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第20話

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20話

嫌な足音が……

バンッ!!

と、勢いよく、僕の部屋の扉が開かれた。

ほら………

「お兄ちゃんっ!今日は暇?暇だよねっ!買い物手伝ってっ!」

「う、あ、おう」

なんか僕が、暇人みたいじゃないか。その言い方はやめてほしいな。と、思いつつ、僕は腑抜けた返事をした。

「なーに?不満でも?」

「あ、いえ、何も」

「じゃ、行こっか。お兄ちゃんっ!」

「う、うん」

とりあえず、僕の部屋から妹には出て行ってもらって、僕は着替えを始めた。
相変わらず、どこから入手したかもわからない服がズラリと、僕のクローゼットの中には入っていた。

服って難しいよな……しかも、これだけあるとまた一層………

おしゃれセンスなんて持ち合わせてない僕は悩んでいたが、別にデートでもないし、オシャレする必要なんて皆無だ。ってことに気がついた。

なら、いいか。

………………って、言ってもな。

ダサい格好ってのもあるわけでして………

「どうしたんですか?士郎さん」

と、声が聞こえた。その声の主はまあ、考えずにでもわかる。インスタントガールフレンドだ。

あれ?どこだろう。

姿が見当たらない。

僕は振り向き、窓、窓の外、ベットやら探したが、いない。

なんだ?

「おい!どこにいるんだ」

返事がない。まあ、別に今回はデートって訳でもないし、いいか。と、思い僕はクローゼットにまた戻り服を漁っていると………

「うーわぁっ!!」

「驚きました?士郎さん」

インスタントガールフレンドはクローゼットの中からひょっこりと顔を出していた。

「そ、そりゃ、驚くだろっ!!」

「で、御用ですか?」

「うーん」

どうなんだろ。別にただ、梨花と買い物行くだけだしな………

「そうでしたか。……ふふ。では、士郎さん何の御用ですか?」

と、間になぜかあざ笑うに近い笑みを浮かべて、僕にまた問いかけてきた。

「なあ、一つ聞いていいか?」

「はい?どうしました?」

「これって、お願いしてもいいのか?だって、別にデートとかじゃないんだぞ?」

「いえいえ、は、はふ……別に大丈夫ですよ」

と、完全に笑いを抑えようとしているインスタントガールフレンド。

「何か隠してるな?」

「ういうぇ……うべつぅに」

「顔隠しながら何言っても説得力ねえよっ!!」

「なんでもないですって」

「仕方ない。これはやりたくなかったんだが、やるしかないようだな」

と、僕はポケットからサバイバルナイフを取り出すと、そのまま突き刺した。

「い、いったぁーーいっ!!」

と、激しい悲鳴が僕の部屋に響いた。

「何するんですかっ!士郎さんっ!」

「自分の胸によく聞けっ!」

と、僕が言うとインスタントガールフレンドは自分のその大きな物に

「ねぇ。私はなにかしたの?」

と、聞き始めた。

こいつバカだな。

てか、これは凄い。男ならば、やめてほしくない。なんともぷにぷにで、柔らかそうな……

いかんいかん。正気でい、色気やばっ……じゃねえっ!!

「 お前はバカなのか?」

「いえ、大馬鹿です」

黙ってろよ………

「で、何を隠してんだ?」

「えっと、普通に考えればわかることですが、教えましょう。えっと、私、インスタントガールフレンドを呼び出す目的はなんですか?」

恋愛などのわからないこと……だっけな?

「そうです。で、妹さんのことを考えて私が出てきたということは……」

「俺が恋愛対象にしてるってことか!?」

「はいっ!」

「嘘だっっ!!!!!」

「竜○レナ風に言っても無駄です」

いや、嘘だろ……

だって、あの妹だぞ?確かに可愛い。愛嬌だってあるし、家事も出来る。そんなことはしってる。だけど、妹だぞ?例え、好きだとしてもそれは家族だから、妹だからの好きだよな。

「いえ、これは恋愛対象の好きです」

と、きっぱりインスタントガールフレンドは言い切った。

いや、僕は認めねえっ!あいつがなんと言おうとも、絶対に違うっ!

