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23 わかっていらっしゃいますものね
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※ 不快になる可能性がある発言があります。お気をつけ下さい。
そして、ラルフ様との昼食から三日目の朝、ミラルル様は旅立っていかれました。
ラルフ様がミラルル様と縁を切られるという話は、彼女が向こうの屋敷に着いてから連絡されるそうです。
私は私で、令嬢やそのご両親からの手紙の返事に対し、ラルフ様と相談して、傷付いて精神を病んでしまった方に関しては、ご両親からの依頼で忘却魔法をかける事になりました。
ラルフ様の婚約者になると決まった時から、今までの記憶をまるまる消す事になるため、空白になる記憶は、ご両親は彼女が病気で眠っていたとする事にされる様でした。
嫌な記憶を忘れて、新たな人生を歩んでもらえれば良いのですが…。
そして、残りの自らが制裁を加えたい、とおっしゃる方々と一緒に、現在、地下の牢屋の中にいらっしゃる、フレイ様の所にやって来ました。
太陽の光がないせいか、ひんやりとしていて、とても静かです。
夜にはあまり来たくないような場所なのです。
そんな呑気な事を考えていますと、牢屋の中にある簡素なベッドの上で膝を抱えて座っているフレイ様の姿を見つけました。
服はボロボロで薄汚れていて、牢屋の中で何やら暴れたようなあとも見受けられます。
彼も私達に気付き、顔を上げられました。
彼が私を見て、何か言おうとする前に、令嬢の一人が口を開きます。
「あなたは私の事なんて覚えていらっしゃらないでしょうが、私は同意の上でした」
すると、横におられた方達も話し始めます。
「私もです。あなたからお呼び出しいただき、当時は何も考えずに、あなたの部屋に行きました。自惚れておりまして、あなたが私を好きなんだと勘違いしておりました」
「私は元々、好きな男性がおりましたから、わざと参りました。平民の恋人がいましたが、親に無理やりラルフ様の婚約者にさせられたんです。ラルフ様に魅力がないわけではございません。私にとっての一番は恋人だっただけです。ですから、こんな不誠実な女がラルフ様の妻になれない、そんな風な言い訳を作るために、フレイ様の元へ参りました。だからといって、あんなことをされるとは思いませんでしたけど!」
ここに来て下さったのは、お二人は同意の上でフレイ様と関係をもたれ、もう一人は違うようです。
この方達は傷付いてはいらっしゃいましたが、今は幸せに暮らしておられ、自分達の非も認めるけれど、フレイ様に対しては怒りしかないという方達だそうです。
「な、なんなんだよ、笑いに来たのか!? 牢屋に閉じ込められて好きな事もできない、可哀想な僕を!」
「は? 可哀想? 自業自得でしょう?」
一人の令嬢が言うと、他の令嬢も叫びます。
「今となってはわかりますが、あなた、自信満々にされてましたが、下手くそですよ!」
「大したモノでもないくせに!」
「悲しませた令嬢もいるんでしょう!? あなたはそんな目に合って当然なんですよ!」
「なっ! なんて事を言うんだ!」
フレイ様は悔しそうな顔で言い返されますが、倍以上になって返されます。
「真実をお伝えしたまでですよ! あなたはさぞ経験豊富だというような顔をしていらっしゃいましたが、数をこなされてるだけで、何の成長もされてないのでは!?」
「こんな事を女性の口から申し上げるのもなんですが、主人から言って来いと言付かってますの。主人の方が立派です!」
「ある意味、あなたのおかげで私は親から勘当され、平民の彼と一緒になる事が出来ましたが、あなたの女性への扱いは絶対に許せません! どうせなら言わせていただきますが、主人の方が上手です!」
口々にフレイ様に罵声を浴びせ、それがしばらく続きましたが、皆さんが満足された所で、呆然としているフレイ様に私は言う。
「あなたは私を恨んでいらっしゃるようですが、元々はあなたが原因である事をお忘れなく。私が生きている間は、あなたをそこから出しませんから」
くるりと背を向けて、令嬢達と地下からエントランスホールまで来た所で、ご令嬢の一人が私の方を見て言いました。
「同じような事がもしかして起こるのではないか、と気にはなっていましたが、次に婚約者なった人にわざわざ教える必要もないかな、なんて思ってしまっていました。けれど、忠告さしあげていれば、辛い思いをする人が増えなかったのに、って、今はそれだけを後悔しています」
「それだけ、当時は傷付かれていたのですよ。でも、もう大丈夫です。もう新たな犠牲者は出しませんから」
過去には戻れません。
だけど、起こっていない未来は今から変えられはずです。
「ブルーミング伯爵令嬢、こんな機会を与えて下さいました事に、お礼を申し上げます。それから…幸せになって下さいね。少なくとも、私は幸せに暮らしていますから」
他のお二方も笑顔で首を縦に振って下さいました。
「ありがとうございます」
まだ妻ではありませんが、この場でいちいち言わなくても良いと思いました。
だって、皆さん、そんな事わかっていらっしゃいますものね。
