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12 聞いていた殿下
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部屋にトレイごと持って帰り、黙々と1人で食事をしながら考えた。
さっきのってどういう意味?
危険な目に合うかもしれないけれど、私のために代理彼氏をしてくれるって事?
なんて命知らずな…。
まだ若いから、あんな事が言えてしまうんでしょうけど…。
ホークの言うとおり、殿下は私の恋人を殺す事はないと思う。
そんな事をしたら、私が殿下を嫌うのではなく、憎む可能性があるから。
ただ、殿下の執着心をあなどってはいけないとも思っている。
ただ、一番私が怖いのは、殿下を傷付けてしまう事だ。
殿下の事だから、私がホークに恋していない事をすぐにわかってしまうだろう。
そんな演技をしないといけないほどに嫌がっているとわかったら、さすがの殿下も傷つきそうな気がする。
いや、それくらいしないとわかってもらえない?
「どうしようかな…」
コップに水を注ぎ、一口飲んだ時だった。
部屋の扉が叩かれたので、返事をする。
「どちら様でしょう」
「俺だ」
アーク殿下の声だった。
顔を見なくてもわかってしまう自分が怖い。
あ、でも、ミア様が相手でもわかるだろうから、別に普通なのかもしれない。
「俺という名前の知り合いはいないのですが…」
「お前の未来の夫だ」
「そんな不審者みたいな事を言う知り合いはいません」
「夫を不審者扱いするのか…」
「ああ、もう! なんなんですか! 夜に女性の部屋を訪ねてくるなんて非常識ですよ!」
扉を開けると、食べ物ののったトレイを持った殿下がいた。
「食べている途中だったろう? 温め直してもらった」
「あ、ありがとうございます」
まさか、今、食べているなんて言いづらくて、殿下からトレイを受け取る。
う、今から二人分も食べて、胃が大丈夫かな…。
「ルア、俺に話す事はないか?」
「話す事、ですか?」
「ああ。俺もさっき、調理場に行ったんだ」
「……さっき、ですか」
「ああ」
これ、聞かれてたな。
ごめん、ホーク。
あなたの優しさが無意味なものになってしまったわ。
「何か、ありましたっけ?」
一応、しらばっくれてみる。
「若い男と話をしていたな。まあ、話をするくらいなら構わん。変な束縛をするつもりはない。だが、内容にもよる」
「聞いてたんですか」
「聞いてたんじゃない、聞こえたんだ」
「…とりあえず、中へどうぞ。話すだけですよ。変な事はしないで下さいね」
「お前の返答次第だな」
そう言って、アーク殿下は中に入ってくると、机の上に置いていた、食べかけの食事がのったトレイを横によけて、もう1つ置けるようにスペースを作ってくれた。
「食べきれないだろうから、俺も食べる」
殿下は机の近くにあるベッドに座ったので、トレイを置いてから文句を言う。
「女性のベッドの上に座るのはどうかと思いますけど」
「じゃあ床に座ればいいのか」
「椅子に座って下さいよ」
「お前はどこに座るんだ」
「立って食べます」
「…じゃあ、こうするか」
殿下は立ち上がって椅子に座ると、私に向かって両腕を伸ばした。
「何してるんですか」
「座れ」
「はい?」
「いいから」
そう言って、殿下は立ち上がると、私の両腕をつかんで身体を回転させ、食事の置いてある机に向けさせた。
そして自分はまた椅子に座り、私を彼の太ももの上にのせた。
「座りにくいです、殿下」
「わかった」
はなしてくれるのかと思いきや、足を広げて、座るスペースを空けてくれただけだった。
まあ、お尻はさっきよりも痛くない。
けど、明らかに殿下が近すぎる。
「殿下、本当に何をしてもいいわけではないですからね?」
「今まで我慢してきたんだ。もう、我慢の限界がきた。今度はお前が我慢してくれ」
「意味がわかりませんよ」
お腹をがっつりとホールドされてしまったので、逃げる事を諦める。
「逃げませんから、お腹に回す腕の力を緩めて下さい」
「わかった」
腕が緩んだところで、食事を開始すると、殿下が話を戻してきた。
「で、ルア、俺に話す事があるだろう?」
「聞いてたんなら、言わなくてもいいじゃないですか」
「ルアの気持ちが聞きたいんだ。どう思ったのか」
どう思った、と言われても、まさにそれを考えていたところに、あなたが来たので、全く考えがまとまっていないんですけどね?