「そうですか。なら、それはそれでいいでしょう」

と、言うと、インスタントガールフレンドは指を鳴らした。すると、ん?何も起きないぞ?

「いや、体を見てください」

「う、うわぁっ!!」

僕はそのまま目を下ろした。

体に発せられる光……いや、これは発せられてはないな。巻きついてるんだっ!!

「何をしてるんだ!?」

「コーディネートですよ」

と、言うと指をインスタントガールフレンドはまた、同じように鳴らした。そして、その光は消えた。

そして、インスタントガールフレンドはクローゼットの扉の裏を鏡に変えた。

鏡に変えたことには驚いたが、まあ、あいつなら出来ても不思議ではないな。

その鏡をみると………

一言で言うならおしゃれだ。

まえは、ただのYシャツとジーパン。

だが、今回はラフに買い物とかで着そうな。青と白のボーダーでその上に羽織るように白のシャツ。そして下はジーパン。

白が主体のアクセントで青が入っている。

動きやすいし、なんておしゃれなんだっ!

「お気に召しました?」

「あ、ああ!うん」

「それは良かったですっ!では、私はこれで」

「おうっ!」

なんか、いつも通りだったな。

なんて思いつつ、僕は自分の部屋から出た。すると、着替えを済ました梨花がいた。

……やべえ。かわいい。てか、いつも思うんだけど、僕の周りにはおしゃれさんしかいないのか!?

「えっへへーんっ!お兄ちゃん。どど?この服ど?かわいいでしょー」

「あ、そ、それなりに………な」

「あー。そういう冷たい態度とるから、お兄ちゃんは高2にもなって彼女ができないんだよ?」

う………確かに素直に言えば、好感度だって上がるだろう。だけど、恥ずかしいしな……

「どうしたの?お兄ちゃん」

でも、こんなんだから彼女の一人もできないんだ。なら、言ってやるっ!!

「いや、なんでもない。えっと、その服……かわいいぞ」

と、僕が言うと、梨花は俯いてしまった。

やっベー恥ずかしい………し、失敗した!?どうせ梨花のことだから、「そうそう。そうしてればいいんだよっ!」みたいなこと言うかと思ったんだけどな……

僕は苦し紛れに先に行こうと歩き始めた。

な、なんだ……これ。

そんな僕の服の袖を梨花が掴んでいた。そして、僕は必然的に後ろを振り向いた。

「お兄ちゃん。あ、ありがとう」

と、顔は俯いていてよくわからなかったが、いつもとは何かが違うな。とはわかった。なんだ?いつも元気いっぱいなのに、今回ばかりは違う。

なんで?僕のせいか?

「どうしたんだ?梨花。僕のせいか?」

「い、いや。別にお兄ちゃんのせいじゃないよっ!」

横に首をブンブン振りながらそう言った。

「そうか。じゃ、どうしたんだ?」

「どうもしてないどうもしてないっ!」

また、横に首をブンブン振ってそう言った。

「そうか。じゃ、行くか」

「うんっ!」

いつもの返事だ。良かった。

一安心して、僕らは買い物に向かった。

*****

どうせ、ご飯の食材などかと思っていたが………ついたのは、ショッピングモールだった。いつも食材などはスーパーで買うのになんでだ?

「あ、お兄ちゃんっ!私の服を……ね?一緒に選んでくれないかな?」

と、上目遣いでそう言ってきた。

うわっ!なんなんだよ。いつもの違いすぎるだろ……

本当に梨花か?

「ダメ………かな?」

「いや、いいよ」

こんなの断れるわけねぇだろ。

「やったーっ!」

と、いつものように元気に戻った。

女子ってのはよくわかんねえな。

「じゃ、お兄ちゃんここ行こっ!」

「う……」

と、言って入って行ったのは女性用下着のお店だった。

入れるわけねえだろっ!!!!

