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番外編や後日譚

閑話  またもや奪う

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 エレガンさんの身柄を王城警察に預けると、改めて明日の朝に事情を聞きたいと言われました。

 精神的にも肉体的にも疲れ切ってしまった私たちは、一度、それぞれの自室に戻ることにしました。

 なぜ自室に戻ったかといいますと、私は一度外に出てしまうと、眠る時には、お風呂に入って体を綺麗にしないと気が済まない人間だからです。

 お嫁にくるまでは部屋に閉じ込められていましたから、その反動なのかもしれません。

 ですが、使用人たちは違う意味で取ってしまったようでした。

「事件が解決したようですし、お子様ができるのは近いのかしら!」
「気が早いわ! プレッシャーになってしまったら大変よ!」

 私の体を洗ってくれているメイドたちの心の声が口に出てしまっています。

 申し訳ないですが、そんなことをする元気はないのですよ。

「あの……、今日は疲れているから眠りたいのだけど、やはりそういうことをしないと駄目かしら?」
「も、申し訳ございません! そういう意味ではありません!」

 メイドたちは声を揃えて謝り、頭を下げてきます。
 彼女たちも悪気はないのでしょう。
 私が彼女たちの立場なら同じように考えているかもしれません。

 それに、今は夜の2時前ですから、こんな時間に私のお風呂に付き合ってくれている彼女たちには感謝しなければなりませんよね。

「あの、ありがとう。いつかは期待に応えられるように頑張りますので、もう少し待ってもらえますか?」
「もちろんでございます! お二人が幸せになってくださることが、わたくし共の願いですから!」

 メイドたちは笑顔で言ってくれたあと、私の体を優しくタオルで拭き始めてくれたのでした。

 髪を乾かし終えてから寝室に向いますと、部屋の明かりがついていて、ルーラス様はすでにベッドの上で寝ておられました。

 そろりそろりと近づいたのですが、警戒されておられるのか、すぐに目を覚まして体を起こされました。

「リルか。ごめん、寝てた」
「寝ていてください。お疲れなんですから」
「疲れてるのはリルもだろ」

 ふわぁとルーラス様はあくびをすると、よほど疲れておられるのか、またごろんとベッドに横になってしまわれました。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。気を張って疲れただけだから。あと、魔力も使ったしな」
「お疲れ様でございました」

 ルーラス様の横に寝転ぶと、ルーラス様は体をこちらに向けられました。

「リルもお疲れ」
「私は何もしておりません。今日はもう眠りましょうか」
「……そうだな。明日も早いし」
「そうですね」

 頷きますと、ルーラス様が私の頬に手を当てます。

「どうかされましたか?」
「いや、その、寝る前に……」

 何かしようとされているのかもしれませんが、よっぽど眠たいのでしょうか。
 ルーラス様の目はとろんとされていますし、目を開けたり閉じたりしています。

 こんなに眠いのに、何をしようとされているのでしょう?

 も、もしや、キスをしようとされているのでしょうか!?

 やっとリベンジの機会がきたようです!

「ルーラス様! 失礼いたします!」
「……ん?」

 不思議そうにしているルーラス様のほうに身を寄せて、ルーラス様の唇に自分の唇を重ねてから、すぐに離します。

「……リ……ル」
「や、やっと大人同士でできましたね! 満足です!」

 やりました!
 キスのリベンジができたのです!

 パチパチと手を叩いて喜んでいますと、ルーラス様は「だから……、何か……違う」と呟いたあと、そのまま眠ってしまわれたのでした。


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