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「マリー…いるかしら?」


客間を借り、シンプルなドレスに着替える。
恐らく傍についているであろうマリーを呼び、帰宅についての指示を出す。


さっき、カール殿下の侍従に今現在のおよその時間を聞いていたので、迎えの馬車を準備してもらい、王宮に来るよう頼む。馬車が来るそれまでの間は……。


「お嬢様…ご無事ですか?」


転移魔法を使ったメアリが部屋にあらわれた。
だいぶ応用が利くようになったらしく、人目がない時にはホイホイ使っている。
冗談で「歩かないと足腰が弱るわよ」と言ったら、前世でも車移動が増えた時に、似たようなことを沢山言われたと言っていた。


「ホントにどこにでも来れるようになったのね」


何を基準に魔法を発動しているのか聞いてみたら、何だか自分が迷子の子供になったようで微妙な気分になった。


「あれです…前世のGPSみたいなものです。なので、ある程度地図を把握しておかないといけないのですが、そこはマッピングの魔道具を作ったので、大抵の場所は…」


なんて、かる~く怖いことを言うので、その魔道具は門外不出(私とメアリ基準)となった。
まぁ、転移の魔法とセットでの発動でないとほとんど意味をなさないらしいので、その辺の情報は漏れてもたいして怖い事にはならないだろうけど……レオナルド殿下やカール殿下辺りに知られたら、悪用はされなくても……国の内外問わずホイホイと……そう、今のメアリのように使い放題使いそうで、侍従や侍女、それと護衛任務にあたる騎士なんかはてんてこ舞い間違いなしだろう。


まぁ、転移するにもマーカーとなる物か、行ったことのある場所にしか行けないらしいので、無謀な事にはならないと思うけどね。


「じゃあ、私の魔力をマーカーに飛んできたの?」


アルメニア王国の王宮…特にこの一角は、通常は認識阻害の魔法が使われているらしく、マッピングの魔道具でもマッピングできないらしいのだけれど……


「え?それって、魔力の波動を記憶してしまえば、その人をマーカーにできるってこと?」


なんだかホントに国家機密に差し迫れそうな魔法を編み出しちゃったメアリさん。
メアリのいう方法であれば、カール殿下の魔力波動を記憶すれば、この王宮も出入りし放題ってことになってしまう。


ちょっとホントに不味いので、帰ってから魔道具自体に制約を付けることを検討しなければね。


そんなことをなんだかんだとやっていたら時間があっという間に過ぎ、迎えの馬車が来たのでメアリは転移で、私は馬車に乗り寮に帰った。
明日からはまた通常の学院生活に戻る。
今日、お茶会に来ていたミュリエッタ様はしばらくこちらに滞在すると聞いたので、レオナルド殿下の今後のことを相談しても良いかもしれない。


真純君に会えて浮かれてしまったけれど……まさか自分が『身分違いの恋』なんて経験をすることになるなんて思いもしなかった。
前世ではあんなに近くにいたのに……。


それに…『今の私』…ミーリアはまだ成人にもなっていない。
どのみち、もうじき王位を継ぐカール殿下とは縁がなかったのかもしれない。
そう自分に言い聞かせ…せめて夢の中では幸せでありたいと思いベッドに入った。
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