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7  「こーんなに可愛い女の子」

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 私がダニエル殿下に抱きかかえられて連れて行かれた場所は城の地下だった。
 地下なんて案内されたことがなかったので、こんな場所があるということも知らなかった。

「ここは、どこなのでしょ?」

 上手く言葉が話せない。
 ろれつが回らないといった感じかしら?
 
 尋ねてみると、ダニエル殿下は優しい口調で教えてくれる。

「地下一階は牢屋や拷問部屋がある。それから地下二階には魔法に詳しい人間が住んでいるんだ。地下二階に行けるのは許された者しか行けないから知られていない。だから、あなたも人には話さないでほしい」
「それは、よいのでしゅが、わたちの、このしゅがたは、まほーのしぇいなのでしゅか?」
「たぶん。僕もコーンスープにやられた」
「コーンシュープ?」

 ああ、駄目だわ。
 サ行がうまくいえない。

 聞き返したと同時にダニエル殿下の足が止まった。

 ダニエル殿下にしがみついたまま、辺りを見回す。
 白い石造りの壁には等間隔にランタンが置かれていて、窓のない廊下をオレンジ色の光で照らしていた。
 前方には木の扉があり、鍵はかけられていないように見える。

「ここにいらっちゃるのでしゅか?」
「ああ。彼なら、コーンスープにかけられた魔法が何なのか教えてくれると思う」

 コンコンとノックをすると、ダニエル殿下は相手の返事も待たずに扉を開けた。

 部屋の中に入ると、ふわりと甘い花の香りがした。
 地下の廊下はひんやりしていたけれど、部屋の中はとても温かくて心地よい。

「やあ、いらっしゃい」

 声と共に目の前に現れたのは、緑色の服を着た羽のある小さな人だった。
 私の視線の位置近くを上下に動いてバランスを取っている。

「おや? どうしたんだい、この可愛い女の子は? 君の子かい?」
「そんな訳ないでしょう。エディールがまたロアリン嬢に頼まれたようです」
「またかい? ロアリン嬢も懲りないな。自分は絶対に捕まらないと思っているんだね」
「スケープゴートにする予定の人間がいるのでしょう。それよりも、この魔法は解けますか?」

 羽のある手のひらサイズの小さな人は、黄緑色の長い髪を一纏めにしていて、やたらと瞳が大きかった。
 ダニエル殿下に問われた彼は、私の周りを飛び回り、髪と同じ緑色の瞳でじっくりと私を見る。

 そして、口を開いた。

「彼女もコーンスープで変身する魔法をかけられているね。消化し終わったら元に戻るよ」

 どうして、そんな不思議な事が起こるのかわからない。

「コーンシュープはなにか、まほうとかんけーあるのでしゅか?」
「そうだね。なんというか、妖精のいたずらだと思ってほしい」
「いたじゅら」
「うん。以前、ダニエルも僕の同僚のエディールに命を助ける代わりに魔法をかけられたんだよ。その時にコーンスープなだけに、コンコン鳴くキツネにされたんだ。昔の言い伝えでは、キツネの鳴き声はコンコンとされてたからね。そして、たぶん、君の場合だと、なに可愛い女の子にしたかったんだろうね」

 少年みたいな妖精さんは何が楽しいのか、あははと笑う。

「でも、どうちて、わたちはまほーをかけられたのでしゅか?」

 妖精さんに尋ねると、笑顔を消して答えを教えてくれる。

「たぶん、ロアリン嬢は君を殺そうとしたんだよ。エディールは毒を用意するように頼まれたんだと思う。でも、エディールはいたずらっ子なだけで、悪い妖精じゃない。だから、毒じゃなくてコーンスープに反応する魔法をかけたんだよ」
「意味がわかりましぇん」

 私が首を傾げると、妖精さんは苦笑する。

「話すと長くなるから、君の部屋に移動しよう。君の部屋を思い浮かべてくれる?」
「はい」

 素直に頷いて、自分の部屋を思い浮かべる。
 すると、気が付いた時には、私とダニエル殿下は私の部屋の中にいた。

「と、どうなってりゅの?」
「ふふ。驚いてるね。すごいでしょ? 僕は魔法が使えるんだ」

 私の耳元で妖精さんが囁いた。

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