上 下
65 / 79

カーミラの心と……

しおりを挟む


ん???

”私があの子の婚約者を取ったから?”

あ……れ?
私があの子の何を取った?
婚約者?
なに……それ?


頭の中にふっと沸いた疑問。


私があの子の婚約者を?
いつの話?私があの子の婚約者を?
だってあの子はでは初めての婚約……。

ん??

今世ってなに?

頭の中に洪水のように勢いよく流れ込む、見たことのない建物や服、乗り物に乗った
あ"あ"ぁぁぁぁ……何?これは?
あの子は誰?
あの人は?

あぁ……あの子は…あのこは私の義妹。
あぁ…あの人は……あの人はあの子の婚約者だった。
でも、あの人が欲しかった。
だって、どう見たって好き同士の婚約には見えないもの。

あの人があんな優しい目であの子を見ているのに、あの子はあの人を見ない。
なのにっなのにっ……。







♢♢♢






「カーミラが倒れた?何かあったのか?」


バタバタと執務室に入ってきた側近が、妻であり王太子妃であるカーミラの様子を報告してきた。
魔力量も多く身分的には何の問題もなかったのでここまでこれたが、ここ半年ほどの我儘には正直対応に困っていたのが正直なところ。そして今日のこれ……。

そば仕えの侍女によると、倒れる寸前まで何やらブツブツと呟き様子がおかしかったとある。
原因はおそらく、妹……現在は筆頭魔法使いであるジルベルトの養女であるセレーネ嬢の婚約だろうかと……。

以前よりカーミラから聞くセレーネ嬢の話は、あまりいいようには聞こえなかった。
報告書を見るに、カーミラが言うほどのものはなく、ホーグワット家の血筋らしく大変優秀な魔法使い……いや、精霊使いだと思った。ただ……カーミラのこともあり、父であるホーグワット侯爵と話し、セレーネ嬢のチカラのことは公にはしていないし、できずにいた。

まぁ……セレーネ嬢が契約していた精霊が精霊王となりセレーネ嬢を伴侶に選んだ以上、国としては今後の為に、ここに留まってくれるようお願いをする以外どうにも動けないのだけれど……。


「目覚めたカーミラ次第だが……動向を抑えておかなければ精霊王の不況を買うやもしれんな……」


追加で持ち込まれた報告書に目を通しながら、これからのことを思案する。
セレーネ嬢への嫉妬のような憎悪のような気持ちを抜けば、王太子妃としては優秀なカーミラ。政略ではあったけれど、それなりに情はあるが、将来さきのことを考えると色々と拙い……。


「王位継承の後には側室も娶らなければいけないのだが……」


今、妹であるセレーネ嬢に向かっている気持ちが、今後娶ることになる側室に向くのは得策では無い。

(女の感情とは面倒くさいものだ)

出てしまうため息をそのままに、報告書を投げ出し、宰相の元へ向かう。


「平穏とは難しいものだ……」


そんなことを呟きながら……。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

フランチェスカ王女の婿取り

わらびもち
恋愛
王女フランチェスカは近い将来、臣籍降下し女公爵となることが決まっている。 その婿として選ばれたのがヨーク公爵家子息のセレスタン。だがこの男、よりにもよってフランチェスカの侍女と不貞を働き、結婚後もその関係を続けようとする屑だった。 あることがきっかけでセレスタンの悍ましい計画を知ったフランチェスカは、不出来な婚約者と自分を裏切った侍女に鉄槌を下すべく動き出す……。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

処理中です...