「あれ?お兄ちゃんどうしたの?」

「どうしたの?じゃないっ!入れるわけないだろ?」

「なんで?お店の中に男の人いるよ?」

「うるさいっ!とにかくだめなものはだめだ」

「でも、最近胸がきつくなってきたんだもんっ!お兄ちゃんは私に、この苦しみを一生味わえっていうの?」

う………

平気で胸やらを大声で言う妹……本当に人違いであってほしい。

「一人で行けばいいじゃねえかっ!」

「一人は怖いんだもんっ!」

「じゃ、母さんと…………」

母さんと行けばいい。と思ったが、それはさすがに責任感がなさすぎるな。

「友達と行けば?」

「嫌だ!だって、友達にそんなこと頼めないもんっ!」

「なんでだよっ!」

「だって、胸の大きさとか、友達とかに言いたくないし……」

なぜだ。なぜ胸の大きさとかを大声で言えるのに、友達とかに…と、入った瞬間に小さくなっていくんだ!?恥ずかしいという概念が変なのか!?

でも、僕も絶対にこんな女性用の下着店には入りたくないし、梨花は梨花で引かない。

どうすれば………うん?待てよ。

友達とかに知られたくないってことは、僕にも知られたくないはずっ!

「それだったら、僕にも知られたくないんじゃないのか?」

よし、決まった。帰ろう。

と、思い僕はさっさと、その女性用下着店の前から立ち去ろうとした。その時っ!

あろうことか。変な回答が帰ってきた。

「お兄ちゃんになら、別に……いい」

と、梨花は手に持っていたポーチで顔を隠しながらそう言った。

いや、よくねえだろっ!

そして、こんな騒ぎをしていたので、当然注目も引くわけで……

周りの人からの目線が冷たい。

「何あれ」「喧嘩だよ」「下着店の前で喧嘩とか笑える」「今夜は………パーティだねっ!」

最後のやつちょっと殴ってやるから出てこいっ!!

ここで、長引かせたらだめだ。

きっぱり断ってみよう。これがラストだっ!

「なあ、梨花………」

本当にだめか?と、訊こうとしたが、やめだ。

こんな今にも涙がこぼれてしまいそうな妹に、本当に入らなければいけないか訊く?

んなもん、出来るわけねえだろっ!

僕は無言でその店に入った。

店の中は少し明るく、ザ・超健全!露出が下着なのにないようなものや、これってもう、紐じゃんっ!というようなものまで、多種多様な下着を売っている。

当然、四方八方下着だらけだ。こんなの、どこに目をやればいいかわからない。

「お兄ちゃんっ!じゃ、早速着替えよー。っと、じゃ、お兄ちゃんはぷらぷらしてて」

待て待て。ふざけんなよっ!こういうのマジで勘弁してくれよ。

という僕の心の声はいつにも増してはしゃいでいる梨花にはわかるわけもなく……どこかにいってしまった。

ここで放置とか。一種のいじめだな。

僕はこの目に悪い場所で、妹を探していた。一通り探してみたが、どこにもいない。ってことは試着室あたりか?

「あれ?二宮?」

と、金髪の小さい見覚えのある子供みたいな人がいた。

「あ、井上先輩………」

……やべえ、気まずい。

「なにしてるの?」

「え、えっと……妹に言われて……」

くっそ。言葉が出てこない。なんて説明するんだ?

「妹さんに言われて何?どうしたの?」

「えっと、一緒に選びに来ました」

あ………やべえ。言った後に気づいたが、こんなこと言っちまったら、妹と兄の関係じゃねえみてえじゃねえかっ!!

「そ、そっかー。いろいろあるもんね」

と、なんか哀れむような目線を僕に送ってくる。

「じゃ、私はそろそろいくね。なんか、ごめん」

グサッ!!!!

と、心に「ごめん」の一言が突き刺さった。

ごめんはやめてくれ………

同情なんて求めてねえっ!!

てか、井上先輩って別にいらないんじゃ……

バンッ!!!!

