32 / 44
31話
しおりを挟む
31話
本当に、なんでこんなことに…
僕は今現在、メイド服を着ている。
そう、男のプライドを捨てている。
「早くやりなさいっ!!」
バシンッ!!
どこから持ってきたかわからない鞭で、井上先輩はフローリングの床を引っ叩いて脅してくる。
本当になんで、僕が社畜のように馬車馬のように……
「はーやーく」
本当になんでなんだ……
「いらっしゃいませ……本日はこのめるめるめいどんにお越しくださり……ありがとうございます……」
というか、なにこのめるめるめいどんって……メイド服着るのだって嫌なのに、こんな恥ずかしい名前を店につけるだなんて……
「違うっ!なによっ!そのやる気のなさ。もっと笑顔で元気な声で、いらっしゃいませっ!よ」
「い、いらっしゃいませ……」
マジ泣きそう。
まあ、でも白崎さんがいないだけマシか。今白崎さんはクラスで文化祭の準備をしている。彼女にこんな恥ずかしいところなんて見られたくないから、まあ、まだ、頑張れるか。
「違う違うっ!いらっしゃいませーっ!よ」
にしても、先輩。もっと子供っぽくやればかわいいのになぁ。いや、決して僕はロリコンとかじゃないですけどねっ!!
「ほらっ!やって」
多分、これしっかりやらないと終わらない。
もう、こうなったらやるしかない。多分しっかりやらないと、白崎さんが帰って来ちまう。
腹を決めろ。二宮士郎。やったれっ!
「い、いらっしゃいませーっ!」
ガチャ!
「ただいまでーすっ!!」
「本日は、このめるめるめいどんにお越しくださり、ありがとうございますっ!」
「あ………」
そこには困惑したような顔をしている白崎さんがいた。
「え?その、えっと……ただいま?」
「う、うん。お、おかえり」
なんなの?これ…
「お?しかりんっ!しかりんも今からみっちりレッスンよっ!!」
このチビが……
「あ、メイド喫茶のですか。いいですよっ!」
状況を理解したらしい。
「士郎。あの……お疲れ様です」
本当。泣きそう。
「でも、士郎。凄いかわいいですよっ!!」
フォローのつもりだろうか?別に嬉しくないんだが?だけど……
「ありがとう」
彼女からどんなことでも、褒められると嬉しく感じる。それが例え、お世辞であったとしても嬉しいことに変わりはない。だから、それ以上は考えないようにしよう。
うん。考えない……
「じゃーん」
いつの間にか、井上先輩と白崎さんはメイド服に着替えていた。
うん。本当にかわいい。
これだよな。やはりメイドってのは
「じゃ、三人で練習するわよーっ!」
「おーっ!」
「お、おお……」
「いらっしゃいませーっ!はいっ!」
「いらっしゃいませーっ!」
「いらっしゃいませ……」
なんなの?これ……
で、やっぱり先輩はもったいないな。あんなにロリってるのにロリロリできないのかな?
いや?出来るはずだ。僕を部活に誘いに来た時のように。
「ほら士郎。しっかりやる」
「は、はぁ」
ちょっと、この先輩ギャフンと言わせたい。なら、やらせることは一つしかない。
「いらっしゃいませーっ!はいっ!」
このよくわからない流れに終止符を打ってやる。
「あの、先輩。提案があるんですがいいですか?」
「なによ?」
よし、流れは止めた。ここからだ。
「うん?なによ?」
「………先輩はもっと……子供っぽくやったら、かなりいいと思います」
先輩の普通に人を何人か殺めてそうな目。怖い…殺される?
選択を誤ったか?
「子供っぽく?どういう意味?」
すっごい目つきをしていたが、案外乗ってきた。
「うーんと……」
でも、ここで間違えると……ああ。考えるだけで死相が見えてきそうだ。
どうしようか。なんて言えば怒らせずにロリっぽくやってくれるだろうか?
うーん。どうしよう…
「いらっちゃいませ!ご主人様!!ふみゅふみゅ…ど、どうかしら……」
え?なに?ちょっと釘み……あ、中身だ。そうじゃなくてっ!!…決して先輩のことなんて好きじゃない。いや、好きだけど、友達としてのだ。
でも、これは…ロリロリしててかわいい。
なんといっても、ふみゅふみゅ!の破壊力が凄すぎる。
なんでふみゅふみゅなのかは、わからないが、そんなことどうでもいいと思えるくらいに可愛かった。
「な、なんで黙るのよっ!!」
「いや、想像以上に良くて……」
「うっ……うるさいうるさいうるさーいっ!!」
ボンッ!!
