上 下
25 / 135

25

しおりを挟む


魔法のお勉強の自作教材を制作中、隣のメアリがいきなりぶるっと震えた。


体調でも悪いのかと思い、今日は帰って休んだ方が良いと言ったら、すっごい勢いで断られた。なんでも…過去の経験上、こういう時は私の傍にいた方が良いらしい。
なんだそれ…とツッコミどころ満載の話だけれど、突っ込まない方がいい気がしたので、止めておいた。


そう言えば、さっき兄様も慌てて装飾用のあの短剣を取りに行っていたなぁ…。
みんなどうしたんだろう?


「あっ、そうだ。メアリ。マーキスにあんまりアホなこと吹き込んじゃダメよ?」


最近、若干突っ走っている感がある兄様の侍従のことを思い出す。
メアリに異常に対抗心を向けたり…いきなり尊敬の眼差しに変わったり。
表情を見ているだけでも面白い侍従なのだが、時々…兄様の侍従があれでいいのか考えてしまう。


昨日は、兄様がマーキスから魔道具制作を相談されたらしいのだけれど、希望する効果をなんの為に使いたいのか、いまいち理解出来ず…どんなシチュエーションで使いたいのかはっきりしないと試作も出来ないと突っ返したばかりだったのだ。


「お嬢様…別に私は、聞かれたことを普通に返しているだけですわよ?」


最近富に女らしさが増し、キラキラ度マックスの笑顔で答えるメアリ。
こういうのをいい女って言うんだろうな………って男だけどね。


「何を聞かれたの?」


試しに聞いてみれば…
「これからもずっと若の傍にいるにはどうしたらいいか?」
という相談だったらしい。


何を見て何を思ってそう思ったのか…兄様に何かあったのかな?
少し考えてみたけれど、兄様と違ってあまり外出しない私にはあまりよく分からない。
ん~…さて…。


「で、それにメアリはなんて答えたの?」


メアリのアドバイスを元に何か考えたであろうと思うので、とりあえず聞いてみる。


「特に変な事を言ったつもりはないのですが…そうですね…確か…」


常に傍にいるだけが侍従の仕事じゃないとか…主人の陰日向となり、必要情報を集めるとか……そんな感じのことを言ったらしいのだ。
まぁ、私から見てもメアリから見ても兄様の侍従はに優秀だ。
あんまり心配はしていない。


若干思考が斜め上の更に上を行くだけで……個人で見るとだいぶ残念な子なだけで、としては大変好ましいと思っている。


まぁ、本人がまだまだと思っていると言うのだ…向上心…大変良い事だと思う…のだが…。


「マーキスはアーサー様に何を?無理な事をお願いしたのでしょうか?」


マーキスとメアリ(アルベルト)は我が家で仕事を始めた時期も年齢も同じ。いわば同期って奴らしいので、色々心配なんだと思う。


「まぁ、気配を消すとか身体能力…というか、身体を物理的に軽く出来る魔道具は出来ないかって兄様に言ったらしいわよ?」


マーキスの斜め上の思考をまともにとろうとしてもどうせ外れるので無駄はしない。
年上の男性を捕まえて「あの子」と言うのもなんだけど…あの子にはある程度好きにさせた方がいいのだ…と思っている。


何かあって大変なのは兄様とお父様なので、とりあえずは魔道具に組込む属性魔法を考える。マーキスと相性が良い属性がいいわよね。
そう思い、自作教材作りに集中し始めるミーリアであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

京月
恋愛
 それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。

かのん
恋愛
 真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。  けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。 「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。  ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!

【完結】ある日突然、夫が愛人を連れてくるものですから…

七瀬菜々
恋愛
皇后シエナと皇帝アーノルドは生まれた時から結婚することが決められていた夫婦だ。 これは完全なる政略結婚だったが、二人の間に甘さはなくとも愛は確かにあった。 互いを信頼し、支え合って、切磋琢磨しながらこの国のために生きてきた。 しかし、そう思っていたのはシエナだけだったのかもしれない。 ある日突然、彼女の夫は愛人を連れてきたのだ。 金髪碧眼の市井の女を侍らせ、『愛妾にする』と宣言するアーノルド。 そんな彼を見てシエナは普段の冷静さを失い、取り乱す…。 ……。 …………。 ………………はずだった。 ※女性を蔑視するような差別的表現が使われる場合があります。苦手な方はご注意ください。

サレカノでしたが、異世界召喚されて愛され妻になります〜子連れ王子はチートな魔術士と契約結婚をお望みです〜

きぬがやあきら
恋愛
鈴森白音《すずもりしおん》は、地味ながらも平穏な日々を送っていた。しかし、ある日の昼下がり、恋人の浮気現場に遭遇してしまい、報復の手段として黒魔術に手を出した。 しかしその魔力に惹き付けられたヴァイスによって、異世界”エルデガリア王国”に召喚された。 役目は聖女でも国防でもなく「子守り」 第2王子であり、大公の地位を持つヴァイスは、赤子の母としてシオンに契約結婚を望んでいた。契約の内容は、娘の身の安全を守り養育すること。 ヴァイスは天才気質で変わり者だが、家族への愛情は人一倍深かった。 その愛は娘だけでなくシオンにも向けられ、不自然なほどの好意を前に戸惑うばかり。 だって、ヴァイスは子をなすほど愛し合った女性を失ったばかりなのだから。 しかし、その娘の出生には秘密があって…… 徐々に愛を意識する二人の、ラブロマンスファンタジー

『親友』との時間を優先する婚約者に別れを告げたら

黒木メイ
恋愛
筆頭聖女の私にはルカという婚約者がいる。教会に入る際、ルカとは聖女の契りを交わした。会えない間、互いの不貞を疑う必要がないようにと。 最初は順調だった。燃えるような恋ではなかったけれど、少しずつ心の距離を縮めていけたように思う。 けれど、ルカは高等部に上がり、変わってしまった。その背景には二人の男女がいた。マルコとジュリア。ルカにとって初めてできた『親友』だ。身分も性別も超えた仲。『親友』が教えてくれる全てのものがルカには新鮮に映った。広がる世界。まるで生まれ変わった気分だった。けれど、同時に終わりがあることも理解していた。だからこそ、ルカは学生の間だけでも『親友』との時間を優先したいとステファニアに願い出た。馬鹿正直に。 そんなルカの願いに対して私はダメだとは言えなかった。ルカの気持ちもわかるような気がしたし、自分が心の狭い人間だとは思いたくなかったから。一ヶ月に一度あった逢瀬は数ヶ月に一度に減り、半年に一度になり、とうとう一年に一度まで減った。ようやく会えたとしてもルカの話題は『親友』のことばかり。さすがに堪えた。ルカにとって自分がどういう存在なのか痛いくらいにわかったから。 極めつけはルカと親友カップルの歪な三角関係についての噂。信じたくはないが、間違っているとも思えなかった。もう、半ば受け入れていた。ルカの心はもう自分にはないと。 それでも婚約解消に至らなかったのは、聖女の契りが継続していたから。 辛うじて繋がっていた絆。その絆は聖女の任期終了まで後数ヶ月というところで切れた。婚約はルカの有責で破棄。もう関わることはないだろう。そう思っていたのに、何故かルカは今更になって執着してくる。いったいどういうつもりなの? 戸惑いつつも情を捨てきれないステファニア。プライドは捨てて追い縋ろうとするルカ。さて、二人の未来はどうなる? ※曖昧設定。 ※別サイトにも掲載。

愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️
恋愛
 リベリアはお飾り王太子妃だ。  夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。 そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。  ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?   今のところは…だけどね。  結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

処理中です...