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作ると言っても特別何かするわけじゃない。
今日食べた夕食の中に、味噌に似た調味料ミッソを使った物があったので、それと野菜などの素材を少し買い取らせて貰った。


明日の朝早く仕入れがあるので、少し多めに買い取ってもらってもいいよ~と太っ腹な事を言われたので、お言葉に甘えて多めに買い取った。


メアリ…まさきにいに…と思って。
自分より少し早くこの世界に転生し、庶民の出だと言っていたから、もしかしたら普通に食べてた食材かな?とも思ったけど、一緒に食べたかったから。


それと…まだ言える勇気が無いんだけど、マリーにも知って貰えたら嬉しいなぁと思って。
って言っても、ホントに調理はしない。
野菜を塩で揉んで水分を出した物を、ミッソに埋め埋め…チーズにもミッソをペタペタ。
卵が無かったのがちょっと残念だったけどそれはしょうがない。


ホントは2,3日漬けたいところだけど、持っていくのは難しそうなので、明日の朝食で食べよう。


チーズも本当は一週間位着けて…食べる時には是非お酒も!と行きたいけど、これは流石に……とりあえずこれも我慢。


こうしていると思う。
色々考えて…先立つ物はあるに越したことはないけど…やっぱり自分は普通の…好きな人と結婚をして、好きな人にご飯を作って…という生活に憧れる。


この世界で目覚めて数年。今の暮らしに慣れて来てはいるけれど、どうしようもない違和感はある。"こういうもんだ"と思っている人が大半だと思うけれど…自分はやっぱり「わたし」を捨てきれない。


ウィンステッド公爵家の為…とはいえ、自分の人生を捨ててまで家の為には生きられない。熱烈な恋がしたいんじゃない…そんな贅沢は言わないけど、せめて普通に好きな人と結婚したい。

貴族では難しいのかな?と思うけど…
その日はそう思ったところで眠りについた。




⚫〇⚫〇



「ふっ…ふふっ…あはっ…」


またあの暗い道。
どこからか、投げやりな笑い声が聞こえる。


「あーあっ…笑える。みんな気が付かない。中身が俺だって、誰も。誰が主だっていいんだよ…王族であれば中身が誰だって!…これで、今まで俺を馬鹿にしてた奴を見返してやる。俺を馬鹿にしていたレオナルドの人生を滅茶苦茶にしてやるっ!」


暗闇の中うずくまり叫ぶ人影。
あれは誰?あそこで叫んでいるのは誰?


誰か確かめたいけれど、見つかってはいけないと心の中の警鐘が鳴る。
そう思った途端、急に動けなくなった。


早く…早く!気づかれる前に終わって!
夢の終わりをこんなに心待ちにする時が来るなんて思いもしなかった。
けれど…早く!早くっ!
もうそれしか頭の中に浮かべる事が出来ないくらい焦る自分がいた。



⚫〇⚫〇



汗だくで目が覚め、マリーに濡れタオルを貰い、軽く体を清めシンプルなワンピースに着替える。


様子のおかしい私を見て、気を利かせてくれたのか、アルベルトを連れて来てくれた。
この旅の間は、アルベルトとして同行なのでしょうがないのだけれど…メアリに傍にいてもらいたい私の我儘を聞いてくれ、メアリとして再登場してくれた。


「お嬢様…大丈夫でいらっしゃいますか?」


顔色の悪い私を見て、防音結界を張り隣に座る。


「夢を…見たの。多分、あれはウィリアム殿下よ」


隣に座るメアリがひゅっと息をのんだ。
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