14 / 19
12 叩きのめして差し上げますけれど?
しおりを挟む
ショーマ様が眠っているうちに、あらゆる関係者に連絡を入れた。
センマ様にはクプテン国の宰相たちなど、政治に関わる人たちに連絡を入れてもらい、本当にショーマ様が国王の座から降りても支障はないかの確認をしてもらった。
元々、ショーマ様は政治には関わっておらず、国王がやらなければいけない仕事もセンマ様がやっていたそうなので、ショーマ様がいなくなっても困ることはないとわかった。
各国の国王陛下からの返信はさすがにそう早くには来ない。
でも、世論もショーマ様にはうんざりしているようだし、彼が降りると言うのであれば、センマ様やクプテン国の宰相たちの判断で、ショーマ様を国王の座から降ろしてあげて幸せに暮らしてもらおうという話でまとまった。
しばらくすると、ショーマ様が目を覚まし、私に対してとても怒っているから、すぐにショーマ様の元に来るようにという連絡があった。
ジェドと一緒にショーマ様のところへ行こうとエントランスホールまで来た時、扉の前に誰かが立っていることに気が付いた。
ショーマ様を好きだと言っていた女性、ルヨレ様とその騎士のヨカバオダだった。
ルヨレ様は私達が近付いていくと叫んでくる。
「ちょっとあなた! いい加減にしたらどうなの! ショーマ様を傷付けてどうしたいのよ!?」
「別に傷付けたいわけではありませんわ。今回に関しては、処刑だなんてしなくても良いことをされようとしていたので止めただけですわ」
「力技で止めるのがおかしいと言っているのよ!」
ルヨレ様はそんな風に言うけれど、以前、ヨカバオダに「痛い目に遭わせて」とか命令していたわよね。
「もしかして、ルヨレ様もあまり記憶力はよろしくないのかしら? もしくは自分のことは棚に上げるタイプなのでしょうか」
「は!?」
「もうお忘れでしたら結構ですわ」
にこりと微笑んで、ポーチの中から扇を取り出す。
以前はシルバートレイで対応させてもらったから、ヨルレ様達は私の扇のことを知らない。
だからか、扇を取り出した私を見ても、驚いたり怯えたりする様子は見せなかった。
「くそっ! ルヨレ様に対してなんて生意気な態度なんだ!」
ヨカバオダが剣を抜いたので、ジェドが私に話しかけてくる。
「こちらの相手は私がしますので、ルヨレ様のお相手をお願いできますでしょうか。もちろん、やり過ぎないようにお願い致します」
「もちろんよ。今回の件に関してやり過ぎたかどうかは、その人の捉え方によって違うと思うから、私なりにやり過ぎないようにするわね」
バシバシと扇を左手の手のひらに当てながら笑顔で言うと、ジェドは呆れた顔をした。
でもすぐに、表情を厳しいものにして、ヨカバオダに視線を移す。
私に負けるようなヨカバオダにジェドが負けるとは思えないので、安心して任せることにする。
そして、私とルヨレ様は巻き込まれないように、少しだけ離れた場所に移動した。
「一応、お聞きしますけれど、ルヨレ様は本当に私と戦うつもりですの?」
「あんたなんか私一人で十分よ!」
どこからそんな自信が湧いてくるのかわからないけれど、ルヨレ様はそう叫んで勢いよく両手で私に掴みかかってきたので、その頭を扇で叩く。
「いっ! 痛いっ!」
「申し訳ございませんが忙しいんですの。これ以上、邪魔をされるようでしたら容赦なく叩きのめして差し上げますけれど? ですが、出来れば女性相手に酷いことはしたくありません。引いてもらえませんか?」
「な、何よ! あんたなんて、ヨカバオダがあなたの騎士を倒したらすぐに痛い目に」
ルヨレ様が涙目で言ったところで「終わりました」とジェドの声が聞こえた。
広いエントランスホールに視線を向けると、床に倒れているヨカバオダと、こちらに目を向けているジェドがいた。
気絶しているのかヨカバオダは一切動かない。
「え? 嘘、そんな? もしかしてヨカバオダって弱いの!?」
「そうですね。弱くはありませんが強くもないと思います」
ジェドが桁違いに強いだけなのか、それともヨカバオダの実力が大したものではないのかはわからない。
ルヨレ様の質問に苦笑して答えたジェドの言葉を聞いて、ルヨレ様は私を見て焦った顔をして言う。
「え、えーと、その、暴力反対?」
「ええ、私もそう思いますわ」
にっこりと笑顔を見せてから、彼女の顎近くに扇の飛び出し式ナイフの先を突きつける。
「ですから、これ以上、私の邪魔をされないようにお願い致します」
ルヨレ様は何度も無言で首を縦に振ったあと、ぺたんとその場に崩れ落ちた。
センマ様にはクプテン国の宰相たちなど、政治に関わる人たちに連絡を入れてもらい、本当にショーマ様が国王の座から降りても支障はないかの確認をしてもらった。
元々、ショーマ様は政治には関わっておらず、国王がやらなければいけない仕事もセンマ様がやっていたそうなので、ショーマ様がいなくなっても困ることはないとわかった。
各国の国王陛下からの返信はさすがにそう早くには来ない。
でも、世論もショーマ様にはうんざりしているようだし、彼が降りると言うのであれば、センマ様やクプテン国の宰相たちの判断で、ショーマ様を国王の座から降ろしてあげて幸せに暮らしてもらおうという話でまとまった。
しばらくすると、ショーマ様が目を覚まし、私に対してとても怒っているから、すぐにショーマ様の元に来るようにという連絡があった。
ジェドと一緒にショーマ様のところへ行こうとエントランスホールまで来た時、扉の前に誰かが立っていることに気が付いた。
ショーマ様を好きだと言っていた女性、ルヨレ様とその騎士のヨカバオダだった。
ルヨレ様は私達が近付いていくと叫んでくる。
「ちょっとあなた! いい加減にしたらどうなの! ショーマ様を傷付けてどうしたいのよ!?」
「別に傷付けたいわけではありませんわ。今回に関しては、処刑だなんてしなくても良いことをされようとしていたので止めただけですわ」
「力技で止めるのがおかしいと言っているのよ!」
ルヨレ様はそんな風に言うけれど、以前、ヨカバオダに「痛い目に遭わせて」とか命令していたわよね。
「もしかして、ルヨレ様もあまり記憶力はよろしくないのかしら? もしくは自分のことは棚に上げるタイプなのでしょうか」
