人外さんに選ばれたのは私でした ～それでも私は人間です～

４５

外見に似合った内装かと思ったら、中は至ってシンプルな…少し大きな旅館と言った感じだった。
洋風かと思ったらわりと和が入っていて、中々落ち着けそうな感じだ。


「ナヅナ先にこいつを俺の部屋に連れて行っていてくれるか？それとお茶も」


そう言って、社長はまた外に出て行った。
置いて行かれてしまい、思わず社長を目で追ってしまっていたら、ナヅナさんにまたも吹き出されてしまった。


「大丈夫でございますよ渡利様。旦那様は帰ってくると屋敷内の祈りの場に必ず行っております。今もそちらに行ったのかと思いますので、渡利様はこちらに……」


玄関ホールを抜け、中庭のようなところに面した廊下を渡り、突き当りの扉を開く。
まっすぐ来ただけよね？？？そう思い、来た道筋を思い出しながら振り向くと、ナヅナさんがまたしても驚いた顔をしていた。


「父からは、渡利様は人間には珍しい『眼』を持っていると聞いておりましたが、まさかこれも感じ取ってしまうとは……」


いったい何のことなのかと聞いたら、この屋敷には社長やナヅナさん以外にも、住み込みでのお手伝いという名目で二十人近くの人外さんがいるとの事。そしてこれ。
これは、きっと海外の童話などに出てくる家妖精（ブラウニーとかシルキーと呼ばれる妖精）の存在の仕業なのだろうと思う。


「玄関ホールからまっすぐ来たはずなのに、もうまっすぐな廊下がない」


「この屋敷に人間が足を踏み入れるのは、私がここの家令になってからは一度も…資料の方を見ても少なくとも先々代の時代にはおりませんでした、おそらくそれが影響しているのかもしれません」