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25 笑われてしまいました
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ディーン達が旅行先から帰ってくる日であり、私達がラルフ様の屋敷へ使用人達と共に旅立つ日の昼過ぎの事。
ラルフ様が迎えに来てくださるのを待っている間、私はソラと一緒に、旅立つ前の最終確認をしていました。
そんな時、ふと思い出した事があり、ソラに話しかける。
「ソラ、どうしたら良いのでしょう。ラルフ様のお気持ちは嬉しいのですが、このままだと、私は食べられてしまうかもしれないのです」
「どうしたんですか、いきなり」
「ラルフ様は結婚したら私を食べると仰っていたのです!」
「そりゃ、食べるんじゃないですか?」
なぜか、ソラが不思議そうな顔をして言うので、驚いて聞き返す。
「え! ソ、ソラも人を食べるのですか!?」
「はあ?」
ソラが私以上に驚いて聞き返してきたと思ったら、すぐに大きな息を吐いてから聞いてきます。
「リノア、もしかして、食べるという意味を誤解してないか?」
「どういう意味です?」
二人きりなので口調を変えて言うソラに、意味がわからなくて聞き返すと、彼は呆れた顔で答えます。
「俺はリノアを食べない」
「それは当たり前なのです」
「でも、俺は自分の彼女は食べたけど?」
「ひっ!」
え、も、もしや元気そうにしているけれども、え、そんな!
どこか、見えない一部を食べられていたの!?
「いや、だから、リノア。この場合の食べるっていうのは…」
パニックに陥っていると、ソラが近寄ってきて、耳元で話してくれた内容を理解した時には恥ずかしさでひっくり返りそうになった。
「わ、私、なんて、はしたない話をしてしまったんでしょうか!!」
「もう諦めるしかないだろ。どのみち、食われるしか道はないんだから」
「もうちょっと言い方があると思うんですけど!? っていうか、ソラは食べちゃったんですか! 結婚前なのに!」
「平民だからいいんだよ」
「そんな問題なんですか!?」
喧嘩をしていると、ラルフ様が迎えにいらっしゃったとの連絡があり喧嘩を止めた。
頬に感じる熱が冷めやらないまま、エントランスホールで待ってくださっているラルフ様の元に向かうと、彼は不思議そうに首を傾げられました。
「どうかしたのか、リノア。頬がピンク色だぞ?」
「ち、チークです!」
チークなどしておりませんけれども、首を横に振って答えると、なぜか、ラルフ様は後ろに立っているソラの方に目を向けられました。
「…リノア様は食べるという意味を誤解していらっしゃったようでして」
「ソラ!」
話すのを止めさせようと振り返って、ソラの所に向かおうとするけれど、ラルフ様に腕をつかまれて止められてしまう。
「リノア様はクラーク辺境伯様に食肉として食べられると思い込んでいたようです」
「ソラ!!」
私が叫んだと同時、吹き出す声が聞こえて、上を見上げると、ラルフ様は私の腕をつかんだまま、顔を横に向けて笑っておられました。
「ラルフ様! 笑い事ではないのです!」
「そうだな。リノアにとっては笑い事ではないよな。あの時、話がかみあってないような気がしてはいたんだ」
ラルフ様は顔を背けたまま、ひとしきり笑ったあと、私の頭を撫でながら言われます。
「その反応だと食べられるのは嫌という事ではないのだな?」
「ち、違います! まだ結婚しておりませんので仮定の話ですし、まだわからないのです!」
「婚約が無効になる事は、俺が死なない限りないと思うのだが」
「死んでしまわれては困りますが、ラルフ様のお屋敷にお世話になっている間に、どう心変わりされるかわかりませんから!」
何より、未来の嫁姑、小姑問題が待っているのかもしれないと思うと、ある意味、結婚する前に嫁失格の烙印を押されたいものです。
「俺が逃がす訳ないだろう?」
ちゅ、と後ろから頬にキスをされてあわあわしていると、目の前に立っていたソラがニヤニヤしているのが見えて、バクバクする心臓をおさえながら睨みつけると、とうとうソラが吹き出しました。
「ソラ!」
「…申し訳ございません。やっと、リノア様にもそんな日が来たんだなぁと」
「どういう日ですか!」
プンプン怒っていると、ケイン様が屋敷の中に入ってきて、私達の様子を見てきょとんとした後、すぐに気を取り直したのか口を開きました。
「失礼しました。ラルフ様、カンタス伯爵夫妻が帰ってきたようです」
「そうか。では、お別れの挨拶をしに行くか?」
ラルフ様は後ろから私を軽く抱きしめたあと、すぐに身体をはなし私の手を取って、そう促されました。
ラルフ様が迎えに来てくださるのを待っている間、私はソラと一緒に、旅立つ前の最終確認をしていました。
そんな時、ふと思い出した事があり、ソラに話しかける。
「ソラ、どうしたら良いのでしょう。ラルフ様のお気持ちは嬉しいのですが、このままだと、私は食べられてしまうかもしれないのです」
「どうしたんですか、いきなり」
「ラルフ様は結婚したら私を食べると仰っていたのです!」
「そりゃ、食べるんじゃないですか?」
なぜか、ソラが不思議そうな顔をして言うので、驚いて聞き返す。
「え! ソ、ソラも人を食べるのですか!?」
「はあ?」
ソラが私以上に驚いて聞き返してきたと思ったら、すぐに大きな息を吐いてから聞いてきます。
「リノア、もしかして、食べるという意味を誤解してないか?」
「どういう意味です?」
二人きりなので口調を変えて言うソラに、意味がわからなくて聞き返すと、彼は呆れた顔で答えます。
「俺はリノアを食べない」
「それは当たり前なのです」
「でも、俺は自分の彼女は食べたけど?」
「ひっ!」
え、も、もしや元気そうにしているけれども、え、そんな!
どこか、見えない一部を食べられていたの!?
「いや、だから、リノア。この場合の食べるっていうのは…」
パニックに陥っていると、ソラが近寄ってきて、耳元で話してくれた内容を理解した時には恥ずかしさでひっくり返りそうになった。
「わ、私、なんて、はしたない話をしてしまったんでしょうか!!」
「もう諦めるしかないだろ。どのみち、食われるしか道はないんだから」
「もうちょっと言い方があると思うんですけど!? っていうか、ソラは食べちゃったんですか! 結婚前なのに!」
「平民だからいいんだよ」
「そんな問題なんですか!?」
喧嘩をしていると、ラルフ様が迎えにいらっしゃったとの連絡があり喧嘩を止めた。
頬に感じる熱が冷めやらないまま、エントランスホールで待ってくださっているラルフ様の元に向かうと、彼は不思議そうに首を傾げられました。
「どうかしたのか、リノア。頬がピンク色だぞ?」
「ち、チークです!」
チークなどしておりませんけれども、首を横に振って答えると、なぜか、ラルフ様は後ろに立っているソラの方に目を向けられました。
「…リノア様は食べるという意味を誤解していらっしゃったようでして」
「ソラ!」
話すのを止めさせようと振り返って、ソラの所に向かおうとするけれど、ラルフ様に腕をつかまれて止められてしまう。
「リノア様はクラーク辺境伯様に食肉として食べられると思い込んでいたようです」
「ソラ!!」
私が叫んだと同時、吹き出す声が聞こえて、上を見上げると、ラルフ様は私の腕をつかんだまま、顔を横に向けて笑っておられました。
「ラルフ様! 笑い事ではないのです!」
「そうだな。リノアにとっては笑い事ではないよな。あの時、話がかみあってないような気がしてはいたんだ」
ラルフ様は顔を背けたまま、ひとしきり笑ったあと、私の頭を撫でながら言われます。
「その反応だと食べられるのは嫌という事ではないのだな?」
「ち、違います! まだ結婚しておりませんので仮定の話ですし、まだわからないのです!」
「婚約が無効になる事は、俺が死なない限りないと思うのだが」
「死んでしまわれては困りますが、ラルフ様のお屋敷にお世話になっている間に、どう心変わりされるかわかりませんから!」
何より、未来の嫁姑、小姑問題が待っているのかもしれないと思うと、ある意味、結婚する前に嫁失格の烙印を押されたいものです。
「俺が逃がす訳ないだろう?」
ちゅ、と後ろから頬にキスをされてあわあわしていると、目の前に立っていたソラがニヤニヤしているのが見えて、バクバクする心臓をおさえながら睨みつけると、とうとうソラが吹き出しました。
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「…申し訳ございません。やっと、リノア様にもそんな日が来たんだなぁと」
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プンプン怒っていると、ケイン様が屋敷の中に入ってきて、私達の様子を見てきょとんとした後、すぐに気を取り直したのか口を開きました。
「失礼しました。ラルフ様、カンタス伯爵夫妻が帰ってきたようです」
「そうか。では、お別れの挨拶をしに行くか?」
ラルフ様は後ろから私を軽く抱きしめたあと、すぐに身体をはなし私の手を取って、そう促されました。
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