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4.5 予兆(サウロン視点)
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リンファと婚約破棄をし、彼女が出て行ってくれてから、私とチーチルの間に障害はなくなった。
これで、人の目を気にせずに、チーチルと一緒にいられるようになった。
今日も朝から、チーチルを私の部屋に呼び、ソファーに寄り添って座って会話をしていた。
「こんな日が来るのを、ずっと心待ちにしておったのだ」
「わたくしもそうですけどっ! でもっ、どうして、リンファを追い出しちゃったんですかっ!?」
「そんなことは気にしなくても良いではないか。私達の結婚の日が近付いて来たのだから」
リンファがいなくなったことに、チーチルは不服そうだったが、私との結婚の話をすると嬉しそうにしてくれた。
「それは嬉しいんですけどっ! でもっ、わたくしは魔物は嫌いなんですっ! 体調が悪くなっちゃうんですっ!」
チーチルは聖なる体を持っているので、魔物に近付くと体調が悪くなってしまう。
だから、魔物が出たと聞けば、リンファに行かせていた。
リンファは聖女として頑張っていたと言う人間も多いが、ここ最近の彼女は大して頑張っているようには思えなかった。
なぜなら、1年前までの彼女は顔色が悪く痩せこけるまで頑張っていたのに、最近の彼女は顔色が良くなり、私に言い返す気力まで出てきてしまったからだ。
父上はそれを良いことだと言っていたけれど、私にとっては、それはサボっているということと一緒だった。
身を粉にして働くことをやめてしまった聖女など堕落していくだけだ。
それに、回復魔法が得意でなければ意味がない。
魔物に襲われても回復魔法があれば、人は死ぬことはない。
やはり、リンファは必要ない聖女だったのだ。
父上は良い国王だったと思うが、リンファに対しての見る目はなかった。
もちろん、チーチルに対しても優しくしておられたので、駄目な国王でもない。
私は父上に出来なかった、正しいことをした。
それは元老院も認めてくれた。
国のために良いことをしたのだ。
「陛下っ! わたくしの話っ、聞いてますっ?」
私の腕にもたれかかり、こてんと首を傾げるチーチルは、とても可愛らしくて、聖女であり天使だった。
「ああ、聞いているよ。可愛い、チーチル。ただ、魔物の出現は最近は減っているし、チーチルの出番はないから安心しなさい」
「でもっ、昨日はっ、魔物が出たって聞きましたよっ!?」
チーチルは頬を膨らませた。
「大丈夫だ。動物を魔物と間違えたのであろう」
魔物は動物の姿に似ているから、間違えてしまう気持ちもわかる。
チーチルが住むこの国に、魔物が出るわけはないのだ。
そう思っていたのだが……。
「ねえ、陛下っ?」
「どうした?」
「魔物がいたかもしれない場所っ、見に行かなくていいんですかっ?」
「ああ、かまわぬ。魔物などおらぬのだから」
「わあっ! そうですよねっ! 気のせいで良かったっ!」
チーチルが気になる言葉を口にしたので聞いてみる。
「気のせいとはどういうことだ?」
「えーとですねっ」
チーチルはあごに指を当て、可愛い顔を歪めて続ける。
「リンファがいなくなってからっ、ずーっとっ、気持ち悪い感覚があるんですっ」
「気持ち悪い感覚だと……?」
「はいっ! こう、魔物が動き始めているようなっ? もぞもぞする感じっ?」
チーチルは私の顔を見上げて微笑む。
「でも、陛下が動物だとおっしゃるなら、動物ですよねっ!」
「あ、ああ。そうに決まっている」
この時、なぜだか嫌な予感がした。
これで、人の目を気にせずに、チーチルと一緒にいられるようになった。
今日も朝から、チーチルを私の部屋に呼び、ソファーに寄り添って座って会話をしていた。
「こんな日が来るのを、ずっと心待ちにしておったのだ」
「わたくしもそうですけどっ! でもっ、どうして、リンファを追い出しちゃったんですかっ!?」
「そんなことは気にしなくても良いではないか。私達の結婚の日が近付いて来たのだから」
リンファがいなくなったことに、チーチルは不服そうだったが、私との結婚の話をすると嬉しそうにしてくれた。
「それは嬉しいんですけどっ! でもっ、わたくしは魔物は嫌いなんですっ! 体調が悪くなっちゃうんですっ!」
チーチルは聖なる体を持っているので、魔物に近付くと体調が悪くなってしまう。
だから、魔物が出たと聞けば、リンファに行かせていた。
リンファは聖女として頑張っていたと言う人間も多いが、ここ最近の彼女は大して頑張っているようには思えなかった。
なぜなら、1年前までの彼女は顔色が悪く痩せこけるまで頑張っていたのに、最近の彼女は顔色が良くなり、私に言い返す気力まで出てきてしまったからだ。
父上はそれを良いことだと言っていたけれど、私にとっては、それはサボっているということと一緒だった。
身を粉にして働くことをやめてしまった聖女など堕落していくだけだ。
それに、回復魔法が得意でなければ意味がない。
魔物に襲われても回復魔法があれば、人は死ぬことはない。
やはり、リンファは必要ない聖女だったのだ。
父上は良い国王だったと思うが、リンファに対しての見る目はなかった。
もちろん、チーチルに対しても優しくしておられたので、駄目な国王でもない。
私は父上に出来なかった、正しいことをした。
それは元老院も認めてくれた。
国のために良いことをしたのだ。
「陛下っ! わたくしの話っ、聞いてますっ?」
私の腕にもたれかかり、こてんと首を傾げるチーチルは、とても可愛らしくて、聖女であり天使だった。
「ああ、聞いているよ。可愛い、チーチル。ただ、魔物の出現は最近は減っているし、チーチルの出番はないから安心しなさい」
「でもっ、昨日はっ、魔物が出たって聞きましたよっ!?」
チーチルは頬を膨らませた。
「大丈夫だ。動物を魔物と間違えたのであろう」
魔物は動物の姿に似ているから、間違えてしまう気持ちもわかる。
チーチルが住むこの国に、魔物が出るわけはないのだ。
そう思っていたのだが……。
「ねえ、陛下っ?」
「どうした?」
「魔物がいたかもしれない場所っ、見に行かなくていいんですかっ?」
「ああ、かまわぬ。魔物などおらぬのだから」
「わあっ! そうですよねっ! 気のせいで良かったっ!」
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「気のせいとはどういうことだ?」
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チーチルはあごに指を当て、可愛い顔を歪めて続ける。
「リンファがいなくなってからっ、ずーっとっ、気持ち悪い感覚があるんですっ」
「気持ち悪い感覚だと……?」
「はいっ! こう、魔物が動き始めているようなっ? もぞもぞする感じっ?」
チーチルは私の顔を見上げて微笑む。
「でも、陛下が動物だとおっしゃるなら、動物ですよねっ!」
「あ、ああ。そうに決まっている」
この時、なぜだか嫌な予感がした。
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