と、僕は頬に強烈な一撃を貰った。

い、いてえ。

「なんで殴るんですかっ!」

「なんか今、不愉快なこと考えたでしょ?」

確かに……

と、思っていると顔に出ていたのだろう。

「そうらしいわね……」

本当厄日だ。

バンッ!!!!

「うっ!」

腹がえぐられるような、ドスッと重い一撃をもらい、吐きそうになった。

なんという豪腕……

「お待たせっ!お兄ちゃんっ!」

と、言いながら、試着室から出てきたのは、梨花だった。

「って、なんて格好してんだっ!」

「だって、お兄ちゃんに判定して欲しかったんだもんっ!」

あーもう。こんなとこを井上先輩に見られた……最悪だ。

「さっきまで誰と話してたの?さっきまでお兄ちゃんと誰かの声がしてたんだけど……」

先ほどまで僕の近くにいた先輩は居なくなっていた。

これは好都合。あれは無理だ。ここで闇妹になられると厄介だ。

「なに?だれなの?」

「あ、うーんと……先輩だよ」

「女の人?」

「いや、声がすごい女の子っぽい豪腕な人だよ」

「へぇ…」

半信半疑って目だが、まあ、このくらいでいいだろう。

うっしゃーなんとか乗り切った。

「てか、さっさと服を着なさい。いつまでそんな格好でいるんだよっ!」

「だめなの?私の下着は」

確かにすらりと長い足にその純白のシャツのようなブラジャーはなかなかいいし、かわいい。どう考えたって似合う。

「似合ってるんじゃないか?」

と、僕は素直にそう言った。

「そっか、ありがとう」

と、梨花はじけるような笑顔でそう言った。

でも、なんで僕に判定して欲しいんだ?意味わかんねえ。

「じゃ、これ着替えて買ってくるから、少し待っててね」

と、言いながらレジの方へといってしまった。

また一人か……いや、先に出ててもいいのか。よし、出よう。こんなところはもうおさらばだ。

と、僕はこの店から出て、待っていた。

「お兄ちゃん。お待たせ」

と、妹がその店から走って出てきた。

「おう」

そして、僕らは買い物という名のデートみたいなものが始まった。

「次はここっ!!」

と、言って入って行ったのは……ふう、よかった。普通の服屋さんだ。

僕ははしゃいで入って行った妹を追いかけるようにその店にはいった。

至って普通の服屋さんだ。

別に過激なものも、地味すぎるようなものも、そんなものは全くない、普通の服屋だ。

ある意味すごいな。と思いながら、梨花の後を追った。

へっ……へっ……

なんであいつ走り回るの!?

………ここの右に行ったな。

「おい、梨花ーー」

やっと追いついた。

僕は息を切らしながら、梨花をみると、目を輝かせながら、服を見ている。これはいたって、普通のことだ。が、僕は違和感を覚えた。なんで夏なのに、こんな厚い服見てんだ?見てても暑いぜ。

絶対、これって、今着れないよな?