さっきのってどういう意味?
危険な目に合うかもしれないけれど、私のために代理彼氏をしてくれるって事?
なんて命知らずな…。
まだ若いから、あんな事が言えてしまうんでしょうけど…。
ホークの言うとおり、殿下は私の恋人を殺す事はないと思う。
そんな事をしたら、私が殿下を嫌うのではなく、憎む可能性があるから。
ただ、殿下の執着心をあなどってはいけないとも思っている。
ただ、一番私が怖いのは、殿下を傷付けてしまう事だ。
殿下の事だから、私がホークに恋していない事をすぐにわかってしまうだろう。
そんな演技をしないといけないほどに嫌がっているとわかったら、さすがの殿下も傷つきそうな気がする。
いや、それくらいしないとわかってもらえない?
「どうしようかな…」
コップに水を注ぎ、一口飲んだ時だった。
部屋の扉が叩かれたので、返事をする。
「どちら様でしょう」
「俺だ」
アーク殿下の声だった。
顔を見なくてもわかってしまう自分が怖い。
あ、でも、ミア様が相手でもわかるだろうから、別に普通なのかもしれない。
「俺という名前の知り合いはいないのですが…」
「お前の未来の夫だ」
「そんな不審者みたいな事を言う知り合いはいません」
「夫を不審者扱いするのか…」
「ああ、もう! なんなんですか! 夜に女性の部屋を訪ねてくるなんて非常識ですよ!」
扉を開けると、食べ物ののったトレイを持った殿下がいた。
「食べている途中だったろう? 温め直してもらった」
「あ、ありがとうございます」
まさか、今、食べているなんて言いづらくて、殿下からトレイを受け取る。
う、今から二人分も食べて、胃が大丈夫かな…。
「ルア、俺に話す事はないか?」
「話す事、ですか?」
「ああ。俺もさっき、調理場に行ったんだ」
「……さっき、ですか」
「ああ」
これ、聞かれてたな。
ごめん、ホーク。
あなたの優しさが無意味なものになってしまったわ。
「何か、ありましたっけ?」
一応、しらばっくれてみる。
「若い男と話をしていたな。まあ、話をするくらいなら構わん。変な束縛をするつもりはない。だが、内容にもよる」
「聞いてたんですか」
「聞いてたんじゃない、聞こえたんだ」
「…とりあえず、中へどうぞ。話すだけですよ。変な事はしないで下さいね」
「お前の返答次第だな」
そう言って、アーク殿下は中に入ってくると、机の上に置いていた、食べかけの食事がのったトレイを横によけて、もう1つ置けるようにスペースを作ってくれた。
「食べきれないだろうから、俺も食べる」
殿下は机の近くにあるベッドに座ったので、トレイを置いてから文句を言う。
「女性のベッドの上に座るのはどうかと思いますけど」
「じゃあ床に座ればいいのか」
「椅子に座って下さいよ」
「お前はどこに座るんだ」
「立って食べます」
「…じゃあ、こうするか」
殿下は立ち上がって椅子に座ると、私に向かって両腕を伸ばした。
「何してるんですか」
「座れ」
「はい?」
「いいから」
そう言って、殿下は立ち上がると、私の両腕をつかんで身体を回転させ、食事の置いてある机に向けさせた。
そして自分はまた椅子に座り、私を彼の太ももの上にのせた。
「座りにくいです、殿下」
「わかった」
はなしてくれるのかと思いきや、足を広げて、座るスペースを空けてくれただけだった。
まあ、お尻はさっきよりも痛くない。
けど、明らかに殿下が近すぎる。
「殿下、本当に何をしてもいいわけではないですからね?」
「今まで我慢してきたんだ。もう、我慢の限界がきた。今度はお前が我慢してくれ」
「意味がわかりませんよ」
お腹をがっつりとホールドされてしまったので、逃げる事を諦める。
「逃げませんから、お腹に回す腕の力を緩めて下さい」
「わかった」
腕が緩んだところで、食事を開始すると、殿下が話を戻してきた。
「で、ルア、俺に話す事があるだろう?」
「聞いてたんなら、言わなくてもいいじゃないですか」
「ルアの気持ちが聞きたいんだ。どう思ったのか」
どう思った、と言われても、まさにそれを考えていたところに、あなたが来たので、全く考えがまとまっていないんですけどね?
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