生まれ変わりも楽じゃない ～生まれ変わっても私はわたし～

７ ～メアリの場合～

「みのりちゃん…」


眠りに入る前にボソッと呟いてくれたあの言葉。
まぁ…ね…。そりゃオネエにもにもなるってもんよ。


記憶のあるまま転生…なんてほんと、ファンタジーの中でしかないと思っていたけど、これぞ神様の思し召し♪なんて思っていたのは2歳の頃まで。


だってね…私…男だったの…そう…お・と・こ。
まぁね、異世界って言っても多分、前の世界と同じく性別は2種類だと思うの。
そんでもって、二分の一の確率で男に生まれた…のだと思うんだけどね…。


私、前世では男だったんだけど…ぶちゃけ女の子になりたかった人なの。
かわいい物が好きで、かわいい服が好き。ホントはスカートを履きたかったし、かわいいブーツやかわいいヒールも履いてみたかったんだけど、両親の手前…とか、年の離れた弟の尊敬の眼差しだったりがあって、踏み切れずにうだうだしてたら、強盗に襲われてあっという間に異世界転生。


うだうだ悩んでたって言っても、お隣の…弟の幼馴染のみのりちゃんとは、なぜか気にせずきゃいきゃいと女子トークしてたんだけどね。
多分きっかけは、みのりちゃんの「まさきにいはスカートも似合いそうね」だったか…。


この子…みのりちゃんは、たまにいる「偏見を持たない子」だったのよね。
おまけに、人や物事の本質を見抜く天性の力があったの。


まぁ…見え過ぎてしまうせいで、人間関係が上手くいかなくなってしまう事もあって、時々お悩み相談されたり、一緒に恋バナしたり…。


恵まれ過ぎた容姿のせいで期待され、思うように好きな事が出来なかった私と、出来すぎて他人と上手く合わせられないみのりちゃん。


年は離れていたけれど、ご近所のよしみもあって仲良くさせてもらっていたのよね。
色々変に勘繰る人もいたけど、弟の真純も一緒にいることが多かったからね…。


ちなみに…みのりちゃんの好きな人って、弟の真純だったんだけど…上手くいったのかしら？私に似て良い男なのに朴念仁なのよね。それにちょっと臆病。


私が倒れた時も…多分、みのりちゃんが頑張ってくれていたのよね。
目を開けることもできず、声を出すこともできない状態だったけど、周りの状況は何となく分かっていたの。おたおたする真純を叱咤して、救急車に乗せてくれたのよね。


あのあと…どう頑張っても駄目だったのよ。
どんなに抗っても身体から離れてしまう自分の意識…。
きっと、戻れても植物状態で家族に迷惑をかけてしまうだろうと、諦めちゃった。

諦めた途端、気が付いたら異世界転生ってんだからちょっとびっくりだったわよ。
四十九日も何もあったもんじゃないわ…なんて思いながら、順応力だけは高い自分を生かして頑張って馴染もうとしたけど…根本的な所で駄目だったのよね。
だって…身体は男、心は女子だったんだもん。