「なあ、梨花」

「なに?お兄ちゃん」

「なんでそんな秋とか冬くらいに着る服見てんの?」

「え?知らないの?だって、お兄ちゃん。秋とか冬になっちゃうと、値段も上がるし、種類もあんまりなくて、服なんて選べなくなっちゃうもん」

「へえ………」

だからあんなにオシャレなのか。と、深く感心し、同時に自分に絶望した。

なんで、こんなことも知らないんだ。

クッソ………

「じゃ、お兄ちゃん試着室行ってくるねっ!」

と、またサッとと試着室にいってしまった。

………これだったら、僕なんていらないんじゃないか。

と、思いつつ試着室に向かった。

暫くして、試着室から、妹がでてきた。

「ど?ど?かわいい?」

言葉に尽きる。そう、可愛すぎる。

僕にはこれ以外。なにもわからない。

「これって、でも夏に着ると暑いんだよねー」

と、言いながら厚着とはいえうなじにかけて汗が滑っていくその様は、この年頃にはたまらないだろう。

「って、なにしてるっ!!」

「暑いんだもんっ」

「場所を考えろっ!!」

「一秒でも早く……脱ぎたいっ!!」

「名言風に言うなっ!早く試着室に戻って着替えてこいっ!!」

「はーい」

と、ふてくされた声で試着室に戻って行った。

はあ、疲れる。

「なに?お兄ちゃん私の着替………なに……ちょっと…やめ…ひゃんっ!!」

…………絶対狙ってんだろ。出てきたら覚えておけよ。

それから暫くして

「お兄ちゃんっ!!」

と、叫びながら、出てきた。

「な、なんだ」

くっそ、押された。初っ端から怒鳴りつけてやろうと思ってたのに……

「なんで私の着替えを見ようとしてくれないの!?」

「………アホなのか」

男としては、見たいところだが、兄としてダメなんだよっ!!

だめだ。僕もアホだ。

「お兄ちゃんの…………馬鹿」

いや、なんなの?そのツンデレキャラのデレでよくあるやつはぁぁ!!

今回は、かまし過ぎだろ。

そして、どんどんこんな調子で妹の荷物は増えていき、当然僕が持つ羽目に……………

「あっははー。凄いね。お兄ちゃん。タワーみたいになってるよ」

でしょうね。なにを血迷ったか、全ての商品100円セールが始まってしまい………安いものとなると目がない妹には、これはたまらないわけでして……

荷物はどんどん増えていき、妹くらいの高さになっていた。前なんて見えない。

そして、僕らは帰る途中である。

「あ、お兄ちゃん。右」

「おう」

と、まあ、こんな感じで、僕の前にある、障害物を教えてくれるので崩したりしないで行けるが……家までは相当大変だな。

「お兄ちゃん大丈夫?」

「うん。まあ……な」

う、うわっ!!

ドタドタ……バタンッ!!

落ちちまった。

「ごめん。梨花」

「ううん。ごめんね。私が全部押し付けたからだもん。だから、お兄ちゃんは悪くないよ」

「そ、そうか……」

僕らは落ちてしまった荷物を7対3くらいに分け、当然僕が7。梨花が3。で、持つと、また、歩き始めた。

ま、前が見えるっ!!……なんか嬉しいな

「これで、帰れそうだねっ!」

と、笑いながら言う梨花。

お前がこんなに買わなければ、帰れたわっ!と、嫌味っぽく突っ込みたいところだが、今はあの笑顔に免じて許してやろう。

****

「ついたぁ………遠かったなぁ~」

と、梨花はへにゃへにゃになりながら、間の抜けた声で、そう言った。

「うーん?士郎と梨花ぁ?帰ったのぉ?」

と、寝ぼけている母が顔をひょこっとだした。

「ただいま。え?母さんいつから大学戻るの?」

なんでまだいるんだよっ!!

いつもなら帰ってきて顔だしたら大抵もう、その翌日には居ないのに、はあ、だるい。なんかこっちきたし……

「ふぇぇ?明日には戻るよ」

何が「ふぇぇ?」だよっ!!誰得なんだよっ!!

確かに大人の女性って感じで美しいとは思う。流石、俺の妹の母親って感じだが、「ふぇぇ?」は年的に、雰囲気的に違うだろ。どちらかといえば「いいことしてあ・げ・る」だろっ!!

