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48  フラル王国の王家の終わり ⑨

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 フラル王国の両陛下が帰っていったあと、私たちも王都を出発しジャルヌ辺境伯家に戻った。それから約十日が経ち、日常生活が戻り始めてきた時のことだった。
 シイちゃんと部屋で会話をしていると、五日後の朝に隣接する伯爵領にある山に登るように言われた。
 その山の頂上からは小高い丘に建っているフラル王国の王城が見える。ということは、王城に何かが起きるのだということはすぐにわかった。
 シイちゃんは私が学園を休まずに済むようにと、学園が休みの日を選んでくれていたため、次の日の朝、お父様に事情を話すと、伯爵家から山に立ち入る許可を取ってくれた。

 一体、何が起きるのかしら。

 シイちゃんに聞いても『トウジツノオタノシミ』としか教えてくれないから、私も当日になるまでは、私もまったく想像がつかなかった。

 そして出発の日、学園から帰ってきた私とお兄様はすぐに準備をして、お父様とお母様、そしてシイちゃんと一緒に出発した。馬車の中でのシイちゃんはご機嫌なのか、ジュエリーボックスの中でずっとキラキラと光り続け、時には踊るように動いていた。

 次の日の朝、日の出と共にシイちゃんが飛んできて、同じ部屋に眠っていたお母様までも起こして出発を急かしいてきた。

 私たちが向かう山は山越えができるように道が整備されていて、馬車も通れるので助かった。といっても山道であることは確かなため道が狭いので慎重に馬車を進めたため、山の上に着いた時には朝の十時前になっていた
 頂上は展望台が作られていて、私たち家族はフラル王国の王城がよく見える位置に並んで立つ。
 シイちゃんのおかげなのか、雲一つない良い天気でフラル王国の王城がはっきりと見えた。

 王城は三本の塔がある五階建ての白亜色の城だ。城自体は綺麗だと思うけれど、中に住んでいる人のことを思うと嫌な気分になった。

 護衛たちには私たちの話が聞こえない位置まで移動してもらい、シイちゃんをジュエリーボックスから取り出して尋ねる。

「シイちゃん、何をするつもりなの?」

 私が尋ねると、突然シイちゃんは眩しい光を放ち始めた。眩しくて目を閉じたあと、ゆっくりと目を開けてシイちゃんを見ると、光が消えて、いつもの白いシイちゃんに戻っていた。

「あれは、どういうことだ?」

 お父様の呟きが聞こえ、視線の先を追うと、フラル王国の王城の外壁が崩れ始めていくのがわかった。その様子を眺めながら、お兄様が困惑の表情で呟く。

「フラル王国の王城の上に何かが降ってる?」
「シイちゃん! 一体、何をしたの!?」

 王城の周りに雨ではない何かが降っていて、それが外壁にぶつかり崩れ始めたのはなんとなくわかった。でも、なぜそんなことになっているのかわからない。
 
 私が尋ねると、シイちゃんは私の手の上でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 答えるからいつもの紙を用意しろと言っているのだとわかり、持参していた文字が書かれた紙を広げ、シイちゃんをその上に置くと、こう答えた。

『フサワシクナイカラ、オイダスンダヨ。アイツラ二、シロハヒツヨウナイ。アンシンシテ。オウケイガイハ、キズツケナイカラ。ア、シロハ、ケッコウハカイシチャウケド』

 その後、シイちゃんは無数の拳大の石を、フラル王国の王城に降らせているのだと教えてくれた。 
 

◇◆◇◆◇◆
(シエッタ視点)

 ある日から、突然わたしやお姉様の顔が老婆みたいになり、そんな顔を誰にも見られたくなくて、部屋に閉じこもる生活を続けていた。お父様たちが帰って来た時には、これで以前の美しいわたしに戻れると思ったのに、お父様たちはミーリルを連れ帰ることはできなかった。

「必ずミーリルを取り戻し、お前たちの病気を治すからもう少し待っていてくれ」

 帰ってきた次の日の朝、お父様はそう言って、寝室に集まっていた私たちに頭を下げた。

「もう少しっていつなんですか!」

 見ない内に驚くほどにやせ細ったロブが泣きそうな顔で叫ぶと、お父様は歯ぎしりをして答える。

「いつとは言えないが、何とかするから待ってくれ! ああ、くそっ! 全部、ミーリルが悪いんだ。ミーリルが戻ってくれば済むことだというのに!」
「そうよ。七歳まで育ててあげた恩を忘れて、家族を見捨てるだなんて酷い娘に育ったものだわ!」

 お母様が嘆いたその時だった。

 ガシャン、という音がした。

 立ち上がって音が聞こえてきた方向に目を向けると、お父様の背中側にある窓ガラスが割れ、こぶしくらいの大きさの石がガラスの破片と一緒に赤いカーペットの上に転がっているのがわかった。

「い、石!? 何なの!?」

 後ろを振り向いたお母様が悲鳴をあげると同時に、今度はゴツッという鈍い音が聞こえてきた。

「な、何だよ、あれは!」

 ロブがソファから立ち上がって指さした先を見ると、数えきれないくらいの白い何かが、こちらに向かって飛んできていることがわかった。

 そしてそ白い何かは壁や窓を攻撃し尽くすと、部屋の中まで攻撃し始めたのだった。
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