なにかに風穴が空くような音。
「……え?」
完全に腹に入っていた。
にしても、恐ろしい音だ。
そんな音と共に僕は呼吸器官になんらかのダメージを受けたのか呼吸が出来なくなり、そのまま倒れた。
く、苦しい…溺れたみたいだ。
死相が見える。さっきよりくっきりと……
「しろう!!ねえっ!士郎っ!!」
意識が生と死の狭間にいるような感覚の時に、白崎さんの声が響いてくる。
ダメだ。まだ死ねない。
死んでたまるか…
僕は白崎さんの声の聞こえる方向へ進んでいく。
どんどんと周りは暗くなっていく。そして、完全になにもなくなった。
「ねえ、士郎」
「え?誰?」
「僕かい?僕はうーん。じゃ、道化師とでも名乗っておこうかな?」
「へ、へぇー。じゃ道化師さん。僕になんのようですか?」
「そろそろ君には、子供を止めてもらおうか」
「子供をやめる?」
「まあ、目覚めればわかるし、それは目覚めてからのお楽しみってことでいいかな?君の“選択”を見せてもらうよ」
そして、僕はなぜか布団の中にいた。
寝落ち?
いや、状況的にそれはないだろう。
起きてすぐにわかる。周りは暗いしもう夜なんだろう。だから、寝落ちはない。そして、一番現実味のあるものがあった。それは、僕の腹に風穴が空いているような感覚が、しっかりと残っているからだ。夢なら痛くないだろうしな。
だけど、穴は開いてない。
しっかりと腹はある。が、痛い。それは変わらない。
「お?士郎?起きたの?」
と、冷蔵庫を開けて一生懸命背伸びをして、水を取りだして飲んでいる金髪の少女が話しかけてきた。
「あ、先輩。なんで僕はこんなことに?」
「知らないわっ!軟弱なんじゃない?」
「あ、先輩思い出しましたよ」
「え?なにを?」
「なんで倒れたか」
「ほう。聞かせてもらおうじゃない」
と、かなりの上から目線でそう言うと、水を冷蔵庫にしまって、仁王だちをしている。
ちょっと、ホラ話しようかな?先輩なんかこれ系の話嫌いそうだし。
という、面白そうな案を思いついたので、簡単な作り話を話しながら作っていく。
「はい!あれは……昨日の晩の事でした。ひゅーひゅーと小窓から風が抜ける音がする程、外は強風でした」
「え?なんの話?昨日はほとんど無風だったわよね?」
「その音がうるさくて、どうも眠れなかった僕は水でも飲んでから寝ようと目をさまし、水を取りに行った時。みょーうに、寒かったんです。今は真夏だというのに、あれ?おかしいな。と思いながら、進んでいくと、その時に見てしまったんです……」
「え?ん?え?」
「そこには小さい金髪のツインテールがっ!!」
「ギャーー!!!」
多分、僕のオチは聞こえてないだろう。
井上先輩の顔は真っ青になり、頭を抱えてしゃがみ込み、ひどく怯えている。
いつもの恨みを果たし、気持ちよく眠りにつけそうだったので、そのまま僕は井上先輩を放置して、布団に潜る。
「士郎っ!起きてっ!」
朝になったのか白崎さんが騒いでいる。
「うん?あー?ふぅ」
「ええー!二度寝しないでよ士郎っ!」
「ふーん。うん。おはよ。しかりん」
と、ほぼ目蓋を閉じながらそんなことを一言言う。
「あ、士郎。起きたの?もうそのまま起きなければよかったのに」
そして、この悪口て意識が一気に覚醒する。
「え?なに?すらっと悪口言われたんだけど……」
「あ、そう言えば、士郎。メイド長やってもらうから、そこんとこよろしく」
「え、ええ!!よろしくもなにもなんで僕なの!?というか、なんでメイド長!?」
「え?面倒く……一番適任だと思ったからよっ!」
「今、絶対にめんどくさいって言ったよね?ねーねー!!」
というか、これは昨日の仕返しなのか!?
「ほら、遅刻するわよ。早く学校いくわよっ!」
「なんで強引な……」
そして、僕らは学校に向かう。
それから二週間。完璧にマンネリ化していた。
とりあえず学校に行き、接客練習。帰ったら地獄のような接客練習と、接客練習ばかりやっていた。
そして今日、本番を迎える。
8時からオープンだ。
昨日の前夜祭は学校のメンツだったし、部活の方ではあまり仕事やらなかったから、全然緊張しなかったけど、今日は普通の人が来るし、メイド喫茶を今日の本番はこの四人でがんばるしかない。
開店前に軽く確認っと…料理よし、店の清潔さよーし。なら、いいかな?
