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20 窓ガラスを割った犯人
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ワイズの寝場所をどこにしようかと考えたけれど、ワイズはとても綺麗好きで、トイレも人間用の所でするし、水浴びも大好きな為、水浴び後は体をしっかり拭いてあげてから、私の枕元にタオルを敷いてあげる事にした。
「ネンネ」
「そうだね、寝んねしようね」
パジャマに着替えて、ベッドに横になろうとした時だった。
家の扉を叩く音が聞こえたので、窓に近寄る。
寝室は2階にあるので、中から外を見下ろすと、ローズとその両親の姿が見えた。
「ダレナノ?」
「お隣の人」
「キョウノ、イヤナヤツ?」
「じゃなくて、反対側のお隣さん」
「フーン。ドウスルノ?」
「とりあえず、何の用事か聞いてみるわ」
わざわざ、こんな時間に訪ねてきたのだから、よっぽどの用事なんだろう。
窓を開けて声を掛けてから、パジャマの上にショールを羽織り、一階に降りていく。
「ごめんね、こんな夜分に」
扉を開けると、パジャマ姿の私を見た、ローズのお母さんは申し訳なさそうな顔で言った。
「いえ。私もこんな姿ですみません」
家の中に招き入れたけれど、どこかに座ってもらう事はせずに、立ったまま扉の前で話をする事にした。
ローズがなぜか俯いたままなので気になって、声をかけてみる。
「ローズ、何かあったの?」
「……何かあった? それは、リディアが一番、わかってるんじゃないの!?」
「どういう事?」
「ローズ、まずは謝りなさい!」
ローズのお父さんが彼女にそう言った後、私に向かって頭を下げた。
「悪い、リディアちゃん。窓ガラスを割ったのは、うちの娘だ」
「どういう事ですか?」
おじさんに聞き返すと、ローズが叫ぶ。
「私だけが悪いんじゃないわ! リディアだって悪いわよ!」
「ローズ、あなたが私の家の窓を割ったの?」
「そうよ!」
「どうして、ローズが…? 私、知らない間に、何か嫌なことをした?」
何かしていたとしても、窓ガラスを割るのは良くない。
だけど、一応、気になって聞いてみると、ローズは俯いていた顔を上げて言う。
「先に裏切ったのはリディアでしょう? トータスには興味がないって言ってたのに!」
「ないわよ!」
言い返すと、ローズはぽかんとした顔で私を見る。
「え…? だって、トータスはリディアに裏切られた…って…」
それで、裏切り者って書いたわけ?
「ローズの言ってる事はよくわからないけど、私が好きな人と一緒にいる所をトータスに見られたの。その時に、彼から意味のわからない事を言われたから言い返したけど、その事が気に食わなかっただけじゃない?」
「え? 好きな人?」
「そうよ。信じられないなら、今度来た時に会わせるわ」
「どうして? リディアの好きな人が、あなたを探し出してくれたって事?」
話が本題とは、ずれている気がしたけれど頷く。
「そうよ。だから、トータスとは何もないの。トータスに何を言われたか知らないけど、まずは、一方の言葉だけを信じずに、ちゃんと私にも確認してよ!」
「ご、ごめんなさいぃ! だって、トータスがリディアに誘惑されてたって言うからぁ!」
ローズが泣き始めてしまう。
泣きたいのはこっちだわ!
友達だと思ってたのに!
「リディアちゃん、ローズが本当にごめんなさい」
おばさんにも謝られたけど、これって許すしかない状態よね?
「ケイサツ、ハンニン、ツカマエタッテ、イワナイト!」
ワイズが飛んで来て、そう言った途端、ローズの両親が床に膝をつけたかと思うと、腰を折り曲げて、額を床につけた。
「申し訳ない! どうか、警察には言わないでほしい!」
「勝手なことを言っているのはわかってるわ! だけど、この子にも将来があるの!」
加害者側の意見よね…。
まあ、私も犯人が誰だかわかったし、二度としないというなら、大事にしようとは思わない。
だけど、あからさまに反省というよりかは、警察に知らせてほしくない感が表に出すぎていて、何とも言えない。
親の立場からすれば、これが普通なのかしら?
