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6 恋する第三王女 ② ※第三王女、シエッタ視点
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※ 7話で追いつきますが、こちらは5話のミリル(ミーリル)視点の七年後の話であり、フラル王国の第三王女のシエッタ視点になります。
死んだと思っていたミーリルが生きていて、行方不明になっていると聞いた時は、何をしているのかしらと思ったわ。わざと食料と一緒にミーリルを残してきたのは、狼にミーリルも食べてもらうためだったなんて、本当に国王陛下が考えることなのかしら。
ミーリルがいなくなってすぐの頃は、熱が下がらなくて大変だった。最初は私たちだけだったけど、数日経つと、お父様たちも高熱が出始めた。
苦しい日々が続ていたある日、お父様が王家に伝わる厄除けの石という、白くて手のひらサイズの石を宝玉の間から持ってきた時、わたしたちの体は嘘みたいに楽になった。
でも、その石が近くにないと体調が悪くなったり怪我をしたりで、みんなが大変な目に遭った。
特に酷かったのは弟のロブで、石が近くになければベッドから動くこともできない。フラル王国の国王は男性にしかなれない。ロブが死んでしまったら、レドリー家の王族の血が途絶えてしまう。だから、みんなロブを生かそうと必死だった。
ミーリルが戻ってくれば、石がなくてもみんなが昔みたいに幸せに暮らせる。
さっさと死んでくれれば良いと思っていたけど、ミーリルは幸運をもたらす第四王女だったらしいから、あの子が死んだら、私たちは石を持っていても苦しむかもしれない上に、最悪の場合は死に至るかもしれないとお父様から言われた。
本当に迷惑な妹だわ。
石が近くにないと体調が悪くなることが多いので、いつからか眠る時はみんな同じ部屋で眠るようになっていた。
ある日の夜、家族が集まった寝室で、お父様が私に向かって呑気なことを言い始めた。
「シエッタ、お前にはまだ婚約者がいないだろう。社交場に出るんだ。そして、良い夫を見つけてきなさい」
「何を言ってらっしゃるんですか。婚約者を見つけたって、こんな体じゃ嫁にいけないじゃないですか!」
文句を言うと、お父様は笑う。
「ミーリルがいなくなってから、もう七年が経つ。その間、色々とあって、お前には婚約者を見つけてやれなかった。本当に済まないことをした」
「そう思うなら、早くミーリルを見つけてくださいよ!」
「わかっている。だが、そのうちミーリルは見つかるだろうと、お前の婚約者選びを先延ばしにしていた。そうこうしている内に、お前は十七歳になる。デビュタントもしていないし、婚約者もいないのは良くない。七年間も生きているということは、ミーリルは誰かに保護されている。少なくとも、あの子がすぐに死ぬということはないだろう」
そう言って、お父様は手のひらにのせた石を撫でながら続ける。
「お前が社交場に行っている間は、この石をお前に渡そう。ハピパル王国と繋がりのある人間が主催しているパーティーがあれば優先的に行くんだ。そして、ミーリルをさりげなく捜してきてくれ」
「……わかりました」
ミーリルを捕まえることができれば、わたしたちは石がなくても普通に過ごせるようになる。仕方がないから、わたしがやってあげるわ。素敵な婚約者だけじゃなく、ミーリルも捕まえてやるんだから!
わたしの婚約者探しとミーリルを捜すことが藪をつついて蛇を出すという行為だなんて、この時のわたしたちは考えてもみなかった。
死んだと思っていたミーリルが生きていて、行方不明になっていると聞いた時は、何をしているのかしらと思ったわ。わざと食料と一緒にミーリルを残してきたのは、狼にミーリルも食べてもらうためだったなんて、本当に国王陛下が考えることなのかしら。
ミーリルがいなくなってすぐの頃は、熱が下がらなくて大変だった。最初は私たちだけだったけど、数日経つと、お父様たちも高熱が出始めた。
苦しい日々が続ていたある日、お父様が王家に伝わる厄除けの石という、白くて手のひらサイズの石を宝玉の間から持ってきた時、わたしたちの体は嘘みたいに楽になった。
でも、その石が近くにないと体調が悪くなったり怪我をしたりで、みんなが大変な目に遭った。
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さっさと死んでくれれば良いと思っていたけど、ミーリルは幸運をもたらす第四王女だったらしいから、あの子が死んだら、私たちは石を持っていても苦しむかもしれない上に、最悪の場合は死に至るかもしれないとお父様から言われた。
本当に迷惑な妹だわ。
石が近くにないと体調が悪くなることが多いので、いつからか眠る時はみんな同じ部屋で眠るようになっていた。
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「何を言ってらっしゃるんですか。婚約者を見つけたって、こんな体じゃ嫁にいけないじゃないですか!」
文句を言うと、お父様は笑う。
「ミーリルがいなくなってから、もう七年が経つ。その間、色々とあって、お前には婚約者を見つけてやれなかった。本当に済まないことをした」
「そう思うなら、早くミーリルを見つけてくださいよ!」
「わかっている。だが、そのうちミーリルは見つかるだろうと、お前の婚約者選びを先延ばしにしていた。そうこうしている内に、お前は十七歳になる。デビュタントもしていないし、婚約者もいないのは良くない。七年間も生きているということは、ミーリルは誰かに保護されている。少なくとも、あの子がすぐに死ぬということはないだろう」
そう言って、お父様は手のひらにのせた石を撫でながら続ける。
「お前が社交場に行っている間は、この石をお前に渡そう。ハピパル王国と繋がりのある人間が主催しているパーティーがあれば優先的に行くんだ。そして、ミーリルをさりげなく捜してきてくれ」
「……わかりました」
ミーリルを捕まえることができれば、わたしたちは石がなくても普通に過ごせるようになる。仕方がないから、わたしがやってあげるわ。素敵な婚約者だけじゃなく、ミーリルも捕まえてやるんだから!
わたしの婚約者探しとミーリルを捜すことが藪をつついて蛇を出すという行為だなんて、この時のわたしたちは考えてもみなかった。
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