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自分の気持ち

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ミーヤお母様の出産を見届け、家令や他の使用人に引き続きのサポートを頼み、一週間ほどの休みを経て学校に再び戻った。そしてその学校内では今までになく色々なウワサで大騒ぎだった。


『カーミラ様が亡くなったと聞いた』
『城で魔力暴走が起きて死人が出た』
『王太子殿下が大けがを負ったらしい』
『ホーグワット家はもう終わりだろうな』


魔力が多いのも善し悪しだな……などとすれ違いざま、私に言い捨てていく輩もいたけれど今のところ私に何か関係があるとすれば『城で魔力暴走が起きて死人が出た』というところ。

実際の現場を見たわけでもないし伝え聞いただけの事だけれど、死人が出たのは本当らしい。
そしていまだにカーミラ姉様は目を覚まさない。
そして死んだというのがつい最近まで、学校で私と行動を共にしていたであったこと。


(便宜上だよ便宜上。そろそろ僕が人間でいなくても、セレはもう学校を卒業するんでしょ?)


他の人には見えていないという精霊のミニボディで私の肩に乗るシルフィ。
昨日久しぶりにセレーネの元に戻ってきた彼は、ここしばらくの間起こった出来事を搔い摘んで説明してくれた。


『王太子妃のカミーラは魔力を暴走させてしまったことにより自我が崩壊してしまったんだ。正直、あそこまで行くと暴走を抑えるのが難しいこともあって、僕が封印石を使ってカミーラの身体にカミーラの霧散した自我ごと魔力を封印したよ。封印と言っても彼女は死ぬわけじゃない。彼女の魔力が身体を生かす。日を追って年を追って、魔力が枯渇すれば彼女は死へと向かう。……もう自我が崩壊するほど魔力を暴走させてしまったからね。魔力暴走が静まったとて意識も戻らない状態だ」


気のせいか少し悲しそうに話すシルフィが不思議だった。
そんな顔をするほど接点があったのかと……。


「元々彼女は魔力が他の人より多かった。それが何かのきっかけで、リミッターが外れて身体や精神が耐えられないほどまで膨らんで暴走したんだと思うんだ。そして、ボク……いや、シルヴァはその暴走を抑える為、勇敢に立ち向かいあっけなく死亡……というシナリオだよ。カーミラを封印すると決めたのはホーグワットだし、夫である王太子だ。ボクだけの独断じゃないし、あの場合はああするしかなかった」


最後にボソッと『許してほしい』と呟かれたのだけれど、あれは私に対しての言葉なのだろうか?
この世界に生まれ変わり今日まで、姉妹として育ちはしたが交流はほぼほぼ無いに等しい状態でいた。
姉が封印されて寂しいか……と問われたとてどう答えていいのか分からない。
私は冷たい人間なのだろうか?

そんなことを他人事のように思いながらシルフィの話の続きを聞いていた。



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