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46 状況を整理する午後①
しおりを挟むティナ様と話をした、次の休みの午後、リュカが私の家にやって来た。
仕事は山積みみたいだけれど、内容が内容だけに今回もリュカの仕事を国王陛下が代わりにしてくださることになったらしい。
他の人に話を聞かれたくなかったので、私の部屋で、ソファに並んで座り、メイドがお茶を淹れて出ていってから、リュカが口を開く。
「兄さんが犯人かもしれない」
その話をどうやって話そうかと思っていただけに、リュカの口からその言葉を聞いた時には驚いた気持ちもあったけれど、少しだけホッとした気持ちにもなった。
「どうしてそう思うの?」
尋ねると、リュカは部下や諜報部隊を使って調べたことを私に教えてくれた。
大人しい性格のリュディガー殿下は、とあるパーティーでティナ様を見て一目惚れをした。
それからは、今まで好んで出なかった国の行事に、ティナ様が来るとわかれば出席していた。
そして、それに気が付いたリュディガー殿下の母であるソフィー様がリュディガー殿下の恋を応援しようと考えた様だった。
人を雇ってティナ様の好みや、よく行く店などを調べ上げ、その店にはティナ様から予約が入れば必ず連絡する様にと伝えていた。
店側も隣国といえど相手が王族関係者や貴族だったため、特に疑わない店もあれば、プライバシーに関わるとして断った店もあった。
でも、断った店には火をつける、殺すなどと脅し、連絡せざるを得ない状況にしていた。
もし、このことをティナ様や関係者にバラしても、家族を殺すと脅されたらしい。
「その王族関係者と貴族というのは、誰だかわかったの?」
「王族関係者っていうのは兄さんの側近。それから、貴族っていうのは」
「トロット公爵の関係者ね」
「ああ。もしかすると、トロット公爵令嬢がティナ様の友人のふりでもして、店側に近付いた可能性もある」
「でも、どうしてトロット公爵家はリュディガー殿下の恋を応援しようとしているソフィー様に手を貸そうとされたのかしら」
尋ねると、リュカは眉根を寄せて答える。
「その話なんだが、ここから物騒な話になるんだ。リリーはそういう話は大丈夫か? トラウマになってないといいんだが」
「トラウマに関しては大丈夫よ。それに物騒な話は好きとまではいかないけれど、怖くて聞けないとまではいかないと思うから話してちょうだい」
私が頷いたのを確認してから、リュカは口を開く。
「実はトロット公爵家は他国ではあるが、アルカ公爵家に弱みを握られていたみたいだ」
「弱みを?」
聞き返したあと、両手を口に当てて話す。
「だから、ノエル様と親しいテレサを味方にするためにタイディ家に近づいたのね」
「たぶんな。タイディ子爵はお金が好きなことで有名らしい。離婚の理由の一つでもある」
「ちょっと待って。でも、ノエル様を殺して何になるの? ノエル様に何かあったら、アルカ公爵家に恨まれることはあっても立場が逆転することはないでしょう」
ルカが答えてくれる前に、頭の中で整理する。
ティナ様を殺そうとしたのは、リュディガー殿下、もしくはソフィ様が雇った誰かの可能性が高い。
そして、ノエル様を殺そうとしたのは、トロット公爵家の希望で動いたテレサだとする。
時間が巻き戻る前はティナ様は殺されて、リュカが捕まった。
そして、ノエル様は毒殺未遂に終わったけれど、冤罪で私は捕まった。
テレサが手を貸した理由は、私を消すためで、アイザックはテレサと一緒になるためだった。
あの時、ノエル様が毒殺未遂だったことに意味はあるのかしら。
「この世界では起きていないことだから、仮説にしかならないが、トロット公爵家はアルカ公爵令嬢にわざと致死量に至らない程度の毒を飲ませて、毒が何かわからず対処が出来ないアルカ公爵家に娘を助けたければ、自分たちの秘密を何があっても公にするなと言おうとしていたのだとしたら?」
「アルカ公爵は娘の命を優先するでしょうね」
普通の人ならそうするわ。
娘の命のほうが大事だもの。
「その時の弱みは物的証拠があるものだったとしたら、その物的証拠を要求しただろうな」
「じゃあ、時間を巻き戻したあとの、今に関しては、どういう感じになるのかしら」
リュカが来なかったことにより、ティナ様の暗殺は阻止できた。
そして、暗殺未遂によりティナ様の身辺警護は厳重になり、簡単には近付けない状態になった。
だから、暗殺者が近付けない状況になっていると考えられる。
「時間が戻る前と後があるから、余計にややこしくなってきたな。紙とペンはあるか? 紙に書いて整理したい」
「もちろんよ」
リュカの言葉に頷くと、すぐに立ち上がる。
そして、書物机の引き出しから紙とペンと取ると、リュカに手渡した。
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