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30 姉との一戦目①
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以前、私がデイリ様から婚約破棄を言い渡されたパーティーは、デイリ様の友人の家で行われたパーティーでデイリ様の友人しかいなかった。
あの時の私は一人ぼっちだったからというだけでなく、戦おうという気持ちもなかった。
今日のパーティーはお義父様やお義母様、エディ様のお友達や信頼できる方だけを招待したものだ。
でも、人数の多さや規模の大きさは、あの時のパーティとは比べ物にならない。
今回は大々的なものではないため、エディ様と私が招待局の方に挨拶をしたくらいで、あとは立食形式の食事を楽しみながら、それぞれで歓談することになった。
「エレインとテッド様は婚約者はいないのだっけ?」
エレインももちろん招待されていて、一緒に食事をしながら聞いてみると、彼女は苦笑して首を横に振る。
「私たちは昔からエディ様の側近になるためにと育てられていますので、結婚はどうこう言われていないんです。だから、婚約者もいません」
「じゃあ、エレインとテッド様が結婚することはあったりするの?」
「ない! ないです!」
今日の私のドレスは水色のシュミーズドレス。
エレインは薄いピンク色のプリンセスラインのドレスを着ていて、いつもポニーテールにしている長い髪を背中におろしているから、イメージが違って、とても可愛らしい。
友達と恋の話というものをしてみたかったので、期待して聞いてみたけれど、エレインに全力で否定されてしまった。
「二人はそういう関係じゃないの?」
「期待にお応えできず申し訳ございません。残念ながら、そういう関係ではありません。なんと言いますか、戦友といった感じでしょうか」
「そうなのね」
エレインの意見はこんな感じだけど、テッド様はどう思ってるのかしら。
って駄目ね。
こんなことは本人同士の話で、私が勝手に想像するのも良くないわよね。
反省していると、エレインが口を開く。
「よく言われますから、気になさらないでください。でも、本当にそういう仲ではございませんので」
「ごめんなさい。エレインが優しいからつい調子に乗ってしまったの」
「調子にのっていただいても大丈夫です! 別に言われても嫌だというわけでもありませんから」
エレインが笑顔で言ってくれた時だった。
「リネ、あなた、また人を困らせているの?」
ワインレッドのイブニングドレスに身を包んだお姉様が話しかけてきた。
顔が青白く見えるようにメイクしていて、病弱アピールをしている感じだった。
「お話をしていただけですが? リネ様が私を困らせるようなことはなさいません」
久しぶりのお姉様に一瞬だけ怯んでしまい、言葉を返す反応が遅れてしまい、エレインが先に反応した。
冷たく返されたお姉様は苦笑して言う。
「謝っていたようだから、リネが悪いことをしたんだと思ったのよ。そんなに睨まないでちょうだい?」
「睨んでなんていません」
「そうなの? それならあなたは、とても怖い顔をしているのね」
お姉様がエレインを見て鼻で笑った。
さすがに黙っていられなくて口を開く。
「お姉様、私に何かお話があると聞いているのですが、何か御用でしょうか」
「久しぶりの再会なのに冷たいのね」
お姉様は小さく息を吐いたあと、エレインの方を見てから、視線を私に戻す。
「リネと二人で話がしたいんだけれど?」
「別にここでも話せますでしょう? それとも人に聞かれてはまずいお話でもされるおつもりですか?」
「そういうわけじゃないわ」
お姉様は一瞬だけ不満げな顔をしたけれど、人の目があるからか強くは言えないようで、その場で話し始める。
「お父様たちから聞いたと思うけれど、あなたがいなくなって本当に寂しいの。お願いだから家に帰ってきてくれないかしら」
「お父様とお母様がいるのですから、私がいなくても良いでしょう?」
「それでも寂しいから言ってるんじゃないの」
お姉様は自分たちに周りの視線が集まっているかどうか確認してから話を続ける。
「お願いよ。仲直りしてちょうだい? この通りよ」
お姉様が手を合わせて頼んでくる。
『大勢の人の前で頼んでいるのだから、お願いを聞いてくれるわよね?』
お姉様のそんな心の声が聞こえた気がした。
今までは、ここで無難な言葉を返さなければ人に嫌われてしまうという恐怖が勝っていた。
でも、今は違う。
人の意見なんて色々だわ。
私が正しいと思う答えを言えばいい。
間違っているのなら、きっとエディ様たちが教えてくれる。
それに、自分の決めた答えなら、時には間違ってもいいはず。
自分の気持ちを他人に決められる筋合いはないわ。
「絶対に帰りません。それからお姉様」
「な、何よ」
「あまりしつこく私に付きまとうようでしたら、今までお姉様が私にしてきたことを、この場で全部暴露します」
「ちょ、そんな馬鹿なことをしたら、あなただって傷付くことになるわよ!」
お姉様は周りに聞こえないようにか、口元に手を置いて小さな声で言った。
「大丈夫です。今日ここに集まっている方たちはニーソン公爵家のお友達や信頼されている方々です。この場で起こった出来事や聞いた話を他の場所で言いふらすような方々ではございませんから」
「それなら、ここで暴露しても意味がないじゃないの!」
「ご心配なさらないでください。話の内容を詳しく話さなくても、お姉様が酷いことをしたという話だけ貴族の間で伝わるようにしてくださると思います」
今はまだ、私は伯爵令嬢のままでなければならない。
