上 下
26 / 113

26

しおりを挟む



あれ?言ってなかったっけ?


勇樹を病院に送り出しながら思う。
まぁ…名前だけだし。そんな重要案件じゃないから言ってない可能性は多いにある。
それに、中途入社したらいきなりだもん。
"浮かれて"じゃなく"気が重くて"言えない。どう考えてもおかしいからね。


そんな事を考えつつ、家のパソコンから父にメールを送り、掃除と洗濯をする。
多分…勇樹は、学校とバイト…時間が空けば病院にと…家にいる時間が無いくらい忙しくしていたのだろう。母がいないのだから荒れるだろう家の中が、多少埃っぽくなっているだけだった。


『おはよう…今、どこにいる?』


頭の中に響く社長の声……。
いつもなら、起きたらすぐ、普通にふわふわ飛んで来るのに……どうしたんだろう?
お風呂掃除をしながら、家の中で掃除してますよーっと念話を送ったら、そこから動くなよ…と言われたきり、念話が途切れてしまった。


なんだろう?何かあったのかな?
それとも……昨日の解呪したはずの呪い?


社長があんな切羽詰まったような言い方をしたのを初めて聞いた。
何かがあったか、もしくはこれから起こるのか……それか今の私では対応できないか、社長や都築川さんとか…人外さん達でなければいけないものなのか……。


古物・古書の世界に入ってもう六年近く。
寄り道や休息しながらだけど、ここまで……はっきり言えばこんな体験は今迄なかった。


まぁ……自分で言っておいてなんだけど……前の会社は同じ古物を扱いつつも、扱っているのは問題になるような物がなかったのかもしれない。
なんてったって、今の会社は私の目が届く範囲でも八割が人外さんだから。


考えただけで色々集まって来そうだ。


現に…いわゆる『いわく付き』の物は高めに買取り、解呪したり供養したりして再度流通に載せるらしい。


もちろん、その『いわく付き』が良い!と騒ぐ人達には、余程じゃなければ売るらしいので、何か規定があってのものではないんだろうけど。


「それにしても…社長ってば何だったんだろう?」


そんな事を考えた瞬間、今まで物音がしなかった廊下で、女の人の呻くような声が聞こえた。


「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…」」」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私と継母の極めて平凡な日常

当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。 残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。 「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」 そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。 そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

ターゲットは旦那様

ガイア
ライト文芸
プロの殺し屋の千草は、ターゲットの男を殺しに岐阜に向かった。 岐阜に住んでいる母親には、ちゃんとした会社で働いていると嘘をついていたが、その母親が最近病院で仲良くなった人の息子とお見合いをしてほしいという。 そのお見合い相手がまさかのターゲット。千草はターゲットの懐に入り込むためにお見合いを承諾するが、ターゲットの男はどうやらかなりの変わり者っぽくて……? 「母ちゃんを安心させるために結婚するフリしくれ」 なんでターゲットと同棲しないといけないのよ……。

処理中です...