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11 鉢合わせしてしまいました
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食べきれなかった分は最初の言葉通り、店の人が持ち帰れるように箱に詰めてくれて、大量のケーキを遠く離れた場所にある我が家まで配達してくれる事になった。
もちろん、その分の配達費用もラルフ様持ちだ。
配達の手配をしてくれると同時に、転移用の魔道具をいくつか店の方に渡していた。
転移用の魔道具って、めちゃくちゃ高いものなんですけど、そんな簡単に人にポンポン渡せちゃうものなんでしょうか…。
辺境伯の財力って恐ろしいものなのですね。
我が家では一ヶ月に一個、買えるか買えないかというくらいなのですが。
ラルフ様がお店の方と話をしている間、私はお店の入口付近で待っていたのですが、最悪な事になんと彼らと鉢合わせしてしまったのです。
「リノア様じゃないですか!」
突然、名前を呼ばれて振り返ると、ディーンとその婚約者であるヴィアラ・ロレーヌ男爵令嬢が立っていた。
ロレーヌ嬢は馴れ馴れしく私の手を取り、しかも名の方で呼んできました。
なんて失礼な方なんでしょう!
さすがにカチンときましたが、ここは大人の対応をとろうと思います。
だって、私はこの人の婚約者に捨てられたという設定ですからね!
「ごきげんよう、ロレーヌ男爵令嬢」
「ごきげんよう、リノア様」
だから、普通はブルーミング伯爵令嬢と呼ぶのが正しいのですよ!
これは私から言うべきなのか迷っていると、私の様子に気が付いたラルフ様が駆け寄ってきてくれました。
「彼女に何か用か」
私がラルフ様と一緒にいると思っていなかったようで、ディーン達は驚いた表情をした後、ロレーヌ嬢は私の手を放し慌ててラルフ様に挨拶した。
さすがに、ラルフ様にまで馴れ馴れしくする勇気はないようです。
「リノア様、あなたもこちらでスイーツを?」
「はい。私達は食べ終わりましたが…」
苦笑して頷くと、見定めるようにロレーヌ嬢は私の上から下までを観察する。
今日は水色のシュミーズドレスで腰の部分に大きなリボンがあるものを着ていたのだけれど、彼女にはどうやらお気に召さなかったよう。
そんな彼女は薄い黄色の小花柄の刺繍が入ったドレスを着ています。
「リボンも可愛らしいですけれど、ちょっと子供っぽいのではなくて?」
「リノアは何を着ても可愛いからいいんだ」
私が答える前にラルフ様が答えてしまわれました。
「あのラルフ様」
嫌味ですから聞き流して良いんですよ、とお伝えしたいのですが、私の視線には全く気付いてくれず、ロレーヌ嬢に向かって話し続ける。
「俺は女性のファッションに詳しいわけではないからわからないが、リノアの服装は令嬢ではよく見られる服装だ。個性的ではないのかもしれないが、それを君に責められる筋合いはないと思うが?」
「あの、責めているわけではありませんの」
「なら、その様に誤解されるような発言はやめておいた方がいい」
ラルフ様は私に見せてくださるような優しい笑みはどこへやら、冷気を感じさせそうな冷たい視線をロレーヌ嬢に向けられました。
彼女もそれに気が付いて、ディーンに助けを求めます。
「こ、怖いわ」
「まずは謝るのが先だよ、ヴィアラ」
ディーンにしてみればラルフ様は上官だったという事もあるからか、完全に引け越しになっている。
「ご、ごめんなさいリノア様」
ロレーヌ嬢は謝ってくれましたが、リノアと呼ぶ事は止めてくれません。
ディーンも窘めようとしないので口を開こうとすると、ラルフ様が私の肩に手を置かれました。
「リノア」
「はい?」
「君が彼女にリノアと呼んでも良いと許可したのか?」
「いいえ」
きっぱりと答えて首を横に振ると、ラルフ様はまた彼女に向けて冷たい視線を送られました。
もちろん、その分の配達費用もラルフ様持ちだ。
配達の手配をしてくれると同時に、転移用の魔道具をいくつか店の方に渡していた。
転移用の魔道具って、めちゃくちゃ高いものなんですけど、そんな簡単に人にポンポン渡せちゃうものなんでしょうか…。
辺境伯の財力って恐ろしいものなのですね。
我が家では一ヶ月に一個、買えるか買えないかというくらいなのですが。
ラルフ様がお店の方と話をしている間、私はお店の入口付近で待っていたのですが、最悪な事になんと彼らと鉢合わせしてしまったのです。
「リノア様じゃないですか!」
突然、名前を呼ばれて振り返ると、ディーンとその婚約者であるヴィアラ・ロレーヌ男爵令嬢が立っていた。
ロレーヌ嬢は馴れ馴れしく私の手を取り、しかも名の方で呼んできました。
なんて失礼な方なんでしょう!
さすがにカチンときましたが、ここは大人の対応をとろうと思います。
だって、私はこの人の婚約者に捨てられたという設定ですからね!
「ごきげんよう、ロレーヌ男爵令嬢」
「ごきげんよう、リノア様」
だから、普通はブルーミング伯爵令嬢と呼ぶのが正しいのですよ!
これは私から言うべきなのか迷っていると、私の様子に気が付いたラルフ様が駆け寄ってきてくれました。
「彼女に何か用か」
私がラルフ様と一緒にいると思っていなかったようで、ディーン達は驚いた表情をした後、ロレーヌ嬢は私の手を放し慌ててラルフ様に挨拶した。
さすがに、ラルフ様にまで馴れ馴れしくする勇気はないようです。
「リノア様、あなたもこちらでスイーツを?」
「はい。私達は食べ終わりましたが…」
苦笑して頷くと、見定めるようにロレーヌ嬢は私の上から下までを観察する。
今日は水色のシュミーズドレスで腰の部分に大きなリボンがあるものを着ていたのだけれど、彼女にはどうやらお気に召さなかったよう。
そんな彼女は薄い黄色の小花柄の刺繍が入ったドレスを着ています。
「リボンも可愛らしいですけれど、ちょっと子供っぽいのではなくて?」
「リノアは何を着ても可愛いからいいんだ」
私が答える前にラルフ様が答えてしまわれました。
「あのラルフ様」
嫌味ですから聞き流して良いんですよ、とお伝えしたいのですが、私の視線には全く気付いてくれず、ロレーヌ嬢に向かって話し続ける。
「俺は女性のファッションに詳しいわけではないからわからないが、リノアの服装は令嬢ではよく見られる服装だ。個性的ではないのかもしれないが、それを君に責められる筋合いはないと思うが?」
「あの、責めているわけではありませんの」
「なら、その様に誤解されるような発言はやめておいた方がいい」
ラルフ様は私に見せてくださるような優しい笑みはどこへやら、冷気を感じさせそうな冷たい視線をロレーヌ嬢に向けられました。
彼女もそれに気が付いて、ディーンに助けを求めます。
「こ、怖いわ」
「まずは謝るのが先だよ、ヴィアラ」
ディーンにしてみればラルフ様は上官だったという事もあるからか、完全に引け越しになっている。
「ご、ごめんなさいリノア様」
ロレーヌ嬢は謝ってくれましたが、リノアと呼ぶ事は止めてくれません。
ディーンも窘めようとしないので口を開こうとすると、ラルフ様が私の肩に手を置かれました。
「リノア」
「はい?」
「君が彼女にリノアと呼んでも良いと許可したのか?」
「いいえ」
きっぱりと答えて首を横に振ると、ラルフ様はまた彼女に向けて冷たい視線を送られました。
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