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先生っ!付き添いでいらっしゃっていた患者さんが倒れていました!」


『願いを叶える』
そんな声を聞いたような気がした直後から、ぐっと身体が重くなったような気がして、次いで胸が痛くなり、あっという間にブラックアウトした……が、不思議なことに。みのりの手を握ったままベッドに突っ伏し、まったく動かないを。


俺を慌ててストレッチャーに乗せ、集中治療室に運ぶ看護士。
きっと、俺は助からないのだろうとなんとなく理解した。
だってから。


それに、さっきまで自分の身体につながっていた細い糸のようなものがぷつっと切れていた。
兄貴が死に…俺まで死んでしまったら、両親が悲しむだろうと思うけれど、これも運命だったのかもしれない。
我ながらなんでこんなに生に執着が無いのか不思議だ。


それに……みのりのいない色のない世界で生きていても、意味がない。
まだみのりの息はあるようだけれど……彼女もきっとここにはもういないだろう。
なら……。


そう思ったら、実体のない身体が何かに引き上げられるように上に登る。
俺は死ぬのか……。それを最後に意識を手放した。
もし生まれ変わるのならば、またみのりと共に在れるよう願って。



●○●○



「カール殿下…大丈夫でいらっしゃいますか?」


ウィンステッド嬢の護衛の侍女に兄貴と言ったのが悪かったのだと思うが…その侍女に空中で強い風の渦に錐もみ状態にされ、気を失ってしまっていたようだ。
気がつけばソファに寝かされ、ウィンステッド嬢に介抱されると言うなんだか微妙な感じになっている。


「すまない…女性に向かって兄貴などと口走ってしまって……」


信じてもらえるかどうか分からないが、どうせ情けない姿は見られているからと開き直り、侍女殿を『兄貴』と呼ぶに至った経緯を話す。


「実は、昏睡から目覚めた後からなんだけど……相手の感情の高ぶりや魔力の高ぶった時なんかに、その人の本質が見えるようになってね……」





メアリはその本質部分が、殿下の知る知人だったとの事だった。
殿下曰く、本質の部分の多くは前世から影響を受けていることが多いらしく、視覚化する時は、ほぼその人の前世での姿らしい。
いつでも見れるわけではないので、見たい時は相手の感情を良くも悪くも揺さぶるか、魔法の練習などに連れ立ち見る必要があるので、便利なんだか不便なんだか微妙な力だそうだ。


「では…殿下はメアリの前世を知っている……のですか?」


カール殿下の前世が気になってしまい、メアリ…いや、メアリの前世『宮藤真咲』との関わりを聞き出したくて質問して見るも、微妙にはぐらかされてしまった。


真純君ではないのだろうか……。


聞きたい……聞きたいけど、期待した答えを聞けなかった時が怖い。
真純君に同じ世界に転生していて欲しいような…欲しくないような…そこも微妙な感じだ。
そんな風にうだうだと悩んでいたら、あっという間に殿下のお帰りの時間が来てしまった。


「彼女…侍女殿に謝っておいてくれ。素敵なレディーに兄貴だなんて言ってしまって申し訳なかったと…」


と……帰り際になんだか微妙な言葉を残して行った……。


殿下すみません……実はメアリは彼女でもレディーでもありません……なんて言えなかったし…黙っていれば問題ないよね?
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