エディ様と私が結婚すれば、また状況は変わってくる。
今、私が乗り越えなければいけないのは、お姉様への苦手意識だった。
あの時の私は一人ぼっちだったからというだけでなく、戦おうという気持ちもなかった。
今日のパーティーはお義父様やお義母様、エディ様のお友達や信頼できる方だけを招待したものだ。
でも、人数の多さや規模の大きさは、あの時のパーティとは比べ物にならない。
今回は大々的なものではないため、エディ様と私が招待局の方に挨拶をしたくらいで、あとは立食形式の食事を楽しみながら、それぞれで歓談することになった。
「エレインとテッド様は婚約者はいないのだっけ?」
エレインももちろん招待されていて、一緒に食事をしながら聞いてみると、彼女は苦笑して首を横に振る。
「私たちは昔からエディ様の側近になるためにと育てられていますので、結婚はどうこう言われていないんです。だから、婚約者もいません」
「じゃあ、エレインとテッド様が結婚することはあったりするの?」
「ない! ないです!」
今日の私のドレスは水色のシュミーズドレス。
エレインは薄いピンク色のプリンセスラインのドレスを着ていて、いつもポニーテールにしている長い髪を背中におろしているから、イメージが違って、とても可愛らしい。
友達と恋の話というものをしてみたかったので、期待して聞いてみたけれど、エレインに全力で否定されてしまった。
「二人はそういう関係じゃないの?」
「期待にお応えできず申し訳ございません。残念ながら、そういう関係ではありません。なんと言いますか、戦友といった感じでしょうか」
「そうなのね」
エレインの意見はこんな感じだけど、テッド様はどう思ってるのかしら。
って駄目ね。
こんなことは本人同士の話で、私が勝手に想像するのも良くないわよね。
反省していると、エレインが口を開く。
「よく言われますから、気になさらないでください。でも、本当にそういう仲ではございませんので」
「ごめんなさい。エレインが優しいからつい調子に乗ってしまったの」
「調子にのっていただいても大丈夫です! 別に言われても嫌だというわけでもありませんから」
エレインが笑顔で言ってくれた時だった。
「リネ、あなた、また人を困らせているの?」
ワインレッドのイブニングドレスに身を包んだお姉様が話しかけてきた。
顔が青白く見えるようにメイクしていて、病弱アピールをしている感じだった。
「お話をしていただけですが? リネ様が私を困らせるようなことはなさいません」
久しぶりのお姉様に一瞬だけ怯んでしまい、言葉を返す反応が遅れてしまい、エレインが先に反応した。
冷たく返されたお姉様は苦笑して言う。
「謝っていたようだから、リネが悪いことをしたんだと思ったのよ。そんなに睨まないでちょうだい?」
「睨んでなんていません」
「そうなの? それならあなたは、とても怖い顔をしているのね」
お姉様がエレインを見て鼻で笑った。
さすがに黙っていられなくて口を開く。
「お姉様、私に何かお話があると聞いているのですが、何か御用でしょうか」
「久しぶりの再会なのに冷たいのね」
お姉様は小さく息を吐いたあと、エレインの方を見てから、視線を私に戻す。
「リネと二人で話がしたいんだけれど?」
「別にここでも話せますでしょう? それとも人に聞かれてはまずいお話でもされるおつもりですか?」
「そういうわけじゃないわ」
お姉様は一瞬だけ不満げな顔をしたけれど、人の目があるからか強くは言えないようで、その場で話し始める。
「お父様たちから聞いたと思うけれど、あなたがいなくなって本当に寂しいの。お願いだから家に帰ってきてくれないかしら」
「お父様とお母様がいるのですから、私がいなくても良いでしょう?」
「それでも寂しいから言ってるんじゃないの」
お姉様は自分たちに周りの視線が集まっているかどうか確認してから話を続ける。
「お願いよ。仲直りしてちょうだい? この通りよ」
お姉様が手を合わせて頼んでくる。
『大勢の人の前で頼んでいるのだから、お願いを聞いてくれるわよね?』
お姉様のそんな心の声が聞こえた気がした。
今までは、ここで無難な言葉を返さなければ人に嫌われてしまうという恐怖が勝っていた。
でも、今は違う。
人の意見なんて色々だわ。
私が正しいと思う答えを言えばいい。
間違っているのなら、きっとエディ様たちが教えてくれる。
それに、自分の決めた答えなら、時には間違ってもいいはず。
自分の気持ちを他人に決められる筋合いはないわ。
「絶対に帰りません。それからお姉様」
「な、何よ」
「あまりしつこく私に付きまとうようでしたら、今までお姉様が私にしてきたことを、この場で全部暴露します」
「ちょ、そんな馬鹿なことをしたら、あなただって傷付くことになるわよ!」
お姉様は周りに聞こえないようにか、口元に手を置いて小さな声で言った。
「大丈夫です。今日ここに集まっている方たちはニーソン公爵家のお友達や信頼されている方々です。この場で起こった出来事や聞いた話を他の場所で言いふらすような方々ではございませんから」
「それなら、ここで暴露しても意味がないじゃないの!」
「ご心配なさらないでください。話の内容を詳しく話さなくても、お姉様が酷いことをしたという話だけ貴族の間で伝わるようにしてくださると思います」
今はまだ、私は伯爵令嬢のままでなければならない。
エディ様と私が結婚すれば、また状況は変わってくる。
今、私が乗り越えなければいけないのは、お姉様への苦手意識だった。
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