「どーしたの?士郎。そんなに眉間にしわを寄せて。おじいちゃんになっちゃうよ」

あはは………このくされ親(あま)……全くなんなんだ。

「ふぅ。なんでもない」

と、普通の顔をどうにか深呼吸をして保ちながら、そう言った。

「てか、お兄ちゃん……重いからどいてぇ!!」

「あ、ごめんっ!!」

僕は右に逸れると梨花は玄関前にドスッと荷物を置いた。

そう言えば、何回も持ち直したりしてたっけ。

はあ、またミスったのか。

デートって女の子って……難しい。

****

さーて、どうするか……この量だ。どうやって片付けようか。

「まあ、適当にそれっぽくまとめちまうか……これが梨花の部屋のとこで……キッチンで……これがリビングか……っと」

こんな感じでグループ分けしてから、その場所まで配って行った。

僕は黙々と片付けをして…

「この皿でラスト」

………ふう。疲れた。

僕は最後に皿をキッチンに持って行った。

「お兄ちゃんお疲れっ!全部任せてごめんねっ!ご飯出来たよっ!」

「お、おう」

なんであいつはあんなに元気なんだろ……

「どうしたの?」

「いいや、なんでもない」

「じゃ、行こっ!」

「ああ」

今日のご飯はなんだろう。いつにも増して気合が入ってた気がするな。

「じゃじゃーん。今日は張り切っちゃったっ!」

す、すげえ……

テーブルの上に並んでいたのは、揚げ物から煮物、サラダなどなど……とにかく多種多様なお菜がテーブルいっぱいにあった。

「どど?すごいでしょ~」

「う、うん」

「あ、お母さんっ!なんで先に食べるの!?」

「えー。いいじゃないの。美味しそうだったんだもの」

確かに輝いて見えるな。

「えーい。もうっ!お兄ちゃん早く食べてっ!」

「え、ええ……」

なんだ?こいつは……意味わかんねえよ。母さんが先に食べちまっただけでこんなに不機嫌にならなくてもいいんじゃないか?

僕を強引に席に着かせ、箸を取ると、無雑作にキラキラと輝いているお菜を箸で掴み取り、僕の口の中にむりくり突っ込んだ。

痛いっ!!どこまで押し込むつもりだ!?

マジで死ぬ。詰まるってっ!!

ギブギブっ!!

と、僕は机をバシバシと叩き、暴れ回った。

「ゴクリ………ふう………」

薬のようにご飯を飲み込んだ。

「ど?お兄ちゃん?」

は?バカなのか?味なんて当然わかるわけがない。だが、こんなに無邪気に笑う梨花を騙せるはずがないっ!!

クッソ……どうすりゃいいんだ?

しゃーない。適当に誤魔化すしねえな。

「美味いぞ。とにかく……すごい美味いぞっ!」

「そ、そ?なら良かった……」

よ、よかった……どうにかなったな。

僕はそのままご飯を食べ始めた。

やっぱり美味いな。そして、お腹が減っているので、二重に美味い気がする。

そんな時、僕の携帯が鳴った。

で、電話か?

僕はとりあえず席を外した。

おお。珍しいな。

最近は携帯が鳴る。リア充に近づきつつあるな。と、思っているが、電話は久々だ。

なんか、嬉しいな。

と、思いつつポケットに入っていた携帯を手に取ると、そのまま出た。

「もしもし?」

「あ、二宮?私、渚だけど」

「井上先輩か」

「なにその言い方。私がわざわざ電話してあげたのよ?少しは喜びなさいよ」

いや、結構喜んでるんだけどな。

「な、何よ。らしくないわね」

やべえ…声に出てた。

「と、ともかく、どうしたんですか?井上先輩」

「あ、そうそう。部活の件なんだけど、もう家族には許可とったよね?」

と、当然やったでしょ?みたいな感じで言われた。

やべ……やってねえ……

「えーと、あっ、あははは」

「なに?まだやってないんだね?早くやりなさいよ?」

「は……はあ」

「えっと、部活なんだけど、夏休み明けから開始なので、あと1週間ね。それまでに家族に部活やる。ってことを言って、荷造りもしておくように。あと、今データを送るから、その住所まで来るように……わかった?」

「データ来ました。それまでにやっときます」

「じゃ、お願いしますね!」

と、井上先輩は言うと電話は切れた。

言わないとな……はあ………

誰でもいいんだよな。家族一人の指紋をここにとればいいから……どっちがいいんだ?

家族の誰が一番簡単に許可取れるかな?

梨花は……うん。確実に無理だ。僕には恐れ多いな。

母さんしかいないか………

でも、母さんは母さんで厄介だしな……

仕方ない。やるしかないんだ。
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