よし、時間通り8時だ。
もう、ここまで来たんだ。引き返すわけにはいかない。
「いらっしゃいませー!めるめるめいどんにようこそっ!何名様にゃん?」
急に決まったことだから仕方ないが、なんか、メイドカチューシャが猫耳カチューシャになってるんだよな……
恥じる気持ちは捨てろ。もう振り返るな。
見たところ僕らと歳が同じくらいの、普通のカップルだ。
「二人です」
「2名様ですねっ!二名様ご来店にゃーんっ!」
「萌え萌えー!」
と、奥から白崎さんの声が聞こえてくる。
朝だからちょっと仕込みが足りなくて、そっちに行ってもらっている。
そして、今井上先輩はなんか劇をやってるそうだ。
なんの役回りかとかは知らないけど、先輩に見合ったものだろう。
ゴシックロリ少女とか、ロリータ少女とか…
「あ、入国の儀式をさせてもらいますねっ!こちらのランプに向かって、ハートマークを手で作って、『萌え萌えキュンっ!』と、一緒に言ってもらえますか?」
「は、はい」
できるだけ声を高くして、女の子っぽく振る舞う。
バレたらなんか、いろいろ終わる気がする。
なんか、この人たちみてると、何処となく僕らと似ているような気がする。
何というか、初々しい感じが凄い似てる。なのに、メイド喫茶にくるなよ…とか、思ってはいるが声には出さない。
「せーのっ!萌え萌えキュンっ!」
「「も、萌え萌えキュン…」」
二人はすごく恥ずかしそうに手でハートマークを作り、そう言ってくれた。
「じゃ、メニュー決まったら教えてにゃーんっ!」
と、いいながらその席から離れて裏に戻る。
「う、うわ……マジで緊張した。いろんな意味で」
多分、男だってばれてない。行けるぞこれは……
「あははー。士郎っ!かわいいねっ!」
「え、ええーー!」
いつもそんなこと言われないから、なんか違う感じが凄い違和感があるけど、やはり嬉しいというか、なんというか……
「こんにちはー!誰もいないの?」
と、元気な声。
この声どこかで聞いたことがというか、あのバカップルだ。
「おーい!士郎出てこいよ」
……はぁ。もう嫌だ。さすがにこいつらは騙せないだろうし、いびられるじゃねえか……
続く……
本当に、なんでこんなことに…
僕は今現在、メイド服を着ている。
そう、男のプライドを捨てている。
「早くやりなさいっ!!」
バシンッ!!
どこから持ってきたかわからない鞭で、井上先輩はフローリングの床を引っ叩いて脅してくる。
本当になんで、僕が社畜のように馬車馬のように……
「はーやーく」
本当になんでなんだ……
「いらっしゃいませ……本日はこのめるめるめいどんにお越しくださり……ありがとうございます……」
というか、なにこのめるめるめいどんって……メイド服着るのだって嫌なのに、こんな恥ずかしい名前を店につけるだなんて……
「違うっ!なによっ!そのやる気のなさ。もっと笑顔で元気な声で、いらっしゃいませっ!よ」
「い、いらっしゃいませ……」
マジ泣きそう。
まあ、でも白崎さんがいないだけマシか。今白崎さんはクラスで文化祭の準備をしている。彼女にこんな恥ずかしいところなんて見られたくないから、まあ、まだ、頑張れるか。
「違う違うっ!いらっしゃいませーっ!よ」
にしても、先輩。もっと子供っぽくやればかわいいのになぁ。いや、決して僕はロリコンとかじゃないですけどねっ!!
「ほらっ!やって」
多分、これしっかりやらないと終わらない。
もう、こうなったらやるしかない。多分しっかりやらないと、白崎さんが帰って来ちまう。
腹を決めろ。二宮士郎。やったれっ!
「い、いらっしゃいませーっ!」
ガチャ!
「ただいまでーすっ!!」
「本日は、このめるめるめいどんにお越しくださり、ありがとうございますっ!」
「あ………」
そこには困惑したような顔をしている白崎さんがいた。
「え?その、えっと……ただいま?」
「う、うん。お、おかえり」
なんなの?これ…
「お?しかりんっ!しかりんも今からみっちりレッスンよっ!!」
このチビが……
「あ、メイド喫茶のですか。いいですよっ!」
状況を理解したらしい。
「士郎。あの……お疲れ様です」
本当。泣きそう。
「でも、士郎。凄いかわいいですよっ!!」
フォローのつもりだろうか?別に嬉しくないんだが?だけど……
「ありがとう」
彼女からどんなことでも、褒められると嬉しく感じる。それが例え、お世辞であったとしても嬉しいことに変わりはない。だから、それ以上は考えないようにしよう。
うん。考えない……
「じゃーん」
いつの間にか、井上先輩と白崎さんはメイド服に着替えていた。
うん。本当にかわいい。
これだよな。やはりメイドってのは
「じゃ、三人で練習するわよーっ!」
「おーっ!」
「お、おお……」
「いらっしゃいませーっ!はいっ!」
「いらっしゃいませーっ!」
「いらっしゃいませ……」
なんなの?これ……
で、やっぱり先輩はもったいないな。あんなにロリってるのにロリロリできないのかな?
