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ミーヤという女性
しおりを挟む旦那様とユアン様、そしてセレーネ様3人でのお食事。セレーネ様は不安気な顔をしていた。けれど……。
「大丈夫です。ミーヤが付いていますから」
昨日は一日中そわそわする彼女に掛け続けた言葉。そして……。
「ねぇ、ミーヤ。お願いがあるの。今夜だけでいいの。今夜、一緒のベッドで一緒に寝たいの。朝までずっと……ダメ…かしら?」
本当はいけないのかもしれない。
お仕えするお嬢様と一緒のベッドなど……。
それに……この家の教育方針に相反してしまうことなのかもしれないけど……。
「今日だけでございますよ。また明日からは一緒に頑張りましょうね」
クチに出してしまったのは了承の言葉だった。一瞬「しまった」と思ったのだけれど、彼女の嬉しそうな顔を見て取り消すのをやめた。
明日の準備も済ませ、彼女が待つ部屋に足早に向かう。予定より遅くなってしまったので寝ているかも……そんな風に思っていたら、ベッドサイドの灯をつけ本を読んでいたようだけれど、私の顔を見て嬉しそうに場所を作ってくれた。
「ここよ。明日の朝まで一緒よ♪」
ここ最近は考え込んでいることが多かったせいか、久しぶりに見る子どもらしい表情に私の頬も緩む。
それからは彼女にせがまれるがまま、腕の中に抱き込み、色々な話をした。まるで本当の親子のように。
結婚はしたが子に恵まれず、追いやられるようにこちらに奉公を決めた頃には夫婦関係は破綻。籍だけを残し数年ほど過ぎたが、昨年正式に離縁が決まり、改めてセレーネ様付きの教育係件侍女として契約を結び直して今に至る。
形としては奉公……使用人という立場で労働なのだけれど、子どものいない……できない私にとってはこれ以上ない環境だった。だって可愛い可愛いセレーネのそばにいて、育てられる。代替え行為だと言われようが構わない。
母親のいない、何度掛け合おうと彼女を顧みない旦那様に代わり、我が子と思ってここまで愛しみ育て教育した。
そして……その愛おしい子が今、私の目の前で泣いている。昨日、寝入り端「母様」と呼んでくれた可愛い我が子が泣いている。
ユアン様が憶測のみで言った言葉に、驚き悲しみ泣いている。
室内に吹き荒れる魔力の暴風の中心で泣く我が子。
今行くから。
そこに行くから。
一人で泣いてはダメ。
皆が、周囲が恐れをなし引き下がる中、私は無我夢中で飛び込んだ。セレーネのもとへ……。
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