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夏季休暇 ~精霊の遊び場へ~
しおりを挟むあれからすっかり熟睡してしまったセレーネが起きたのは、空が白み始めた早朝だった。
(自宅だからと言って気を抜きすぎた……)
ゴソゴソとベッドから起き出し、屋敷の浴室に向かう。この時間ならまだ使用人も皆が起きているわけでは無いので、当然1人だけれど、セレーネは言うまでもなく自分の身は自分でお世話できる。貴族としてのまともな暮らしはここ数年なので、どちらかというとお世話される方が辛いのだ。
そんなわけで、さっさと着替え身繕いもして、不寝番をする門番に伝言を残して、シルフィがいる精霊の遊び場に向かう。
昨日は帰宅と同時に別れ、精霊の遊び場にさっさと行ってしまったシルフィ。私と契約後は魔力の補充はいらなくなったそうだけど、最近はちょっとやることが増えたらしく、学校入学前もそうだったけれど、まとまった日数、遊び場に篭ることが多い……ような気がする。
「まぁ……遊びに来いって言ってたし」
早朝も早朝……早すぎる訪問に苦情を言われそうだけど、お誘いの免罪符は頂いているので……と言い訳をしつつずんずん歩いて行くと、霧が立ち込める湖畔の入り口が見えてきた。
初めてきた時はこんな感じではなかったのだけれど……近隣に人が住み、人が立ち入ってしまうことも増えた弊害なのだろう。数年前からここは、別名『迷いの森』と呼ばれるようになっていた。そして……この迷いの森を提案したのが自分だったりするのだから、ちょっと笑ってしまう。
実際はどこかの何かの真似事なのだけれども、それはそうでもいい事。
とりあえず精霊にとって大切な場所である、精霊の遊び場を守るのが最優先だからね。
「さて……」
通常人がここに来て、この先に足を踏み入れればぐるぐると歩き回ったあげく、ある程度の時間でまたここに戻るという、空間魔法を使った迷路的な仕掛けがしてあるわけなのだけれど、まさか提案した自分までその迷路を歩くつもりは毛頭ないわけで……
「シルフィ……」
契約した精霊の名を魔力を込めて呼ぶ。
たったこれだけだけれど、これで契約した精霊が迎えに来てくれる……そんな仕組み。
ちなみに、この大陸各地にある似たようなスポットで順次活用され始まっているらしい。
それだけ人間が未開の地へ足を踏み入れることが多くなったということなのだろう。
良い事なのか悪いことなのか……しばし考えて、考えるのを止める。
(私一人が考えてもどうにもならないことだしね……)
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