私に迷惑をかけたから謝っているのではなく、警察に言われたくないから謝ってるだけなら、意味がないんだけど…。
「ホントーニ、ハンセイシテルカナー?」
ワイズが言うと、立ち尽くしていたローズも、彼女の両親と同じ様に額を床につけた。
「本当にごめんなさい! 私、本当にどうかしていたと思う! だから、その、警察や…」
ローズが何か言おうとしたのを、両親が慌てて止める。
何を言おうとしたのか気になっていると、ワイズが言う。
「ケイサツニ、イワナイナラ、ダンシャクニ、イッチャウ?」
そういう事か!
って、ワイズの方が私より頭がまわるって、どうなの…。
「リディアハ、ヨイヒト、スギルンダヨー。ワルイヒトニ、ダマサレチャウヨ?」
「気を付けます」
そうね、長い付き合いでもないんだから、もっと、人を疑ってかからないと駄目ね。
って、今はそんな事を考えてる場合じゃなかった。
「あの、頭を上げて下さい。今回は警察にも男爵にも言いませんから。そのかわり、二度とこんな事はしないでほしいですし、ローズ、あなたは、トータスに言われた事を何でもかんでも信じる様にしないで」
「わかってるわ! 本当にごめんなさい!」
ワイズには「アマイヨ」と言われてしまったけれど、ローズはこの国では未成年だし、器物破損だけだから、どうせ警告だけで終わってしまうだろうし、私は近い内にこの地を去る。
でも、ローズはこの地に住み続けると思うと、結局、私はローズを許す事にした。
許しはしたけれど、このまま友達関係を続けている気にはなっていない。
それとこれとは別。
なぜなら、自分で謝りに行こうとしたわけではなく、様子がおかしい両親に問い詰められて、無理矢理、連れてこられて謝ってきた様だから。
私と話をして、ちゃんと反省をしてくれたみたいだけど、トータスの言う事を何でもかんでも信じる様な人を信じるのは怖い。
あと、トータスに自分のやった事を話す様にも伝えた。
石を投げ入れてくる女性なんて、普通は好きにならないでしょうから、ローズはさすがに、トータスに相手にされなくなるだろう。
もし、そんなローズを褒めるような男であれば、お似合いだと思うし、これ以上、私に何かしてくる様なら、次は容赦しない。
もちろん、二人とはなるべく関わらないようにして、ミランが私を実家に帰れるようにしてくれるまで、何事もない様にしなくっちゃ!
そうそう、何らかの形でガラスの修理代を請求しなくちゃ。
あれ?
そういえば、私に付きまとっていたのは、トータスだったという事でいいのかしら?
「ネンネ」
「そうだね、寝んねしようね」
パジャマに着替えて、ベッドに横になろうとした時だった。
家の扉を叩く音が聞こえたので、窓に近寄る。
寝室は2階にあるので、中から外を見下ろすと、ローズとその両親の姿が見えた。
「ダレナノ?」
「お隣の人」
「キョウノ、イヤナヤツ?」
「じゃなくて、反対側のお隣さん」
「フーン。ドウスルノ?」
「とりあえず、何の用事か聞いてみるわ」
わざわざ、こんな時間に訪ねてきたのだから、よっぽどの用事なんだろう。
窓を開けて声を掛けてから、パジャマの上にショールを羽織り、一階に降りていく。
「ごめんね、こんな夜分に」
扉を開けると、パジャマ姿の私を見た、ローズのお母さんは申し訳なさそうな顔で言った。
「いえ。私もこんな姿ですみません」
家の中に招き入れたけれど、どこかに座ってもらう事はせずに、立ったまま扉の前で話をする事にした。
ローズがなぜか俯いたままなので気になって、声をかけてみる。
「ローズ、何かあったの?」
「……何かあった? それは、リディアが一番、わかってるんじゃないの!?」
「どういう事?」
「ローズ、まずは謝りなさい!」
ローズのお父さんが彼女にそう言った後、私に向かって頭を下げた。
「悪い、リディアちゃん。窓ガラスを割ったのは、うちの娘だ」
「どういう事ですか?」
おじさんに聞き返すと、ローズが叫ぶ。
「私だけが悪いんじゃないわ! リディアだって悪いわよ!」
「ローズ、あなたが私の家の窓を割ったの?」
「そうよ!」
「どうして、ローズが…? 私、知らない間に、何か嫌なことをした?」
何かしていたとしても、窓ガラスを割るのは良くない。
だけど、一応、気になって聞いてみると、ローズは俯いていた顔を上げて言う。
「先に裏切ったのはリディアでしょう? トータスには興味がないって言ってたのに!」
「ないわよ!」
言い返すと、ローズはぽかんとした顔で私を見る。
「え…? だって、トータスはリディアに裏切られた…って…」
それで、裏切り者って書いたわけ?