いや?出来るはずだ。僕を部活に誘いに来た時のように。
「ほら士郎。しっかりやる」
「は、はぁ」
ちょっと、この先輩ギャフンと言わせたい。なら、やらせることは一つしかない。
「いらっしゃいませーっ!はいっ!」
このよくわからない流れに終止符を打ってやる。
「あの、先輩。提案があるんですがいいですか?」
「なによ?」
よし、流れは止めた。ここからだ。
「うん?なによ?」
「………先輩はもっと……子供っぽくやったら、かなりいいと思います」
先輩の普通に人を何人か殺めてそうな目。怖い…殺される?
選択を誤ったか?
「子供っぽく?どういう意味?」
すっごい目つきをしていたが、案外乗ってきた。
「うーんと……」
でも、ここで間違えると……ああ。考えるだけで死相が見えてきそうだ。
どうしようか。なんて言えば怒らせずにロリっぽくやってくれるだろうか?
うーん。どうしよう…
「いらっちゃいませ!ご主人様!!ふみゅふみゅ…ど、どうかしら……」
え?なに?ちょっと釘み……あ、中身だ。そうじゃなくてっ!!…決して先輩のことなんて好きじゃない。いや、好きだけど、友達としてのだ。
でも、これは…ロリロリしててかわいい。
なんといっても、ふみゅふみゅ!の破壊力が凄すぎる。
なんでふみゅふみゅなのかは、わからないが、そんなことどうでもいいと思えるくらいに可愛かった。
「な、なんで黙るのよっ!!」
「いや、想像以上に良くて……」
「うっ……うるさいうるさいうるさーいっ!!」
ボンッ!!
なにかに風穴が空くような音。
「……え?」
完全に腹に入っていた。
にしても、恐ろしい音だ。
そんな音と共に僕は呼吸器官になんらかのダメージを受けたのか呼吸が出来なくなり、そのまま倒れた。
く、苦しい…溺れたみたいだ。
死相が見える。さっきよりくっきりと……
「しろう!!ねえっ!士郎っ!!」
意識が生と死の狭間にいるような感覚の時に、白崎さんの声が響いてくる。
ダメだ。まだ死ねない。
死んでたまるか…
僕は白崎さんの声の聞こえる方向へ進んでいく。
どんどんと周りは暗くなっていく。そして、完全になにもなくなった。
「ねえ、士郎」
「え?誰?」
「僕かい?僕はうーん。じゃ、道化師とでも名乗っておこうかな?」
「へ、へぇー。じゃ道化師さん。僕になんのようですか?」
「そろそろ君には、子供を止めてもらおうか」
「子供をやめる?」
「まあ、目覚めればわかるし、それは目覚めてからのお楽しみってことでいいかな?君の“選択”を見せてもらうよ」
そして、僕はなぜか布団の中にいた。
寝落ち?
