一家の恥と言われた令嬢ですが、嫁ぎ先で本領を発揮させていただきます

風見ゆうみ

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番外編や後日譚

閑話  妻としての役目

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※閑話ですが流れは第25話の続きです。
ルーラスとリルのじれじれ?話です。
読み飛ばしてもらっても話はわかります!





 その日は色々なことを考えると、中々眠ることができませんでした。
 国王陛下はご無事だということですし、それだけでも良いことではあるのですが、わざわざ本が燃やされたということが気になります。
 陛下が中にいらっしゃらなくても、部屋の扉の前には騎士が見張っているはずです。
 それなのに、どうやって本の周りだけを燃やすことができたのでしょうか。
 陛下が本を読み終えておられるかはわかりません。
 とにかく、明日、ルーラス様のほうから陛下に確認してもらうことにして、裸のルーラス様を抱き枕にして、目を瞑りました。
 子供の体温は温かいからでしょうか。
 いつの間にか私は眠ってしまっていたのでした。


*****



 私の手が誰かに動かされた気がして目が開けると、薄暗い中に、大人のルーラス様のものらしき背中が見えました。

 昨日、抱っこして寝てしまったので、大人に戻られたから、自然に私の手も動いたようです。

「ルーラス様……?」

 起きているのかわかりませんので、小声で名前を呼んでみますが、寝息が聞こえてくるだけです。
 
 寝返りを打ち、サイドテーブルに置いてある時計を見ますと、まだ起きるには早すぎる時間です。

 二度寝するか迷っていますと、体を動かしたせいかルーラス様が目を覚ましてしまわれたようで、体をこちらに向けて声をかけてこられます。

「……おはよう、リル。どうかしたか?」
「おはようございます、ルーラス様。起こしてしまったようで申し訳ございません」
「大丈夫だ。リルはよく眠れたか?」
「はい。ルーラス様のおかげでぐっすりです!」
「そ、そうか……。俺は色々と辛かったんだが……」

 一気に明るくすると眩しいですので、部屋の明かりを魔法で調整して、ぼんやりとお顔が見えるくらいにしてから、ルーラス様のお顔を見てみますと、なぜだか困ったような顔をされています。

「申し訳ございません! 抱きしめていたから苦しかったですか?」
「そうじゃなくて」
「私の寝相が悪かったですか」
「それも違う」
「も、もしや寝言がうるさかったとかですか!?」

 両頬に手を当てて焦っていますと、ルーラス様は私の手首を優しく掴みます。

「そうじゃない。リルの胸が子供状態の俺の顔に……」
「そ、それは失礼いたしました! 貧乳で申し訳ございません!」
「そういう意味じゃない!」
 
 ルーラス様は上半身を起こして私を見つめます。

「俺は男でリルは女性だろ!?」
「はい!」
「俺たちは夫婦なんだよな!?」
「も、もしかして、キスのリベンジどころか、その先にいきますか!?」
「……リル」

 ルーラス様が私に覆いかぶさるようにして、顔を近づけてこられました。

 こ、ここは魔法の光を消して受け入れるべきですよね!

 ……と、ちょっと待ってください。

「あのルーラス様、私、官能小説を読んで疑問に思っていたのです」
「……は?」
「起きた時の口の中の細菌はすごいらしいです」
「……らしいな」
「ということは、朝起きてすぐに、えっちなことをしている官能小説のヒロインとヒーローは大変なことに……!」
「……」

 ルーラス様は眉根を寄せた後、私の横に倒れ込むと大きく息を吐きます。

「リルが言いたいのは、俺たちもそういうことだってことだよな?」
「はい。まずは歯磨きからはじめましょう!」
「うん……。リルは間違ってない。そうだな、そうだよな」

 私は歯を磨きに行く気でいたのですが、ルーラス様は悲しげな表情で「まだ早いし、もう少し寝よう。おやすみ、リル」と言って、私の頭を撫でてくれただけでした。

 うう。
 またもや、私は自分からチャンスを逃してしまったのでしょうか?

 でも、ルーラス様を病気にしたくはありません!
 私はルーラス様の健康を守ったのです!
 旦那様の健康を守るのは妻としての大事な役目です!

「おやすみなさいませ!」

 目を閉じると、ルーラス様がまた大きなため息を吐かれたのでした。


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