23 / 29
22 ドキドキしてしまいました
しおりを挟む
「ラルフ様、カンタス伯爵と話をしてもよろしいですか?」
「あんな奴と話す事なんて何もないだろう」
明らかにラルフ様は殺気立っているので、なだめるように彼の胸のあたりを優しく撫でながらお願いする。
「聞きたいことを聞いて、彼のお願いをはっきりお断りするだけですから。だからお話をさせて下さい。よろしいですよね?」
「…では、この状態で話せ」
「はい?」
「このままでも話はできるだろう?」
そう言ってラルフ様は片腕だけではなく、今度は両腕で私を抱きしめられました!
だ、男性に抱きしめられるなんて初めての経験で、息ができないくらいにドキドキします。
な、なんなんでしょう、この感じは?
すごく落ち着かないのです。
って、今はそんな事を考えている場合ではありません。
息を整えてから、身をよじらせて、ディーンの方に顔を向けて、私は口を開いた。
「カンタス伯爵」
「リノア、本当に後悔している。ずっと待ってくれていた君がいたにも関わらず、ヴィアラに心が動いてしまった事を!」
「謝らなくても良いですよ? 気にしていませんから」
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる。そう言って出ていった俺を君は本当に待ってくれていた! そんな君に対して俺は!」
「だから気にしていませんってば!」
羽交い締めにされたままのディーンと、抱きしめられた状態の私の会話は傍から見れば、本当に滑稽なものでしょう。
現に部屋の中にいる私達から返事がなかったからか、庭にやって来たソラが、私達の状態を見るなり、困惑の表情を浮かべていますから。
「復縁だなんて私だってお断りですが、ロレーヌ男爵令嬢だって納得なさらないでしょう? 何もかもあなたの思うように進むだなんて思わないで下さい!」
「ヴィアラはわかってくれたよ」
「はい?」
「愛人でも二人で贅沢に暮らせるなら、それでいいんだそうだ」
ディーンはがっくりと頭を下げて言いました。
うーん。
思った以上にお金中心の方なのですね。
「それで気が付いたんだ! 君は贅沢な暮らしなんか望んでいなかった」
勢いよく顔を上げて、ディーンは私を見つめて続けます。
「正直言うと寂しかったんだ」
「はい?」
「リノアと会えなくなって、心に穴があいてしまったんだ。そんな心の隙間に彼女が」
「私が悪いみたいに言うの止めて下さいよ!」
もう少し話し合えるかと思いましたが、やはり無理そうです。
これ以上、話す意味もないかなと判断しまして、彼に告げます。
「私と本当にやり直したいのかどうかはしりませんが、私はお断りです! 話す事はありませんので、もうお帰り下さい!」
窓ガラスの請求をしたいところですが、借金がどうとか言われてましたし、どうせ支払うお金はないでしょう。
そう思って言いますと、ディーンは困ったような顔をして私を見つめてきます。
だから、どうして私が悪いみたいになるんですか!
私が声を上げる前にケイン様がディーンを引きずって連れて行って下さったので、ふう、とため息を吐くと、ラルフ様が優しく抱きしめ直してくれました。
「アイツとよりを戻したいと言われたら、どうしようかと思った」
「そこまで馬鹿ではないのです」
「リノア。邪魔が入ってしまったが、先程の話の続きをしても良いか?」
「か、かまわないのですが、先に割れた窓ガラスを掃除してもらわなくてはいけないのと…」
私が言葉を区切ると、ラルフ様が不思議そうに聞き返してきます。
「いけないのと?」
「はなしていただけるとありがたいのですが…」
さっきから平静を装っていますが、心臓はバクバクなのです!
この状態では、まともに会話できません!
「あんな奴と話す事なんて何もないだろう」
明らかにラルフ様は殺気立っているので、なだめるように彼の胸のあたりを優しく撫でながらお願いする。
「聞きたいことを聞いて、彼のお願いをはっきりお断りするだけですから。だからお話をさせて下さい。よろしいですよね?」
「…では、この状態で話せ」
「はい?」
「このままでも話はできるだろう?」
そう言ってラルフ様は片腕だけではなく、今度は両腕で私を抱きしめられました!
だ、男性に抱きしめられるなんて初めての経験で、息ができないくらいにドキドキします。
な、なんなんでしょう、この感じは?
すごく落ち着かないのです。
って、今はそんな事を考えている場合ではありません。
息を整えてから、身をよじらせて、ディーンの方に顔を向けて、私は口を開いた。
「カンタス伯爵」
「リノア、本当に後悔している。ずっと待ってくれていた君がいたにも関わらず、ヴィアラに心が動いてしまった事を!」
「謝らなくても良いですよ? 気にしていませんから」
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる。そう言って出ていった俺を君は本当に待ってくれていた! そんな君に対して俺は!」
「だから気にしていませんってば!」
羽交い締めにされたままのディーンと、抱きしめられた状態の私の会話は傍から見れば、本当に滑稽なものでしょう。
現に部屋の中にいる私達から返事がなかったからか、庭にやって来たソラが、私達の状態を見るなり、困惑の表情を浮かべていますから。
「復縁だなんて私だってお断りですが、ロレーヌ男爵令嬢だって納得なさらないでしょう? 何もかもあなたの思うように進むだなんて思わないで下さい!」
「ヴィアラはわかってくれたよ」
「はい?」
「愛人でも二人で贅沢に暮らせるなら、それでいいんだそうだ」
ディーンはがっくりと頭を下げて言いました。
うーん。
思った以上にお金中心の方なのですね。
「それで気が付いたんだ! 君は贅沢な暮らしなんか望んでいなかった」
勢いよく顔を上げて、ディーンは私を見つめて続けます。
「正直言うと寂しかったんだ」
「はい?」
「リノアと会えなくなって、心に穴があいてしまったんだ。そんな心の隙間に彼女が」
「私が悪いみたいに言うの止めて下さいよ!」
もう少し話し合えるかと思いましたが、やはり無理そうです。
これ以上、話す意味もないかなと判断しまして、彼に告げます。
「私と本当にやり直したいのかどうかはしりませんが、私はお断りです! 話す事はありませんので、もうお帰り下さい!」
窓ガラスの請求をしたいところですが、借金がどうとか言われてましたし、どうせ支払うお金はないでしょう。
そう思って言いますと、ディーンは困ったような顔をして私を見つめてきます。
だから、どうして私が悪いみたいになるんですか!
私が声を上げる前にケイン様がディーンを引きずって連れて行って下さったので、ふう、とため息を吐くと、ラルフ様が優しく抱きしめ直してくれました。
「アイツとよりを戻したいと言われたら、どうしようかと思った」
「そこまで馬鹿ではないのです」
「リノア。邪魔が入ってしまったが、先程の話の続きをしても良いか?」
「か、かまわないのですが、先に割れた窓ガラスを掃除してもらわなくてはいけないのと…」
私が言葉を区切ると、ラルフ様が不思議そうに聞き返してきます。
「いけないのと?」
「はなしていただけるとありがたいのですが…」
さっきから平静を装っていますが、心臓はバクバクなのです!
この状態では、まともに会話できません!
68
お気に入りに追加
3,631
あなたにおすすめの小説
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい
たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた
人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ
そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ
そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄
ナレーションに
『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』
その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ
社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう
腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄
暫くはほのぼのします
最終的には固定カプになります
「期待外れ」という事で婚約破棄した私に何の用ですか? 「理想の妻(私の妹)」を愛でてくださいな。
百谷シカ
恋愛
「君ならもっとできると思っていたけどな。期待外れだよ」
私はトイファー伯爵令嬢エルミーラ・ヴェールマン。
上記の理由により、婚約者に棄てられた。
「ベリエス様ぁ、もうお会いできないんですかぁ…? ぐすん…」
「ああ、ユリアーナ。君とは離れられない。僕は君と結婚するのさ!」
「本当ですかぁ? 嬉しいです! キャハッ☆彡」
そして双子の妹ユリアーナが、私を蹴落とし、その方の妻になった。
プライドはズタズタ……(笑)
ところが、1年後。
未だ跡継ぎの生まれない事に焦った元婚約者で現在義弟が泣きついて来た。
「君の妹はちょっと頭がおかしいんじゃないか? コウノトリを信じてるぞ!」
いえいえ、そういうのが純真無垢な理想の可愛い妻でしたよね?
あなたが選んだ相手なので、どうぞ一生、愛でて魂すり減らしてくださいませ。
錬金術師カレンはもう妥協しません
山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」
前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。
病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。
自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。
それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。
依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。
王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。
前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。
ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。
仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。
錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。
※小説家になろうにも投稿中。
お金のために氷の貴公子と婚約したけど、彼の幼なじみがマウントとってきます
鍋
恋愛
キャロライナはウシュハル伯爵家の長女。
お人好しな両親は領地管理を任せていた家令にお金を持ち逃げされ、うまい投資話に乗って伯爵家は莫大な損失を出した。
お金に困っているときにその縁談は舞い込んできた。
ローザンナ侯爵家の長男と結婚すれば損失の補填をしてくれるの言うのだ。もちろん、一も二もなくその縁談に飛び付いた。
相手は夜会で見かけたこともある、女性のように線が細いけれど、年頃の貴族令息の中では断トツで見目麗しいアルフォンソ様。
けれど、アルフォンソ様は社交界では氷の貴公子と呼ばれているぐらい無愛想で有名。
おまけに、私とアルフォンソ様の婚約が気に入らないのか、幼馴染のマウントトール伯爵令嬢が何だか上から目線で私に話し掛けてくる。
この婚約どうなる?
※ゆるゆる設定
※感想欄ネタバレ配慮ないのでご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる