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さっきからお父様が腕を組んでうんうん唸っている。
多分…さっきのメアリの提案の件だよね。


まぁそりゃ悩むか。だってね、男だし。
見た目はすっごく綺麗なお姉さんでも、身体は男だしね。


娘にメイドとはいえ…偽装しているとはいえ、男は不味いよね。
まぁ…侍女じゃなくメイドだから、私としては有りかなぁと思うんだけど…どうだろう。


「エドワード様、さきほど私をメイドに…と申しましたが、もう一人ミーリア様付きの侍女として採用して頂きたい者がいるのですが…」


メアリの提案に、お父様がゆっくりと目を開ける。
私は、この世界での知識もミーリアの記憶を通してしか分からない。
そして、周囲の人の情報も然りだ。


「私の義理の姉…スペンサー子爵家の娘が未亡人となってしまい、奉公先を探しております。できれば、こちらでお嬢様付きの侍女にして頂けないでしょうか?」


義理の姉…子爵家…。
義理の姉という事は…兄弟の嫁??


よく分からなくて、メアリ…いや、まさきにいに助けを求める視線を送ると、すんなり答えてくれた。

「以前にエドワード様にはお話しさせて頂きましたが、わたくしアルベルトは、先日、スペンサー子爵家への養子縁組が決まり、名をアルベルト・スペンサーと改めさせて頂きました」


その報告を聞き、お父様がメアリ…じゃなくてアルベルトを見る。
って…もう言い直すのも考え直すのも面倒なんで、全部メアリに統一でっ!!


「そうか…」


一言そう言ってまた考え込む。
そうか…この間いなかったのは、そちらの手続きや挨拶に行っていたの?
目を見ると、言葉にしない疑問を汲み取って答えてくれるメアリ。
これぞ以心伝心。


「ミーリア様…先日は私の都合でお側を離れてしまい申し訳ございませんでした」


そう言って頭を下げるメアリに慌てて顔を上げさせる。


「悪いのはメアリじゃなくて、あのバカ王子とマーカスよ!」


と…勢いで言ってしまい、ハッと口を押えた。
勢いあまって、バカ王子って言っちゃった。


メアリは大爆笑寸前、お父様は目を見開いて呆然としちゃっているし。
やっちゃったかなぁ~…とお父様をちらちら見ていると、お父様がぷっと吹き出した。
メアリはもう大爆笑中ですよ。
ちょっと居たたまれなくて下を向いたら、お父様の大きな手が頭を撫でてくれた。


「そうだな…ぷっ…確かにバカ王子だ。くくっ…でも、外では不敬罪になるからな」


そう言って遠慮なく笑い出した。
もう、二人とも笑い過ぎだ。
お父様も子供扱いしてっ!と…撫でられた頭をふと触る…。


市川みのりの髪とは全然違う手触りのミーリアの髪。
みのりの髪は少しくせ毛で、細すぎるせいか絡まりやすい。
トリートメントもマメにしていたが、気を抜くとあっという間に爆発頭だ。
なので、他人に頭を触られたり撫でられたりするのはすっごく嫌だった。
物心ついた頃には親にさえ撫でられのを避けていた気がする。



そういえば……最期に頭を撫でてくれたのは真純君だったな…。


そう思ったら涙が出てしまった。
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