転生して婚約破棄されたのは前世の俺の彼女です

５３、前世の俺は出来る男！…だと思う。

会場設営、各ブースでの注意事項、何かあった時の為の対処法など、会場を貸す側である俺の説明はあらかた終わり、今はメーカーの担当者の説明に入っている。


ちなみに今回のこのワークショップ、来場する客は一般のショップ経営者だったりプロのハンドメイド作家だったりするらしい。そして、今この会場で真剣に説明を聞いている人達は、その来場する客…プロのハンドメイド作家さえも唸るような物を作り出すプロ中のプロ。メーカーにとっては神様的な存在らしい。


ぶっちゃけ、大げさだなぁ…なんて思っていた。
だって、雑貨店ってあれだろ？
ファンシーグッズとかキャラクターの文房具なんかも置いてあったりして…
あとは…なんだ…チープな感じのヘアアクセサリーとか置いてあったりするあれだろ？


と思っていた。
この時まで…というか、この日までは。



「設営は問題なく出来ましたね」


ホッとしたような声で話しかけてきたのは、主催者であるメーカーの人だった。
雑貨関係の仕事はどうしても女性が多く、会場設営などでトラブルが多いらしい。
今回はそうして見越していたトラブルはほとんど無かったようで、明日からの一週間を幸先よく始められそうだと笑っていた。


たしかに……こうやってみると、会場設営にまわっているウチのスタッフ以外は女性が多い。
男女差別ではないけれど、どの仕事にも力仕事というのはあるもので、女性では難しいだろうと思う仕事も多々。
まぁ、ここにいる女性達はそんなのもモノともしないような働きっぷりで仕事を進めているところを見ると、皆なかなか気が強いのかもしれない。


そんな事をうだうだと考えつつ、明日の準備の為一度会社に戻ろうかと思って準備していた時、会場の入り口付近から、何やら言い争う声が聞こえてきた。


「このイベントが終わったら食事に行こうよ」


このセリフだけ聞くと、デートの誘いか…くらいにしか聞けないけれど、その後のセリフが何とも不穏だった。


「いい加減さ色々気付いてよ。このままいくとさ、君んとこの会社との取引にも支障をきたすようになるけど？」


っておいおい…それってパワハラってやつじゃないのか？なんて思い、おもわず周りを見回す。
下手に手を出すと、あの女性の立場が不味いかも知れない。
けど、見て見ぬ振りは気分的にできない。


なんてったって、見たまんま美女と野獣。
おまけに、会話からするとこのパワハラは繰り返されているっぽい。
さてどうしたものか………。