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41話
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41話
士郎の心の内部。
「ここは……どこ?」
モニターが一杯あって、それを誰かが見ている。なんだかセキュリティルームみたいな所だ。
まあ、あっちはいいか。とりあえずここから出ないと……見つかったら危ない的なことをあのおじさんも言ってたし、見つかるわけにはいかない。
警戒しながら結構進んだ気がするが、敵っぽいのは出てこない。
なんだろう?少し変だな。
私がウイルスならばもう死んでいたっておかしくないはずなのに、その敵ですら出てこない。
そして、特に何もなく大きな扉の前に出た。
その扉を開けるとそこはぐちゃぐちゃだった。
これが士郎の………心?
「………た……すけ……て……」
と、かすかに声が聞こえてきた。優しいこの声は士郎の声だ。
だけど、私に探すことなんてできるんだろうか?みんなにもやり遂げるって言って来ちゃったし、こんなので諦めてたら元々恋なんてしていないようなもんだよね。
「どこなの!?士郎っ!!」
私はこの荒れた心の中でひたすら無我夢中に探し回る。
「なかなかしぶといですねー。貴女のせいで士郎の心はこんなに荒れ果ててグチャグチャになってしまっているというのに」
と、どこからともなく女の人の声が聞こえて来た。
「…………え?」
「まだ気付かないんですか?」
「あんたのせいでこっちはグチャグチャだ」
「そうだよ。白崎さん。昔の女がでしゃばらないで。もうお兄ちゃんと私はこういう仲なのよっ!」
そして、私の前には妹さんと士郎が居た。そして、私の前で見せつけるように口づけを交わした。
………そっか。士郎はもう私の隣にいない。もう、妹さんのなんだ。私が入る場所なんてはなからなくて……
「ち、違うよっ!!しかりんっ!!」
……え?この声は士郎?
幻想だよね。
もう、いいよ。
***
僕は深い海の底のような場所にいた。
どうも。士郎の本心っす。
そこにはなにもなくただただ闇。
そんな中で白崎さんが一生懸命なにかを頑張っている声だけが聞こえる。
また僕は助けられてしまうのか。
………あんな暴言を吐いた後だし、なんて顔して会えばいいかわからないし……このまま僕は居なくなってしまってもいいんじゃないかな?
僕はもう、疲れた。
そんな時。僕のポケットに入っていたサバイバルナイフが光り始めた。
「ん?」
「お前はそれでいいんか?」
「あ……うん。もういいんだ。僕なんて存在しないほうが……大切にしていた人を傷つけちゃったから……もう、いい」
サバイバルナイフが喋ったことなど気にもとめず会話を続ける。
「そうかい。だけど彼女は諦めてないぞ?君を必要としている。このままこんなところにいてもいいんかい?」
「白崎さんには僕みたいなダメ男よりももっといい人がいるはずだ。なら、僕は自分よりも白崎さんの幸せを考える」
「君はそう思ってるかもしれないけど、白崎さんはどうかな?この顔を見て同じことが言える?」
一点の曇りもない瞳をして僕のことを探しているようだ。
「どうだい?子供みたいだろう?一方しか見てない。君しか見えてないんだ」
「し、白崎さんっ!!」
バッ!!
そして、僕が大声を出して白崎さんの名前を呼ぼうとした途端首を絞められた。
「………た…すけ…て……」
「静かにしてください。士郎さん。でないと本気で殺しちゃいますよ?」
ギブギブ……
「分かればいいんです」
「では、黙っててださいね?一言でも喋ったら殺しますからね?あ、でも、声なんて出せませんよね?そして体も動かないでしょ?」
あー。
と、喋ってみようとしたが、声が出ない。
なんで?声が出ない……し、こいつの言っている通り体も動かない。金縛りにあっているようだ。
「ふふ。士郎さんいい顔してますね。うずうずしちゃいますよ……」
こ、こいつ……なんでこいつは僕の恋愛を邪魔するんだ?助けてくれたじゃないか…なのに…なんで?
「じゃ、士郎さんはここで見ててくださいね」
そこからはもう地獄だった。
白崎さんのあの一点の曇りもないあの目はどんどんと曇っていき、もう死んだ魚のような目になっていた。
クソ……なんで言えない。あの時はしっかり告白できたじゃないか。喉が張り裂けてもいいっ!!今ここで声を上げないと僕は絶対に後悔するっ!!頼む。声を返してくれっ!!