いや、状況的にそれはないだろう。
起きてすぐにわかる。周りは暗いしもう夜なんだろう。だから、寝落ちはない。そして、一番現実味のあるものがあった。それは、僕の腹に風穴が空いているような感覚が、しっかりと残っているからだ。夢なら痛くないだろうしな。
だけど、穴は開いてない。
しっかりと腹はある。が、痛い。それは変わらない。
「お?士郎?起きたの?」
と、冷蔵庫を開けて一生懸命背伸びをして、水を取りだして飲んでいる金髪の少女が話しかけてきた。
「あ、先輩。なんで僕はこんなことに?」
「知らないわっ!軟弱なんじゃない?」
「あ、先輩思い出しましたよ」
「え?なにを?」
「なんで倒れたか」
「ほう。聞かせてもらおうじゃない」
と、かなりの上から目線でそう言うと、水を冷蔵庫にしまって、仁王だちをしている。
ちょっと、ホラ話しようかな?先輩なんかこれ系の話嫌いそうだし。
という、面白そうな案を思いついたので、簡単な作り話を話しながら作っていく。
「はい!あれは……昨日の晩の事でした。ひゅーひゅーと小窓から風が抜ける音がする程、外は強風でした」
「え?なんの話?昨日はほとんど無風だったわよね?」
「その音がうるさくて、どうも眠れなかった僕は水でも飲んでから寝ようと目をさまし、水を取りに行った時。みょーうに、寒かったんです。今は真夏だというのに、あれ?おかしいな。と思いながら、進んでいくと、その時に見てしまったんです……」
「え?ん?え?」
「そこには小さい金髪のツインテールがっ!!」
「ギャーー!!!」
多分、僕のオチは聞こえてないだろう。
井上先輩の顔は真っ青になり、頭を抱えてしゃがみ込み、ひどく怯えている。
いつもの恨みを果たし、気持ちよく眠りにつけそうだったので、そのまま僕は井上先輩を放置して、布団に潜る。
「士郎っ!起きてっ!」
朝になったのか白崎さんが騒いでいる。
「うん?あー?ふぅ」
「ええー!二度寝しないでよ士郎っ!」
「ふーん。うん。おはよ。しかりん」
と、ほぼ目蓋を閉じながらそんなことを一言言う。
「あ、士郎。起きたの?もうそのまま起きなければよかったのに」
そして、この悪口て意識が一気に覚醒する。
「え?なに?すらっと悪口言われたんだけど……」
「あ、そう言えば、士郎。メイド長やってもらうから、そこんとこよろしく」
「え、ええ!!よろしくもなにもなんで僕なの!?というか、なんでメイド長!?」
「え?面倒く……一番適任だと思ったからよっ!」
「今、絶対にめんどくさいって言ったよね?ねーねー!!」
というか、これは昨日の仕返しなのか!?
「ほら、遅刻するわよ。早く学校いくわよっ!」
「なんで強引な……」
そして、僕らは学校に向かう。
それから二週間。完璧にマンネリ化していた。
とりあえず学校に行き、接客練習。帰ったら地獄のような接客練習と、接客練習ばかりやっていた。
そして今日、本番を迎える。
8時からオープンだ。
昨日の前夜祭は学校のメンツだったし、部活の方ではあまり仕事やらなかったから、全然緊張しなかったけど、今日は普通の人が来るし、メイド喫茶を今日の本番はこの四人でがんばるしかない。
開店前に軽く確認っと…料理よし、店の清潔さよーし。なら、いいかな?
よし、時間通り8時だ。
もう、ここまで来たんだ。引き返すわけにはいかない。
「いらっしゃいませー!めるめるめいどんにようこそっ!何名様にゃん?」
急に決まったことだから仕方ないが、なんか、メイドカチューシャが猫耳カチューシャになってるんだよな……
恥じる気持ちは捨てろ。もう振り返るな。
見たところ僕らと歳が同じくらいの、普通のカップルだ。
「二人です」
「2名様ですねっ!二名様ご来店にゃーんっ!」
「萌え萌えー!」
と、奥から白崎さんの声が聞こえてくる。
朝だからちょっと仕込みが足りなくて、そっちに行ってもらっている。
そして、今井上先輩はなんか劇をやってるそうだ。
なんの役回りかとかは知らないけど、先輩に見合ったものだろう。
ゴシックロリ少女とか、ロリータ少女とか…
「あ、入国の儀式をさせてもらいますねっ!こちらのランプに向かって、ハートマークを手で作って、『萌え萌えキュンっ!』と、一緒に言ってもらえますか?」
「は、はい」
できるだけ声を高くして、女の子っぽく振る舞う。
バレたらなんか、いろいろ終わる気がする。
なんか、この人たちみてると、何処となく僕らと似ているような気がする。
何というか、初々しい感じが凄い似てる。なのに、メイド喫茶にくるなよ…とか、思ってはいるが声には出さない。
「せーのっ!萌え萌えキュンっ!」
「「も、萌え萌えキュン…」」
二人はすごく恥ずかしそうに手でハートマークを作り、そう言ってくれた。
「じゃ、メニュー決まったら教えてにゃーんっ!」
と、いいながらその席から離れて裏に戻る。
「う、うわ……マジで緊張した。いろんな意味で」
多分、男だってばれてない。行けるぞこれは……
「あははー。士郎っ!かわいいねっ!」
「え、ええーー!」
いつもそんなこと言われないから、なんか違う感じが凄い違和感があるけど、やはり嬉しいというか、なんというか……
「こんにちはー!誰もいないの?」
と、元気な声。
この声どこかで聞いたことがというか、あのバカップルだ。
「おーい!士郎出てこいよ」
……はぁ。もう嫌だ。さすがにこいつらは騙せないだろうし、いびられるじゃねえか……
続く……
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる