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しおりを挟む兄様帰省。
侍従のマーキスと共に帰ってきた兄様は、ただ今お父様に帰省の挨拶中だ。
兄様を手ぐすね引いて待っていた私だけど、いざとなったらやっぱり怖い。
前世ではイケメン残念率のお陰もあり、どちらかというと私が冷ややかな視線を送っていた立場だったのだけれど、今世は一番身近なイケメンがお父様と兄様だ。
いくら残念だと知っていても、お父様や兄様に冷ややかな視線を向けられたら、へこむどころの話ではない。
身内からの冷たい視線……考えたくもない。
そう思うのだけれど…どうしたものか。
兄様のあの冷たい態度、悪玉令嬢菌が兄様に影響を与えているであろうことは確実なんだけれど…治癒魔法を掛けてみるにも、まずは兄様に触れなければいけない。
治療魔法の練習をしていると言っても、離れた場所からかけたり広範囲にかけたりはまだ無理だし、メアリ曰くその方法は伝説でのみ語られる聖女や聖人くらいしかできないだろうとの事だ。
まぁ…出来てもやってはいけないってことね。
そうね…聖女なんて奉りあげられたら最後…神殿の良いように使われたり、政治的駒に使われたり…考える限りでも碌でもない未来しか見えない。
目指せ!可も不可もなく!だよね。
聖女なんかになったら社畜のまっしぐら………ゾッとする話だね。
よく聞く乙女ゲームだったら主役の令嬢が聖女で、最後は王子と結婚して…ってのが王道なはず。悪玉男爵令嬢とバカ王子……いい感じの組み合わせ?
と…ここまで考えて、自分で自分の思考にちょっと反省する。
バカ王子はともかく、男爵令嬢の方は会ったこともない人だ。
見ず知らずの人に、面倒を押し付けちゃ不味いよね…と。
⚫〇⚫〇
「父上…これは…」
帰省してすぐ、父上の執務室に挨拶に行ったら、いきなり書類の束を見せられた。
ミュリエッタ孃についての調査報告書だった。
前回帰省した時は何も言われなかったから、調べたのはここ最近なのだろうか?
これを見せられるという事は……。
「だいたい察しはついたか?」
僕の表情を読んだのか、先回りされた気分だ…。
「この帰省を区切りで、学院を休学しろ。これは命令だ。メアリから短剣を送られたと思うが、それも思うような効果が出なかったと聞いた」
短剣……あの装飾用の短剣か…と思い出す。
そういえば、あの剣を振っている時は思考がすっきりしていた。
あれは魔道具だったのか…。
腑に落ちて納得出来て、次の書類の束をみる。
ミーリア・ウィンステッドについての調査報告書?
なぜ父上はミーリアについて調べているのだろうか?
まさか、実の娘では無いなんて言い出すのではないか…父上が何を思って僕にこれを見せたのか解らない。
「その魔道具を作ったのはミーリアだ」
一瞬何を言われたのか解らず、無言で次の言葉を待つ。
「ミーリアは恐らく魔法を使えるのではないかと思う。まぁ…きっかけは例の事件だろうと…。私も忙しくてつい放っておいてしまうのだが…マーガレットが言うには、治療魔法…癒しの力があるのではないかと言っていた。もしそうなら、聖女などと巫山戯た称号を付けて連れ去ろうとする神殿や、他の貴族から守ってやらねばなるまい」
そう一気に言ってため息を一つ落とす。
普通なら身内から聖女が生まれれば喜ぶのだろうが、父上は家族愛が強い
再婚はしたが、亡くなった母上を今も愛していることを僕は知っている。
「父上、一つ提案があります」
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