「俺を使いな。君が思う通りに」
「あぁ。頼むっ!!」
そして、僕は自分の喉をスパンと一太刀で切った。
だが、血は一滴も出ず、首も繋がっている。
「白崎さんっ!!違うよっ!!僕は白崎さんが好きだ!!!」
幻想なんだよね?
と、白崎さんの心の声が聞こえる。
「そんなわけないっ!!」
だって、心がこんなにグチャグチャになっちゃったんでしょ?
「そんなの誰だってそうだよっ!!白崎さんのせいで僕の心はグチャグチャだ。どうしようもないくらいになっ!!それがどうしたんだ?僕だって荒らしてやるしかりんの心を荒野になるまでどこまでも根深く住み込んでやるっ!だから来いっ!!」
「士郎………わかった。私ももっとグチャグチャにしてやるからねっ!!」
と、先程の死んだ魚のような目の面影はなく、いつも通りの満面の笑みでそう言った 。
「あららー。心をへし折ったと思うんですけどねー。どうしてでしょうか?なんか治っちゃいましたねー」
と、僕の目の前にはインスタントガールフレンドがいた。
「お前にはわからないかもな」
「あっははー。面白いこと言いますねー。女の人とろくに話せなかった士郎さんが私に説教とか………実にアホらしいですね」
「言ってろ。だけどな。お前みたいなやつにはわからねえ。リア充の気持ちなんてな。独り身の時は僕もわからなかったが、やっとわかったよ」
「なんの話ですか?知らないですよ。そもそもリア充なんてこの世にいらないんですよ?あなたもそう思っていたでしょう?なにが悪いのですか?世界中のカップルを潰してなにが悪いのです!」
「それは違う。って言っても非リアの君にはわからないよな」
「……もういいんです。貴方はいらない。本当の心なんてものはもういらない」
「僕を殺したところで無駄だ。僕の本心はもうここにあるからな。もう、迷わない。僕には白崎さんしかない」
「じゃ、遠慮なく消させてもらいますね」
と、果物ナイフを内ポケットから取り出し僕の方へゆっくりとやってくる。
グサッ
僕の腹部にそのナイフを突き立てた。
「はっ!!」
痛みなどはなく次に目が覚めたのは布団の上だった。
ここは?
まさかの夢オチか?
いや、それはないみたいだな。
白崎さんが僕の横で眠っていた。
あまりに無防備なのでほっぺを指でつついてみる。
「士郎?」
「あ、起きちゃった?」
「すぅー……」
「なんだ。寝言か」
かわいいな。
僕はやっぱりここにいる。
戻れたんだ。元の僕に。
「しかりん。ただいま」
と、一言かけると眠っている白崎さんがおかえりと言っているような気がした。
「ただいまー!」
と、はつらつとした声がこのボロい家に響く。その声につられるように僕はなんとなく玄関へ向かい出迎える。
「……ただいま」
「ってことは戻ったんだね」
「あ、あぁ。はい」
「しかりんは?」
「まだ寝てますね」
「そっか。じゃ、今日はご馳走にするからねっ!」
と、いつもは見せない無邪気な笑顔でそう言うとキッチンへと駆けて行った。
今更だがすごく寒い。手が悴んでしまってどうしようもない。
さっさとリビングに戻るか。
そう言えばそろそろ修学旅行か……
「あ、おはよう。士郎」
と、リビングの戸を開け入るとさっきまで寝ていた白崎さんが起きていた。
「し、しかりん……」
やばい。あんなに恥ずかしいこと言って僕は……白崎さんにどんな顔をしていいかわかんねえし……って、しかりんやめてよ。じーっと見るのやめてよ。みつめないで。目をそらすことしかできないから……
「ん?どーしたの?」
「あ、いやなんでもない」
いろんなこと言いたいんだけど、今ってタイミングで言葉って出てこない。伝えたいのになにもでてこない。でも、なんか言わないと……
「ありがとう」
僕はそう言った。
自分の言語力の無さにもう……泣きそう……
「えへへ。しーろう」
と、僕の横にきて猫のように甘えていた。
いや、選択肢は間違えてなかったようだ。これでいいんだ。
にしても、かわいいなぁ。
なんでこんなに可愛い人を忘れてたんだろう?
ううん。
白崎さんのこんな笑顔見れたなら、そんなことはどうでもいいか。
大切なのはこれからだよな?
この時の僕はまだ知らなかった。あんなことが起きるだなんて……
士郎の心の内部。
「ここは……どこ?」
モニターが一杯あって、それを誰かが見ている。なんだかセキュリティルームみたいな所だ。
まあ、あっちはいいか。とりあえずここから出ないと……見つかったら危ない的なことをあのおじさんも言ってたし、見つかるわけにはいかない。
警戒しながら結構進んだ気がするが、敵っぽいのは出てこない。
なんだろう?少し変だな。
私がウイルスならばもう死んでいたっておかしくないはずなのに、その敵ですら出てこない。
そして、特に何もなく大きな扉の前に出た。
その扉を開けるとそこはぐちゃぐちゃだった。
これが士郎の………心?
「………た……すけ……て……」
と、かすかに声が聞こえてきた。優しいこの声は士郎の声だ。
だけど、私に探すことなんてできるんだろうか?みんなにもやり遂げるって言って来ちゃったし、こんなので諦めてたら元々恋なんてしていないようなもんだよね。
「どこなの!?士郎っ!!」
私はこの荒れた心の中でひたすら無我夢中に探し回る。
「なかなかしぶといですねー。貴女のせいで士郎の心はこんなに荒れ果ててグチャグチャになってしまっているというのに」
と、どこからともなく女の人の声が聞こえて来た。
「…………え?」
「まだ気付かないんですか?」
「あんたのせいでこっちはグチャグチャだ」
「そうだよ。白崎さん。昔の女がでしゃばらないで。もうお兄ちゃんと私はこういう仲なのよっ!」
そして、私の前には妹さんと士郎が居た。そして、私の前で見せつけるように口づけを交わした。
………そっか。士郎はもう私の隣にいない。もう、妹さんのなんだ。私が入る場所なんてはなからなくて……
「ち、違うよっ!!しかりんっ!!」
……え?この声は士郎?
幻想だよね。
もう、いいよ。
***
僕は深い海の底のような場所にいた。
どうも。士郎の本心っす。
そこにはなにもなくただただ闇。
そんな中で白崎さんが一生懸命なにかを頑張っている声だけが聞こえる。
また僕は助けられてしまうのか。
………あんな暴言を吐いた後だし、なんて顔して会えばいいかわからないし……このまま僕は居なくなってしまってもいいんじゃないかな?
僕はもう、疲れた。
そんな時。僕のポケットに入っていたサバイバルナイフが光り始めた。
「ん?」
「お前はそれでいいんか?」
「あ……うん。もういいんだ。僕なんて存在しないほうが……大切にしていた人を傷つけちゃったから……もう、いい」
サバイバルナイフが喋ったことなど気にもとめず会話を続ける。
「そうかい。だけど彼女は諦めてないぞ?君を必要としている。このままこんなところにいてもいいんかい?」
「白崎さんには僕みたいなダメ男よりももっといい人がいるはずだ。なら、僕は自分よりも白崎さんの幸せを考える」
「君はそう思ってるかもしれないけど、白崎さんはどうかな?この顔を見て同じことが言える?」
一点の曇りもない瞳をして僕のことを探しているようだ。
「どうだい?子供みたいだろう?一方しか見てない。君しか見えてないんだ」
「し、白崎さんっ!!」
バッ!!
そして、僕が大声を出して白崎さんの名前を呼ぼうとした途端首を絞められた。
「………た…すけ…て……」
「静かにしてください。士郎さん。でないと本気で殺しちゃいますよ?」
ギブギブ……
「分かればいいんです」
「では、黙っててださいね?一言でも喋ったら殺しますからね?あ、でも、声なんて出せませんよね?そして体も動かないでしょ?」
あー。
と、喋ってみようとしたが、声が出ない。
なんで?声が出ない……し、こいつの言っている通り体も動かない。金縛りにあっているようだ。
「ふふ。士郎さんいい顔してますね。うずうずしちゃいますよ……」
こ、こいつ……なんでこいつは僕の恋愛を邪魔するんだ?助けてくれたじゃないか…なのに…なんで?
「じゃ、士郎さんはここで見ててくださいね」
そこからはもう地獄だった。
白崎さんのあの一点の曇りもないあの目はどんどんと曇っていき、もう死んだ魚のような目になっていた。
クソ……なんで言えない。あの時はしっかり告白できたじゃないか。喉が張り裂けてもいいっ!!今ここで声を上げないと僕は絶対に後悔するっ!!頼む。声を返してくれっ!!
「俺を使いな。君が思う通りに」
「あぁ。頼むっ!!」
そして、僕は自分の喉をスパンと一太刀で切った。
だが、血は一滴も出ず、首も繋がっている。
「白崎さんっ!!違うよっ!!僕は白崎さんが好きだ!!!」
幻想なんだよね?
と、白崎さんの心の声が聞こえる。
「そんなわけないっ!!」
だって、心がこんなにグチャグチャになっちゃったんでしょ?
「そんなの誰だってそうだよっ!!白崎さんのせいで僕の心はグチャグチャだ。どうしようもないくらいになっ!!それがどうしたんだ?僕だって荒らしてやるしかりんの心を荒野になるまでどこまでも根深く住み込んでやるっ!だから来いっ!!」
「士郎………わかった。私ももっとグチャグチャにしてやるからねっ!!」
と、先程の死んだ魚のような目の面影はなく、いつも通りの満面の笑みでそう言った 。
「あららー。心をへし折ったと思うんですけどねー。どうしてでしょうか?なんか治っちゃいましたねー」
と、僕の目の前にはインスタントガールフレンドがいた。
「お前にはわからないかもな」
「あっははー。面白いこと言いますねー。女の人とろくに話せなかった士郎さんが私に説教とか………実にアホらしいですね」
「言ってろ。だけどな。お前みたいなやつにはわからねえ。リア充の気持ちなんてな。独り身の時は僕もわからなかったが、やっとわかったよ」
「なんの話ですか?知らないですよ。そもそもリア充なんてこの世にいらないんですよ?あなたもそう思っていたでしょう?なにが悪いのですか?世界中のカップルを潰してなにが悪いのです!」
「それは違う。って言っても非リアの君にはわからないよな」
「……もういいんです。貴方はいらない。本当の心なんてものはもういらない」
「僕を殺したところで無駄だ。僕の本心はもうここにあるからな。もう、迷わない。僕には白崎さんしかない」
「じゃ、遠慮なく消させてもらいますね」
と、果物ナイフを内ポケットから取り出し僕の方へゆっくりとやってくる。
グサッ
僕の腹部にそのナイフを突き立てた。
「はっ!!」
痛みなどはなく次に目が覚めたのは布団の上だった。
ここは?
まさかの夢オチか?
いや、それはないみたいだな。
白崎さんが僕の横で眠っていた。
あまりに無防備なのでほっぺを指でつついてみる。
「士郎?」
「あ、起きちゃった?」
「すぅー……」
「なんだ。寝言か」
かわいいな。
僕はやっぱりここにいる。
戻れたんだ。元の僕に。
「しかりん。ただいま」
と、一言かけると眠っている白崎さんがおかえりと言っているような気がした。
「ただいまー!」
と、はつらつとした声がこのボロい家に響く。その声につられるように僕はなんとなく玄関へ向かい出迎える。
「……ただいま」
「ってことは戻ったんだね」
「あ、あぁ。はい」
「しかりんは?」
「まだ寝てますね」
「そっか。じゃ、今日はご馳走にするからねっ!」
と、いつもは見せない無邪気な笑顔でそう言うとキッチンへと駆けて行った。
今更だがすごく寒い。手が悴んでしまってどうしようもない。
さっさとリビングに戻るか。
そう言えばそろそろ修学旅行か……
「あ、おはよう。士郎」
と、リビングの戸を開け入るとさっきまで寝ていた白崎さんが起きていた。
「し、しかりん……」
やばい。あんなに恥ずかしいこと言って僕は……白崎さんにどんな顔をしていいかわかんねえし……って、しかりんやめてよ。じーっと見るのやめてよ。みつめないで。目をそらすことしかできないから……
「ん?どーしたの?」
「あ、いやなんでもない」
いろんなこと言いたいんだけど、今ってタイミングで言葉って出てこない。伝えたいのになにもでてこない。でも、なんか言わないと……
「ありがとう」
僕はそう言った。
自分の言語力の無さにもう……泣きそう……
「えへへ。しーろう」
と、僕の横にきて猫のように甘えていた。
いや、選択肢は間違えてなかったようだ。これでいいんだ。
にしても、かわいいなぁ。
なんでこんなに可愛い人を忘れてたんだろう?
ううん。
白崎さんのこんな笑顔見れたなら、そんなことはどうでもいいか。
大切なのはこれからだよな?
この時の僕はまだ知らなかった。あんなことが起きるだなんて……
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