「ローズの言ってる事はよくわからないけど、私が好きな人と一緒にいる所をトータスに見られたの。その時に、彼から意味のわからない事を言われたから言い返したけど、その事が気に食わなかっただけじゃない?」
「え? 好きな人?」
「そうよ。信じられないなら、今度来た時に会わせるわ」
「どうして? リディアの好きな人が、あなたを探し出してくれたって事?」
話が本題とは、ずれている気がしたけれど頷く。
「そうよ。だから、トータスとは何もないの。トータスに何を言われたか知らないけど、まずは、一方の言葉だけを信じずに、ちゃんと私にも確認してよ!」
「ご、ごめんなさいぃ! だって、トータスがリディアに誘惑されてたって言うからぁ!」
ローズが泣き始めてしまう。
泣きたいのはこっちだわ!
友達だと思ってたのに!
「リディアちゃん、ローズが本当にごめんなさい」
おばさんにも謝られたけど、これって許すしかない状態よね?
「ケイサツ、ハンニン、ツカマエタッテ、イワナイト!」
ワイズが飛んで来て、そう言った途端、ローズの両親が床に膝をつけたかと思うと、腰を折り曲げて、額を床につけた。
「申し訳ない! どうか、警察には言わないでほしい!」
「勝手なことを言っているのはわかってるわ! だけど、この子にも将来があるの!」
加害者側の意見よね…。
まあ、私も犯人が誰だかわかったし、二度としないというなら、大事にしようとは思わない。
だけど、あからさまに反省というよりかは、警察に知らせてほしくない感が表に出すぎていて、何とも言えない。
親の立場からすれば、これが普通なのかしら?
私に迷惑をかけたから謝っているのではなく、警察に言われたくないから謝ってるだけなら、意味がないんだけど…。
「ホントーニ、ハンセイシテルカナー?」
ワイズが言うと、立ち尽くしていたローズも、彼女の両親と同じ様に額を床につけた。
「本当にごめんなさい! 私、本当にどうかしていたと思う! だから、その、警察や…」
ローズが何か言おうとしたのを、両親が慌てて止める。
何を言おうとしたのか気になっていると、ワイズが言う。
「ケイサツニ、イワナイナラ、ダンシャクニ、イッチャウ?」
そういう事か!
って、ワイズの方が私より頭がまわるって、どうなの…。
「リディアハ、ヨイヒト、スギルンダヨー。ワルイヒトニ、ダマサレチャウヨ?」
「気を付けます」
そうね、長い付き合いでもないんだから、もっと、人を疑ってかからないと駄目ね。
って、今はそんな事を考えてる場合じゃなかった。
「あの、頭を上げて下さい。今回は警察にも男爵にも言いませんから。そのかわり、二度とこんな事はしないでほしいですし、ローズ、あなたは、トータスに言われた事を何でもかんでも信じる様にしないで」
「わかってるわ! 本当にごめんなさい!」
ワイズには「アマイヨ」と言われてしまったけれど、ローズはこの国では未成年だし、器物破損だけだから、どうせ警告だけで終わってしまうだろうし、私は近い内にこの地を去る。
でも、ローズはこの地に住み続けると思うと、結局、私はローズを許す事にした。
許しはしたけれど、このまま友達関係を続けている気にはなっていない。
それとこれとは別。
なぜなら、自分で謝りに行こうとしたわけではなく、様子がおかしい両親に問い詰められて、無理矢理、連れてこられて謝ってきた様だから。
私と話をして、ちゃんと反省をしてくれたみたいだけど、トータスの言う事を何でもかんでも信じる様な人を信じるのは怖い。
あと、トータスに自分のやった事を話す様にも伝えた。
石を投げ入れてくる女性なんて、普通は好きにならないでしょうから、ローズはさすがに、トータスに相手にされなくなるだろう。
もし、そんなローズを褒めるような男であれば、お似合いだと思うし、これ以上、私に何かしてくる様なら、次は容赦しない。
もちろん、二人とはなるべく関わらないようにして、ミランが私を実家に帰れるようにしてくれるまで、何事もない様にしなくっちゃ!
そうそう、何らかの形でガラスの修理代を請求しなくちゃ。
あれ?
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