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しおりを挟む「おじょうさまぁ~♪今度のお休みにはアーサー様がお帰りになりますよ~」
今にも踊り出しそうなメアリ…。
まぁ…彼…いや…彼女は今幸せの絶頂なのだからしょうがない。
なぜなら…先日、念願の恋を実らせ、前世風で言う同居?同棲?を始めたから。
前世も今世も、身体は男・心は女という、本人にとってはとても捻れた人生を生きてきた彼女。前世では周囲の期待に押し潰され、一歩を踏み出せず終わってしまったけれど、今世…この異世界で、ようやくパートナーを得た。
まぁ、この世界はそういった同性同士にあまり偏見がない…訳ではない。
前世ほどではないけれど、そこそこ偏見はある。
まぁ、前世と大まかに違うところは情報の曖昧さだろうか。
ちなみに…アーサーとはミーリアの兄様…まぁ、私の兄の名である。
そうか、帰ってくるのか…今度は無視されないといいなぁ…とちょっと思う。
だってね…流石にへこむよ。
人の趣味趣向にいちゃもんつけるわけではないけれど…メアリなんかは「あの冷たい視線がしびれるぅ」なんていっているけど…見られている当の本人にとっては、割り切ったほうがいいと思いつつもね…やっぱりちょっと。
感情とは難しいものである。
「兄様が帰ってくるなら、あれ試せるかしら?」
思いつきだが試したいことがあったので、ここ最近練習していたのだ。
「あれ…ですか?」
きょとんとしたメアリが聞き返す。
「そう、前に治療魔法っぽいもの使ったことあるじゃない?あれよ」
以前、泣きはらしたメアリの荒れた目元を無意識に治した魔法のことである。
この国で実際に魔法の勉強を始めるのは10歳になって学院に行ってから。
ミーリアは魔力量が多いこともあり、制御の為の鍛錬は(内緒で)行っているが、対外的にはまだ使えないことになっている。なので、実際どんな属性の魔法が使えるのかも解らないのだけれど、偶然使えたあの魔法は、メアリ以外には内緒で練習していたのだ。
「治療魔法でございますか?あれをアーサー様に?」
わけが解らない…という顔で見てみてくるメアリに、多少…そう多少だよ、多少…いらっとしつつ話を続ける。
「私の想像なんだけどさ、治療魔法って分類的には光系統だと思うのよ…」
そういって、手のひらにほんわりと光る魔法のボールを作る。
少し前までは、新しいお母様のつわりがひどい時にも、体力回復のお手伝いをちょっとだけした。赤ちゃんに影響があると怖いので、大体的には使わなかったけれど、お母様のお腹に手を当てて、「お願い」をしたのだ。
もう少しご飯が食べられるように…健康な赤ちゃんが育つように…。
お願いをすると、ほんわりと手のひらが暖かくなり、次いでお母様の吐き気や倦怠感が少しだけ軽減された。
この魔法なら、兄様の精神に入り込んだ、悪玉男爵令嬢を追い出せるかもしれない!と思い、メアリと二人で密かに鍛錬してきたのだ。
ちなみに…練習台はメアリと…部屋においてある植物たちだ。
下手な人を治療して、治療魔法が使えるなんて広まってしまったら面倒くさいことこの上ない。前世で仕事に振り回されてこりごりだったのだ。今世はなるべく平穏に暮らしたい。
まぁ、第一王子の婚約者候補ってだけでも平穏とは程遠いのかもしれないけれど、今はまだあくまで候補だ。決まったわけではないので、ここは目立たず騒がず…だ。
家族が身近な人が幸せならそれが一番なのだ。なので兄様、覚悟なのですよ!
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