「は!?」
「もうお忘れでしたら結構ですわ」
にこりと微笑んで、ポーチの中から扇を取り出す。
以前はシルバートレイで対応させてもらったから、ヨルレ様達は私の扇のことを知らない。
だからか、扇を取り出した私を見ても、驚いたり怯えたりする様子は見せなかった。
「くそっ! ルヨレ様に対してなんて生意気な態度なんだ!」
ヨカバオダが剣を抜いたので、ジェドが私に話しかけてくる。
「こちらの相手は私がしますので、ルヨレ様のお相手をお願いできますでしょうか。もちろん、やり過ぎないようにお願い致します」
「もちろんよ。今回の件に関してやり過ぎたかどうかは、その人の捉え方によって違うと思うから、私なりにやり過ぎないようにするわね」
バシバシと扇を左手の手のひらに当てながら笑顔で言うと、ジェドは呆れた顔をした。
でもすぐに、表情を厳しいものにして、ヨカバオダに視線を移す。
私に負けるようなヨカバオダにジェドが負けるとは思えないので、安心して任せることにする。
そして、私とルヨレ様は巻き込まれないように、少しだけ離れた場所に移動した。
「一応、お聞きしますけれど、ルヨレ様は本当に私と戦うつもりですの?」
「あんたなんか私一人で十分よ!」
どこからそんな自信が湧いてくるのかわからないけれど、ルヨレ様はそう叫んで勢いよく両手で私に掴みかかってきたので、その頭を扇で叩く。
「いっ! 痛いっ!」
「申し訳ございませんが忙しいんですの。これ以上、邪魔をされるようでしたら容赦なく叩きのめして差し上げますけれど? ですが、出来れば女性相手に酷いことはしたくありません。引いてもらえませんか?」
「な、何よ! あんたなんて、ヨカバオダがあなたの騎士を倒したらすぐに痛い目に」
ルヨレ様が涙目で言ったところで「終わりました」とジェドの声が聞こえた。
広いエントランスホールに視線を向けると、床に倒れているヨカバオダと、こちらに目を向けているジェドがいた。
気絶しているのかヨカバオダは一切動かない。
「え? 嘘、そんな? もしかしてヨカバオダって弱いの!?」
「そうですね。弱くはありませんが強くもないと思います」
ジェドが桁違いに強いだけなのか、それともヨカバオダの実力が大したものではないのかはわからない。
ルヨレ様の質問に苦笑して答えたジェドの言葉を聞いて、ルヨレ様は私を見て焦った顔をして言う。
「え、えーと、その、暴力反対?」
「ええ、私もそう思いますわ」
にっこりと笑顔を見せてから、彼女の顎近くに扇の飛び出し式ナイフの先を突きつける。
「ですから、これ以上、私の邪魔をされないようにお願い致します」
ルヨレ様は何度も無言で首を縦に振ったあと、ぺたんとその場に崩れ落ちた。
38
お気に入りに追加
1,828
あなたにおすすめの小説
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】婚約者の好みにはなれなかったので身を引きます〜私の周囲がそれを許さないようです〜
葉桜鹿乃
恋愛
第二王子のアンドリュー・メルト殿下の婚約者であるリーン・ネルコム侯爵令嬢は、3年間の期間を己に課して努力した。
しかし、アンドリュー殿下の浮気性は直らない。これは、もうだめだ。結婚してもお互い幸せになれない。
婚約破棄を申し入れたところ、「やっとか」という言葉と共にアンドリュー殿下はニヤリと笑った。私からの婚約破棄の申し入れを待っていたらしい。そうすれば、申し入れた方が慰謝料を支払わなければならないからだ。
この先の人生をこの男に捧げるくらいなら安いものだと思ったが、果たしてそれは、周囲が許すはずもなく……?
調子に乗りすぎた婚約者は、どうやら私の周囲には嫌われていたようです。皆さまお手柔らかにお願いします……ね……?
※幾つか同じ感想を頂いていますが、リーンは『話を聞いてすら貰えないので』努力したのであって、リーンが無理に進言をして彼女に手をあげたら(リーンは自分に自信はなくとも実家に力があるのを知っているので)アンドリュー殿下が一発で廃嫡ルートとなります。リーンはそれは避けるべきだと向き合う為に3年間頑張っています。リーンなりの忠誠心ですので、その点ご理解の程よろしくお願いします。
※HOT1位ありがとうございます!(01/10 21:00)
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも別名義で掲載予定です。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった
あとさん♪
恋愛
学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。
王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——
だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。
誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。
この事件をきっかけに歴史は動いた。
無血革命が起こり、国名が変わった。
平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。
※R15は保険。
※設定はゆるんゆるん。
※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m
※本編はオマケ込みで全24話
※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話)
※『ジョン、という人』(全1話)
※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話)
※↑蛇足回2021,6,23加筆修正
※外伝『真か偽か』(全1話)
※小説家になろうにも投稿しております。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる