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43 姉との最終決戦②
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トワナ様と戦う前に、気になることがあった。
それは、実父と実母であるティファス伯爵夫妻のことだった。
私が養女になってから、二人の意見に食い違いが出たらしく、夫人は実家に戻っているらしい。
実家といっても、現在は夫人のお兄様が継いでいる家だ。
行く宛のない夫人を受け入れたようだった。
ティファス伯爵は盲目的にトワナ様の味方で、どんなに状況が苦しくとも彼女の望み通りに動いた。
ティファス家を継ぐはずだったいとこは、ティファス伯爵を見捨て、ティファス家は今の段階では、現伯爵の代で終わってしまうことになりそうだった。
そのことを私が心配する筋合いもないけれど、亡き祖父母は嫌な人ではなかったから、何も思わないことも失礼だと思った。
このままいけば、伯爵夫妻は離婚するだろうと、お義父様から聞かされた。
世間体的には、ティファス伯爵の浮気だという噂が原因だと流れているらしい。
ある意味、妻よりも自分の娘であるトワナ様に夢中なのだから、そう噂されても間違ってはいないでしょうね。
こんな状況になっているのに、トワナ様は両親のことはまったく気にする様子もなく、婚約者の子爵令息と会い、将来のためだと言って、自分のために浪費させているようだった。
子爵令息は子爵令息で、ティファス家の状況を知らないのか、自分がティファス家の跡取りになろうと考えていると聞いた。
そのため、お義父様はティファス家の話を問題の子爵家の耳に入れないように手配をした。
トワナ様は子爵家から搾り取れるだけ搾り取って、エディ様に乗り換えるつもりだろうから、自分の家が傾いていることなど婚約者に伝えることもないから、そちらに関しては何もされなかった。
そして、日にちは過ぎ、トワナ様との戦いの日がやって来た。
今日は第一王女殿下の10歳になるお誕生日を祝うパーティーだ。
太陽みたいな明るい笑顔を見せる王女様で、そんな彼女を祝うかのように朝から晴天だった。
王城の敷地内で騒ぎを起こすわけにはいかないから、パーティーの後に、トワナ様とは場所を変えて話をするつもりだ。
でも、トワナ様が何も仕掛けてこないのなら、こちらからも仕掛けないつもりでいる。
パーティーはティータイムの時間に行われ、会場は広大な庭園の一部が使われていた。
色とりどりの綺麗な花が咲き誇る庭園の開けた場所に、白いテーブルクロスが敷かれた丸テーブルがたくさん置かれている。
そのテーブルの上にはケーキスタンドや、お皿、カトラリーが置かれていて、歓談しながら好きなものを食べて良いことになっていた。
人が大勢いるから、トワナ様の姿は見つけられないかもしれないと、安易なことを考えていた時、強い視線を感じて、後ろを振り返る。
すると、飲み物の入ったコップを片手に私を睨むトワナ様と目が合った。
私が見つけなくても、向こうが見つけるわよね。
思わず自嘲すると、それに気が付いたエディ様が尋ねてくる。
「リネ、どうかしたの?」
「いえ。トワナ様が睨んできているなと思いまして」
「……本当だね。リネは大丈夫?」
「ええ。先にお話だけしてきます」
王女殿下の誕生日だというのに、あんなに怖い顔をしていたら不敬すぎるわ。
そう思って、トワナ様に近付こうとすると、逆に彼女のほうから近寄ってきた。
「エディ様!」
私に近寄ってきたのかと思ったけど違った。
トワナ様は私には目もくれず、エディ様にすり寄ろうとしたのだ。
でも、エディ様は驚くほど綺麗な身のこなしで、トワナ様の腕から逃れ、抱きつかれないようにするためか、私の後ろに立った。
「申し訳ないけど、僕はリネ以外の女性に必要以上に触れられたくないんだよ」
「エディ様、その、触れようとしたわけではありませんわ。ご挨拶したかっただけで」
トワナ様は笑顔を作ってみせたけれど、上手く笑えておらず、どこか引きつった笑みになっていた。
すると、そんなトワナ様に近付く人物がいた。
「何しているんだよ、トワナ。……あ、君が、いや、失礼。あなたがリネ様ですね。トワナが言ってましたけど、本当に似てませんね? そういえば、あなたは僕のことが好きなのでしょう?」
トワナ様の婚約者である、ドロウ・セング子爵令息は、どこか意地の悪い笑みを浮かべて私に話しかけてきた。
「私は別にあなたのことなんか好きではありません」
「何を言ってるんですか。恥ずかしがらなくても良いんです。トワナから全部聞いていますよ?」
否定した私に、そこまで言ったところで、後ろにいるエディ様の存在に気が付いたようだった。
「あ……」
エディ様がどんな表情をしているかはわからない。
でも、言葉をなくしてしまうくらいに、セング子爵令息は表情を強張らせた。
「リネが君を好きだって? ふざけたことを言うなよ」
エディ様の不機嫌そうな声を聞いたセング子爵令息は後退り、トワナ様はそんな彼を睨みつけた。
それは、実父と実母であるティファス伯爵夫妻のことだった。
私が養女になってから、二人の意見に食い違いが出たらしく、夫人は実家に戻っているらしい。
実家といっても、現在は夫人のお兄様が継いでいる家だ。
行く宛のない夫人を受け入れたようだった。
ティファス伯爵は盲目的にトワナ様の味方で、どんなに状況が苦しくとも彼女の望み通りに動いた。
ティファス家を継ぐはずだったいとこは、ティファス伯爵を見捨て、ティファス家は今の段階では、現伯爵の代で終わってしまうことになりそうだった。
そのことを私が心配する筋合いもないけれど、亡き祖父母は嫌な人ではなかったから、何も思わないことも失礼だと思った。
このままいけば、伯爵夫妻は離婚するだろうと、お義父様から聞かされた。
世間体的には、ティファス伯爵の浮気だという噂が原因だと流れているらしい。
ある意味、妻よりも自分の娘であるトワナ様に夢中なのだから、そう噂されても間違ってはいないでしょうね。
こんな状況になっているのに、トワナ様は両親のことはまったく気にする様子もなく、婚約者の子爵令息と会い、将来のためだと言って、自分のために浪費させているようだった。
子爵令息は子爵令息で、ティファス家の状況を知らないのか、自分がティファス家の跡取りになろうと考えていると聞いた。
そのため、お義父様はティファス家の話を問題の子爵家の耳に入れないように手配をした。
トワナ様は子爵家から搾り取れるだけ搾り取って、エディ様に乗り換えるつもりだろうから、自分の家が傾いていることなど婚約者に伝えることもないから、そちらに関しては何もされなかった。
そして、日にちは過ぎ、トワナ様との戦いの日がやって来た。
今日は第一王女殿下の10歳になるお誕生日を祝うパーティーだ。
太陽みたいな明るい笑顔を見せる王女様で、そんな彼女を祝うかのように朝から晴天だった。
王城の敷地内で騒ぎを起こすわけにはいかないから、パーティーの後に、トワナ様とは場所を変えて話をするつもりだ。
でも、トワナ様が何も仕掛けてこないのなら、こちらからも仕掛けないつもりでいる。
パーティーはティータイムの時間に行われ、会場は広大な庭園の一部が使われていた。
色とりどりの綺麗な花が咲き誇る庭園の開けた場所に、白いテーブルクロスが敷かれた丸テーブルがたくさん置かれている。
そのテーブルの上にはケーキスタンドや、お皿、カトラリーが置かれていて、歓談しながら好きなものを食べて良いことになっていた。
人が大勢いるから、トワナ様の姿は見つけられないかもしれないと、安易なことを考えていた時、強い視線を感じて、後ろを振り返る。
すると、飲み物の入ったコップを片手に私を睨むトワナ様と目が合った。
私が見つけなくても、向こうが見つけるわよね。
思わず自嘲すると、それに気が付いたエディ様が尋ねてくる。
「リネ、どうかしたの?」
「いえ。トワナ様が睨んできているなと思いまして」
「……本当だね。リネは大丈夫?」
「ええ。先にお話だけしてきます」
王女殿下の誕生日だというのに、あんなに怖い顔をしていたら不敬すぎるわ。
そう思って、トワナ様に近付こうとすると、逆に彼女のほうから近寄ってきた。
「エディ様!」
私に近寄ってきたのかと思ったけど違った。
トワナ様は私には目もくれず、エディ様にすり寄ろうとしたのだ。
でも、エディ様は驚くほど綺麗な身のこなしで、トワナ様の腕から逃れ、抱きつかれないようにするためか、私の後ろに立った。
「申し訳ないけど、僕はリネ以外の女性に必要以上に触れられたくないんだよ」
「エディ様、その、触れようとしたわけではありませんわ。ご挨拶したかっただけで」
トワナ様は笑顔を作ってみせたけれど、上手く笑えておらず、どこか引きつった笑みになっていた。
すると、そんなトワナ様に近付く人物がいた。
「何しているんだよ、トワナ。……あ、君が、いや、失礼。あなたがリネ様ですね。トワナが言ってましたけど、本当に似てませんね? そういえば、あなたは僕のことが好きなのでしょう?」
トワナ様の婚約者である、ドロウ・セング子爵令息は、どこか意地の悪い笑みを浮かべて私に話しかけてきた。
「私は別にあなたのことなんか好きではありません」
「何を言ってるんですか。恥ずかしがらなくても良いんです。トワナから全部聞いていますよ?」
否定した私に、そこまで言ったところで、後ろにいるエディ様の存在に気が付いたようだった。
「あ……」
エディ様がどんな表情をしているかはわからない。
でも、言葉をなくしてしまうくらいに、セング子爵令息は表情を強張らせた。
「リネが君を好きだって? ふざけたことを言うなよ」
エディ様の不機嫌そうな声を聞いたセング子爵令息は後退り、トワナ様はそんな彼を睨みつけた。
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