さんを護る為に必要なシステムなんだろうと納得した。


いずれ、自分も護ってもらう神様なのだ。
私も日々感謝し敬っていこうと思う。


ちなみに…社長の真名は『雪斗ユキト』と教えて貰った。
私が普通に社長の真名を呼んでも、他の人には『崇史たかひと』と聞こえるらしい。どんな仕組みなのか、社長も解らないらしいが、これも人外さんを護る為のものなのだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

キャバ嬢とホスト

廣瀬純一
ライト文芸
キャバ嬢とホストがお互いの仕事を交換する話

黒き翼と、つなげる命(みらい)

和泉ユウキ
ライト文芸
月が煌々と輝く闇の中。 黒い艶やかな髪をなびかせたその女性は、無感動に言い放った。 「あなた、――死ぬのは、恐い?」 それは、愛を知らずに育った青年と、死ぬことを知らずに生きた女性の、静かに始まる物語。 *カクヨムにも掲載しています

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...