「それから、ラルフ様に謝りたい事があるのですが、お会いする事は可能ですか?」
「大丈夫だとは思いますが…、どうかされましたか?」
「実は…」
そして、ラルフ様との昼食から三日目の朝、ミラルル様は旅立っていかれました。
ラルフ様がミラルル様と縁を切られるという話は、彼女が向こうの屋敷に着いてから連絡されるそうです。
私は私で、令嬢やそのご両親からの手紙の返事に対し、ラルフ様と相談して、傷付いて精神を病んでしまった方に関しては、ご両親からの依頼で忘却魔法をかける事になりました。
ラルフ様の婚約者になると決まった時から、今までの記憶をまるまる消す事になるため、空白になる記憶は、ご両親は彼女が病気で眠っていたとする事にされる様でした。
嫌な記憶を忘れて、新たな人生を歩んでもらえれば良いのですが…。
そして、残りの自らが制裁を加えたい、とおっしゃる方々と一緒に、現在、地下の牢屋の中にいらっしゃる、フレイ様の所にやって来ました。
太陽の光がないせいか、ひんやりとしていて、とても静かです。
夜にはあまり来たくないような場所なのです。
そんな呑気な事を考えていますと、牢屋の中にある簡素なベッドの上で膝を抱えて座っているフレイ様の姿を見つけました。
服はボロボロで薄汚れていて、牢屋の中で何やら暴れたようなあとも見受けられます。
彼も私達に気付き、顔を上げられました。
彼が私を見て、何か言おうとする前に、令嬢の一人が口を開きます。
「あなたは私の事なんて覚えていらっしゃらないでしょうが、私は同意の上でした」
すると、横におられた方達も話し始めます。
「私もです。あなたからお呼び出しいただき、当時は何も考えずに、あなたの部屋に行きました。自惚れておりまして、あなたが私を好きなんだと勘違いしておりました」
「私は元々、好きな男性がおりましたから、わざと参りました。平民の恋人がいましたが、親に無理やりラルフ様の婚約者にさせられたんです。ラルフ様に魅力がないわけではございません。私にとっての一番は恋人だっただけです。ですから、こんな不誠実な女がラルフ様の妻になれない、そんな風な言い訳を作るために、フレイ様の元へ参りました。だからといって、あんなことをされるとは思いませんでしたけど!」
ここに来て下さったのは、お二人は同意の上でフレイ様と関係をもたれ、もう一人は違うようです。
この方達は傷付いてはいらっしゃいましたが、今は幸せに暮らしておられ、自分達の非も認めるけれど、フレイ様に対しては怒りしかないという方達だそうです。
「な、なんなんだよ、笑いに来たのか!? 牢屋に閉じ込められて好きな事もできない、可哀想な僕を!」
「は? 可哀想? 自業自得でしょう?」
一人の令嬢が言うと、他の令嬢も叫びます。
「今となってはわかりますが、あなた、自信満々にされてましたが、下手くそですよ!」
「大したモノでもないくせに!」
「悲しませた令嬢もいるんでしょう!? あなたはそんな目に合って当然なんですよ!」
「なっ! なんて事を言うんだ!」
フレイ様は悔しそうな顔で言い返されますが、倍以上になって返されます。
「真実をお伝えしたまでですよ! あなたはさぞ経験豊富だというような顔をしていらっしゃいましたが、数をこなされてるだけで、何の成長もされてないのでは!?」
「こんな事を女性の口から申し上げるのもなんですが、主人から言って来いと言付かってますの。主人の方が立派です!」
「ある意味、あなたのおかげで私は親から勘当され、平民の彼と一緒になる事が出来ましたが、あなたの女性への扱いは絶対に許せません! どうせなら言わせていただきますが、主人の方が上手です!」
口々にフレイ様に罵声を浴びせ、それがしばらく続きましたが、皆さんが満足された所で、呆然としているフレイ様に私は言う。
「あなたは私を恨んでいらっしゃるようですが、元々はあなたが原因である事をお忘れなく。私が生きている間は、あなたをそこから出しませんから」
くるりと背を向けて、令嬢達と地下からエントランスホールまで来た所で、ご令嬢の一人が私の方を見て言いました。
「同じような事がもしかして起こるのではないか、と気にはなっていましたが、次に婚約者なった人にわざわざ教える必要もないかな、なんて思ってしまっていました。けれど、忠告さしあげていれば、辛い思いをする人が増えなかったのに、って、今はそれだけを後悔しています」
「それだけ、当時は傷付かれていたのですよ。でも、もう大丈夫です。もう新たな犠牲者は出しませんから」
過去には戻れません。
だけど、起こっていない未来は今から変えられはずです。
「ブルーミング伯爵令嬢、こんな機会を与えて下さいました事に、お礼を申し上げます。それから…幸せになって下さいね。少なくとも、私は幸せに暮らしていますから」
他のお二方も笑顔で首を縦に振って下さいました。
「ありがとうございます」
まだ妻ではありませんが、この場でいちいち言わなくても良いと思いました。
だって、皆さん、そんな事わかっていらっしゃいますものね。
「それから、ラルフ様に謝りたい事があるのですが、お会いする事は可能ですか?」
「大丈夫だとは思いますが…、どうかされましたか?」
「実は…」
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