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は俺と結婚するんだ!他の奴と結婚なんて絶対許さない!」


いきなり言われた、カール殿下…いや、真純君の…まるでプロポーズのような言葉にビックリして、思わず固まってしまった……それに……



「今、みのりって……」



カール殿下の口から前世の自分の名前が出るのがとても不思議な感じがした。
また『みのり』って呼んでもらえる日が来るとは思わず、気が付けば涙をボロボロ流していた。


「みのり?どうした?…??えっ?もしかして、みのりじゃない?」


一人おろおろする姿が、まるっきり前世の真純君と被り…変わっていない事が嬉しくて、また涙が溢れた。
もう二度と会えないだろうと思っていた彼が……眉毛をハの字にした、ちょっとヘタレな真純君がいる……。
ただそれだけで嬉しくて、涙が止まらなかった。




●○●○



カール殿下に手を引かれ去っていく二人を見送る。
マリーが護衛についているので、万一のことなどないとは思うけれど、カール殿下の中身がだ。
の兄を何年もやっていた身としては、少々不安だ。
けれど、自分がいなくなってそれなりの年数も経っているはず。
そんなに、心配しなくても大丈夫か…とも思う。


それよりも、問題はここ。


カール殿下がお嬢様…みのりの手を引き王宮へと消えた……自国の王子が他国の令嬢と……となると、今後お嬢様への風当たりも強くなりそうだなと思って周りを見ると……ご令嬢方の視線が私に集まっているのに気が付いた。


「あっあのっ…アルベルト様でいらっしゃいますか?」


頬を紅潮させ、瞳を潤ませて迫りくるミュリエッタ様&エリザベス様。


あっ不味った……すっかり忘れていた。
今、自分はことをすっかり忘れて、ご令嬢方の前に出てきてしまった。


「ほぉ…アルベルト……確か、スペンサー子爵家へ養子として入ったと聞いていたのだが、確かか?」


氷点下のウィリアム殿下の視線。
すっかり目をハートマークに変えてるミュリエッタ様そっちのけで何やってるのよ!


と心のハリセンをフルスイングしつつ、ここは冷静に…


「なんのことでございましょうか?これは、ミーリア様専属で護衛に着く際の魔法士としての正装でございます。侍女のお仕着せでは何かあった時に動けませんから。わたくしは、ミーリア様の侍女兼護衛魔法士のメアリでございます」


そういって、仰々しく礼をする。
そう……お嬢様の傍にいる時はメアリ。男装してもメアリ。『アルベルト』は姿だ。


そんな攻防を、ウィリアム殿下(の中の人)と繰り広げていたのだけれど、お嬢様とカール殿下が戻ってこない事もあり、お茶会は中止となった。
お嬢様を取り囲んでいたご令嬢方には、のちほど個人的にゆっくり反省してもらう予定でいますけどね。



それに、二人の中身を知っているとはいえ、いつまでも二人きりにはさせてはおけない。
この世界の貴族である限り、醜聞に巻き込まれるのだけは不味い。
急ぎカール殿下宛に使いを出し、お嬢様を連れてきてもらえるようお願いしたのだけれど……。


「彼女は……ミーリアは、今夜は王宮に滞在させる」


一人応接の間に現れたカール殿下はそう一言おいて奥の間に消えてしまった。


どういう事かと殿下の侍従に確認したところ、お嬢様は泣き疲れて眠ってしまわれたとの事だった。


そうか……泣き疲れたのか。
あまり泣かない子だとは思っていたけれど…きっと我慢していたのだろうと思った。


色々話しくれた侍従に、くれぐれもカール殿下とお部屋はわけるように念を押して、今日は学院内の寮へ戻る事にする。

明日の朝迎えに来る旨を侍従殿に言付けて……。


怒涛の如くの急展開とは今日のようなものを言うのだろうと思いながら、マリーにはお嬢様についているように言いつけ、学院の寮に戻る。


外見はカール殿下だったけれど、前世と…自分が生きていた頃と変わらない、かわいい弟を思い出しホッとする。
それと同時に、お嬢様の傍にいる私が真咲だと気が付かない程、周りが見えていなかったのだろう弟に、先行きの不安も感じる。


まぁ…お嬢様を護ってくれるなら、自分も傍にいて力を貸せる。
とりあえずは様子を見るしかないか……。


ため息をつきつつ、誰もいない冷たいベッドへ横になる。
みんな幸せが理想よね。ホントに。
私も、みのりちゃんも、真純も……。
まぁ、おまけでレオナルド殿下も。
なかなか難しいけど。


そう思いながら、一人寂しく眠りについた。
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