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61、実験でござる
しおりを挟む「で……兄上は?」
もちろん、通常なら幽閉状態なので、外部とは連絡が取れないはずなのだけれど……。
「あちらの王女の手引きで、連絡が取れる状態にはなっておりましたが、身柄はこちらに……処罰…できる罪状が発行可能ですが…」
トマスの目が…周囲の空気が…気のせいか冷たくなっている気がするけど、ここはスルーだスルー……。とりあえずは…
「幽閉しているからちょっと気が抜けていたな……兄上にはこれを着用させてくれ」
以前に作ったバングルをトマスに渡す。
一見高価な宝飾品にも見えるが、正真正銘俺が丹精込めて、四苦八苦して作った魔道具だ。トマスが忙しいのをいい事に、仕事が早く終わった日にコツコツと作っていた。
別に、改めて準備をしていた訳では無い。
もしかしたらこんな事もあるかもね~的な感じで…それと、魔法を使える罪人がいた場合、後手に回るのは不味いだろうと…いわゆる『備えあれば憂いなし』の精神だ。
「殿下、これはどう言った枷ができるのでしょうか?」
今までしげしげと、宝飾品とも見えるバングルを見ていたトマスが、腕にはめようとしていたので、慌てて止める。
「いやいやちょっ、ちょっと待て。それは魔力を吸い取り、一定時間魔法が使えない。それと、それは前世で言うところのGPSの魔法陣も入っている。こっちにある魔石とついになっている。多少なり魔力がある兄上にはピッタリかと思ってな」
ついでに、魔力のない者には魔石を入れ替えて使用できる事も説明。
「そうそう…それは一度嵌めると对の石が揃った上で呪文を唱えないと外れないぞ。無理に魔石を外そうとしたり、バングルを外そうとすると信号が出て、身体に電流が流れる……はずだ」
一応、テストはした。自分が実験台で。
痛かった……とだけ言っておこう。
ちょっと電流が強過ぎた時は、どうしようかと思うくらいヤバかった。
実験中、動けなくなる時もあったけれど、とりあえずは無事なので、終わり良ければ全て良しだ。トマスにはバレてなさそうなので、今後も色々と自分で試しながら作るつもりだ。
「これは量産できるのでしょうか?」
何か考えがあるのだろう、バングルを見ながら聞いてきたので、魔石に魔法陣を組み込ばできるっと言うと、あと10個程作って欲しいと頼まれる。
「魔法が使えない者用でお願いします。それと殿下……」
部屋を出る際に、言い忘れがあったのか入口でトマスが振り返った。
「実験は程々に。人体実験するならばお言いつけ下さい。他国の間諜が順番を待っていますので……では、おやすみなさいませ」
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