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3 義兄も浮気しているらしい
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ローズ侯爵領はセイクウッド伯爵領の隣にあり、馬車を1時間程走らせれば、ローズ侯爵家の領内に入ることができる。
そこから、指定された場所に行くには、数時間かかるため、ポーリーに招待されたということにして、5日間だけ出かける許可をもらった。
世間体が良くないと言って難色を示したターチ様だったが、相手がローズ侯爵家のため、説得した結果、渋々ながらも了承してくれた。
ポーリーに口裏を合わせてもらうために連絡を入れると、本当にローズ侯爵家に招待してもらえることになった。
それから、5日後、わたしはポーリーの家に辿り着いた。その後は信頼できる護衛だけを選んで残し、残りの護衛と御者たちは帰らせた。
その日の内にワンピースドレスから、ブラウスとロングスカートに着がえると、ポーリーと一緒に、名刺に書かれていた場所に向かうことになった。
道中の馬車の中で、ダークブラウンのウェーブのかかった長い横髪を背中に払いながら、ポーリーは笑顔で話しかけてきた。
「リリノアは兄のユーリを覚えている?」
「もちろんよ。最近はお会いできていないけれど、昔はとてもお世話になったもの」
ユーリ兄さまと呼んで懐いていたし、可愛がってもらってもいた。わたしに婚約者ができる前に、ユーリ様には婚約者ができたから、お相手の女性に配慮して、会っても挨拶や二言三言交わすくらいしかしていなかった。
「わたしの結婚式以来だわ。あとでご挨拶できるかしら」
「ええ。もちろんよ。兄には婚約者がいなくなったから、屋敷内では気にせずに話してもらっていいわ」
「……どういうこと?」
「やっぱり知らなかったのね」
猫目気味の目を細め、ポーリーは口をとがらせる。
「あなたの義兄、お兄様の婚約者と浮気していたのよ」
「ど、ど、どういうこと!?」
「そのままの意味よ。最近になってわかったの。あなたは本当に何も知らないの?」
「お国柄というのもあるけれど、ターチ様は必要以上にわたしが外に出ることを嫌がるのよ。だから、情報を中々仕入れられないの」
今回、ポーリーの所へ行くことを嫌がったのも義兄の浮気の話を知られたくなかったからかしら。
「あなたが社交場に顔を出していなかったのは、そのせいなのね」
ポーリーは納得するように頷いてから話を続ける。
「リリノアに話を聞いてから、あなたの名前は出さずに家族に浮気について相談してみたの。そうしたら、あなたの義兄の名前を出されたのよ」
「……じゃあ、ターチ様の話をクリスティーナ様の旦那様のロブ様の話だと思ったのね」
クリスティーナ様とロブ様は恋愛結婚だと聞いている。二人共、平民になったにもかかわらず仕事をしていないから、ターチ様がクリスティーナ様を援助していると聞いている。
「……まさか、ロブ様が働かないのは、女性に養ってもらっているから?」
「そのまさかよ。しかも、クリスティーナ様は夫が浮気していることを知っているらしいわ」
「知っていて何も言わないの?」
「ええ。だって自分は何もしなくてもお金が入るんだもの。そのほうが良いわよね」
「夫が浮気だなんて嫌な気分にしかならないと思っていたけど、クリスティーナ様はターチ様を溺愛しているから、ロブ様に興味がないのかもしれないわね」
ロブ様が猛アタックしたとも聞いているし、恋愛結婚というよりかは、クリスティーナ様はロブ様と結婚してあげたというのが正しいのかもしれない。
「平民が侯爵令息の婚約者を奪おうっていうんだから、馬鹿としか言いようがないわ! それに浮気する令嬢も令嬢よ!」
ポーリーはぷりぷりしながら続ける。
「……お兄様の元婚約者はバレないと思っていたみたいだけど、そんなわけないわよね! 二人が一緒にいる所を見た人がいて、お父様に連絡があったのよ」
「ユーリ様の婚約者になりたい人はたくさんいそうだから、その人たちにしてみれば、令嬢の浮気はチャンスでもあるものね」
ユーリ兄さまの婚約者はたしか、伯爵令嬢だったはず。馬鹿なことをしたわね。
話をしている内に、目的地に着いたのか馬車が停まって扉が開かれたので、ポーリーと共に馬車を降りる。
「目立ちたくないから少し離れた場所に停めてもらってるの。こっちよ」
ポーリーと彼女の護衛に連れられた先は、木造の2階建ての小さな一軒家だった。ここが情報屋がいる家だと言う。
「ポーリーは情報屋の人と親しいの?」
「親しいというか、お兄様の裏の仕事なの」
「う、裏の仕事?」
「あ、リリノアだから話したのよ。他の人には言わないでね」
「……わ、わかったわ」
混乱しているわたしを見て微笑みながら、ポーリーは持っていた鍵で扉を開ける。彼女に続いて足を踏み入れると、真正面に2階に続く階段が見えた。
「あなたの旦那様のこと、ある程度のことは調べてあるの。どんな事実でも受け止める覚悟があるのなら2階に上がってみて」
「……わかったわ」
もうとっくに覚悟は決めている。
わたしは迷うことなく階段をのぼった。
そこから、指定された場所に行くには、数時間かかるため、ポーリーに招待されたということにして、5日間だけ出かける許可をもらった。
世間体が良くないと言って難色を示したターチ様だったが、相手がローズ侯爵家のため、説得した結果、渋々ながらも了承してくれた。
ポーリーに口裏を合わせてもらうために連絡を入れると、本当にローズ侯爵家に招待してもらえることになった。
それから、5日後、わたしはポーリーの家に辿り着いた。その後は信頼できる護衛だけを選んで残し、残りの護衛と御者たちは帰らせた。
その日の内にワンピースドレスから、ブラウスとロングスカートに着がえると、ポーリーと一緒に、名刺に書かれていた場所に向かうことになった。
道中の馬車の中で、ダークブラウンのウェーブのかかった長い横髪を背中に払いながら、ポーリーは笑顔で話しかけてきた。
「リリノアは兄のユーリを覚えている?」
「もちろんよ。最近はお会いできていないけれど、昔はとてもお世話になったもの」
ユーリ兄さまと呼んで懐いていたし、可愛がってもらってもいた。わたしに婚約者ができる前に、ユーリ様には婚約者ができたから、お相手の女性に配慮して、会っても挨拶や二言三言交わすくらいしかしていなかった。
「わたしの結婚式以来だわ。あとでご挨拶できるかしら」
「ええ。もちろんよ。兄には婚約者がいなくなったから、屋敷内では気にせずに話してもらっていいわ」
「……どういうこと?」
「やっぱり知らなかったのね」
猫目気味の目を細め、ポーリーは口をとがらせる。
「あなたの義兄、お兄様の婚約者と浮気していたのよ」
「ど、ど、どういうこと!?」
「そのままの意味よ。最近になってわかったの。あなたは本当に何も知らないの?」
「お国柄というのもあるけれど、ターチ様は必要以上にわたしが外に出ることを嫌がるのよ。だから、情報を中々仕入れられないの」
今回、ポーリーの所へ行くことを嫌がったのも義兄の浮気の話を知られたくなかったからかしら。
「あなたが社交場に顔を出していなかったのは、そのせいなのね」
ポーリーは納得するように頷いてから話を続ける。
「リリノアに話を聞いてから、あなたの名前は出さずに家族に浮気について相談してみたの。そうしたら、あなたの義兄の名前を出されたのよ」
「……じゃあ、ターチ様の話をクリスティーナ様の旦那様のロブ様の話だと思ったのね」
クリスティーナ様とロブ様は恋愛結婚だと聞いている。二人共、平民になったにもかかわらず仕事をしていないから、ターチ様がクリスティーナ様を援助していると聞いている。
「……まさか、ロブ様が働かないのは、女性に養ってもらっているから?」
「そのまさかよ。しかも、クリスティーナ様は夫が浮気していることを知っているらしいわ」
「知っていて何も言わないの?」
「ええ。だって自分は何もしなくてもお金が入るんだもの。そのほうが良いわよね」
「夫が浮気だなんて嫌な気分にしかならないと思っていたけど、クリスティーナ様はターチ様を溺愛しているから、ロブ様に興味がないのかもしれないわね」
ロブ様が猛アタックしたとも聞いているし、恋愛結婚というよりかは、クリスティーナ様はロブ様と結婚してあげたというのが正しいのかもしれない。
「平民が侯爵令息の婚約者を奪おうっていうんだから、馬鹿としか言いようがないわ! それに浮気する令嬢も令嬢よ!」
ポーリーはぷりぷりしながら続ける。
「……お兄様の元婚約者はバレないと思っていたみたいだけど、そんなわけないわよね! 二人が一緒にいる所を見た人がいて、お父様に連絡があったのよ」
「ユーリ様の婚約者になりたい人はたくさんいそうだから、その人たちにしてみれば、令嬢の浮気はチャンスでもあるものね」
ユーリ兄さまの婚約者はたしか、伯爵令嬢だったはず。馬鹿なことをしたわね。
話をしている内に、目的地に着いたのか馬車が停まって扉が開かれたので、ポーリーと共に馬車を降りる。
「目立ちたくないから少し離れた場所に停めてもらってるの。こっちよ」
ポーリーと彼女の護衛に連れられた先は、木造の2階建ての小さな一軒家だった。ここが情報屋がいる家だと言う。
「ポーリーは情報屋の人と親しいの?」
「親しいというか、お兄様の裏の仕事なの」
「う、裏の仕事?」
「あ、リリノアだから話したのよ。他の人には言わないでね」
「……わ、わかったわ」
混乱しているわたしを見て微笑みながら、ポーリーは持っていた鍵で扉を開ける。彼女に続いて足を踏み入れると、真正面に2階に続く階段が見えた。
「あなたの旦那様のこと、ある程度のことは調べてあるの。どんな事実でも受け止める覚悟があるのなら2階に上がってみて」
「……わかったわ」
もうとっくに覚悟は決めている。
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